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出会い
「同情なんかしない、この場限りの君との出逢いの中で、何故俺が君の気を曵く事を言うだろう。今まで君に言い寄って来た、ただ優しい言葉を並べたてるだけ、その寂しさを紛らす為だけだった男達と俺を一緒にしないでくれ」
加藤の言葉が余りに厳しかったので、由利子は一瞬目を伏せた。加藤は続けた。
「俺には・・夜学で知り合った美弥子と言う妻がいた。夜学の辛さも彼女がいれば、顔をみるだけで、もう・・すうーっと楽になるんだ。仕事を終えて夜学に行くのが楽しくなってね。色んな話をしたっけ・・。人生の事、将来の夢。そしてお互いの夢が同じになって行くのもすぐの事だった」
由利子は、ぼんやりと遠くを見つめ、加藤の言葉を聞いていた。




