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ルポライター
そして、昼頃になった。白い乗用車に乗りやって来たのは、初老の男性だった。そして運転手は竜胆のまた何度か会った事がある別の秘書であり、それも私用の車であった。初老の男性を降ろすとすぐ帰って行った。
初老の紳士はにこにことして、品の良いスーツに身を包み、香奈枝さんの案内で美登が待つ食卓に座ると、すぐ、
「やあ、初めましてと言うべきか・・実は、私は貴女の小さい時に何度か会っております。
「え・・そうなんですか?知らなかったです」
美登には全く見覚えは無かった。物心のついた幼少の頃ならきっと何かの記憶はあると思うが、それより幼い頃の記憶となると無いのだ。