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出会い
割と強い口調で由利子は言った。
「そうでしょう、俺もそう思うんだ。」
同感を得て加藤は頷いた。
「俺は怒ったよ、妹を強引に引き離そうとしたんだ。だが、別れる位なら死ぬとまで言う彼女に、俺は・・俺の気持ちは、無力でしかなかった。そして、とうとう・・男は目の前の重役を手に入れる所まで行くようなある重要な取引を成立させた。・・が・・」
言いかけて加藤の言葉が止まった。その苦しそうな、深い憂いを帯びた横顔には、由利子がこれまでの話の中では読みとれない何かが隠されているように思えた。




