16/803
出会い
「済みません。勝手に俺が身の上話を聞いて貰っているのに・・貴方に不愉快な思いをさせてしまったね・」
由利子は別に怒っているわけではなかった。ただ見ず知らずの初対面の男に対して、何故か心許している自分が何となく歯がゆかったのだ。
「いいの・早とちりしたのは私ですから・・」
急に彼女の受け答えに、抑揚のない響きを感じた加藤は、意を決したように、
「妹の結婚は・・許されざるものだったんだ・」
小刻みに震えながらジンを飲み干す加藤に、由利子は再びただならぬ彼自身の持つ何かを感じていた。