調査
書き進まない…
時は秋の1週目。
開発した《数値化》を使用し、魔力を確認していく。
もちろん研究対象は火の玉だ。
こいつは他の魔法と違って火を灯しているときに魔力を消費し続けるので、魔力を見るのに便利だ。
計測結果は散々なものだった。いや、計測に失敗したのではなく計測結果が恐ろしかったのだ。
まず、手から放出する魔力が10MP/sとしよう。これが今回の実験の仮定だ。
これを魔法発動点に持って行くまでに、チューブみたいなものを形成するがそのチューブに9MP/s消費。
更にそこから火にならずに逃げていく魔力が0.5MP/s。よって火になるのは20分の1だ。
しかも火なので光エネルギー等の無駄なエネルギーを放出している。これを考えると、火炎魔法の攻撃としての効率は50分の1程度だと思われる。
これでは勿体無い。
僕はひとまず、チューブを使わない魔法の発動をマスターすべく、手のひらの上で火を出現させた。
◆
日が暮れた。
結果は上々だが、まだ完成には至っていない。
結局チューブのイメージを抜くと魔素が空中に振りまかれるだけだったため、レールをイメージするとうまく魔力を削減できた。
しかし半分になったとはいえ、無駄な魔力を消費しているのは確かだ。
まだまだ改善の余地があるだろう。
「ご飯よー」「はーい」
返事をして、家に入る。
そう言えば、家族のことを話していなかった。
先ほど僕を呼んだ母親はクリア=グラス。透けそうな名前だが、実際に黒いところが(あまり)なく、旦那を尻に敷いたり脅したりしないいい人だ。
家族の中で唯一の《料理》スキル持ちだが、戦闘面では光属性魔法をある程度使える。
父親はフレア=グラス。名前の通り炎属性魔法を得意とする戦士で、武器への付与も出来る。真似事らしいが…
父親のオリジナル魔法《諸刃の剣》は、武器に非常に強力な炎属性付与を与える代わり、比例して耐久度がガンガン減っていくという魔法。
ただし普段から争い好きというわけではなく、自覚を持って力を使えるいい人。
いい人しか言ってない気がするけど、これで僕の家族は紹介終了だ。
この世界では根っからの3人家族は少ない為、珍しいとよく言われる。
3人家族が少ない理由は、単に日本より死亡率が高いからだ。
さて、一通り紹介も終わったところで食卓につく。
この家は、他の友達の家と違い日本の作りに近いので転生直後は馴染みやすかった。
「また今日も"研究"?熱心ね」
母親が煮物をつつきながら言う。ここでは食事中のマナーは統一されていないので、別に咎められることはない。
「まあね。今日は成果がちょっと出た」
適当に返しておく。
「そうか。僕からしたら、何やってるか分からないんだけどなぁ」
そしてこのセリフ主が父親。完全に一人称が被っていて分かr…いや、なんでもない
2人は僕が何やってるかよくわかっていないようだが、ひとまず危なくないことを説明したら"研究"をしていてもとやかく言われなくなった。
その後も、他愛のない話をしてから今日は休むことにした。
今回のクレア=グラスの成果▼
*魔法発動点の距離に対する必要魔力を40%減