入試
筆者は、主人公の成長よりも最初からチートで無双する話が好き。
でもチーレム系はあんまり好きじゃない。
試験会場は闘技場のような場所だった。
聞けば、学校の入口に短時間専用の転移系魔法を使っていたらしい。
侵入者防止とかの防犯魔法かと思ったら違った。
そこに、先生と思われる人が4人。おそらく奥にいるのは校長・副校長先生だな。
残りの先生2人は僕の前に並んでいた人に付き添っている。
よく見ると、入試生徒の前方に的が見える。
距離は…分からない、教えて《数値化》!
■生徒から的までの距離
89m
なるほどね。結構遠い。
というか闘技場自体広いしね。
こんなんが学校の持ち物とか進んでるな。
等と独り言を言っていると、僕の番が回ってきたみたいだ。
白線の引かれているところに立ち、先生の指示を仰ぐ。
「では、現在使える最高火力を的に向かって放ってください。あの的は特殊なので、魔力さえちゃんと込めれば支援魔法でも壊れます」
「了解です」
なるほど。これで支援魔法の生徒も取れるということだな。
僕は遠慮なく行くよ。
まずは、前の生徒が空中に残していった「魔素の道」を導火線にして、火属性の魔法を―正確には熱エネルギー魔法を―放つ。
ちなみに全力とは言われたが、僕は今空気中の魔力しか使っていない。
つまり、前の生徒はそれだけで魔法を使えるレベルの魔素を無駄に放出しているということだ。
どれだけ無駄か分かるだろう。
まだ空中の魔素だけで魔法を行使するには効率が良くないが、それでも5%未満の効率しかなかった魔法を5割まで上げたので上々だろう。
ちなみに僕の魔力を使う場合は8割。
それらに共通するのは、不可視の魔法。
余計な光エネルギーを発生したり、魔素を逃したりが異様に少ないため、高レベルの魔力察知でないと魔法が行使されるのさえ分からない。
現に、今先生方は僕が何もしていない(ように見える)のに的が粉々になったので唖然としている。
これが僕の"研究"の成果だ。
まあ、まだ上はあるけどね。
ちなみに補足説明しておくと、僕の不可視魔法はこの世界の一般的な不可視魔法の考え方と大きく違う。
通常の不可視魔法は、魔法によって発生する余計なエネルギーや逃げる魔素を、普通の魔法よりしっかりしたチューブで包むことによって漏れないようにする。
よって不可視魔法は普通、魔力察知系のスキルに引っかかりやすく、どうしても格下相手に格を見せつけるだけの存在になりつつある。
僕の魔法の考え方は、漏れる魔素が勿体無いし、目的の外のエネルギーは最初から発生しなければ良いと言うもの。
そして、この考え方は少なくともこの国には無いようだ。
もうOKですと言われ、試験会場を後にする。
会場から出ると、緊張した面持ちの入試生徒が自分の番を今か今かと待ち構えていた。
そのうちもう片方に吸収されたりして(笑)