第0休 一番ダル~いプロローグ
ダルい、眠い、ずっと寝てたい。
私、咲乃鈴美は授業中にも関わらず、教室でいびきを掻きながらずっと寝ている。
それが私の日常だ。
このクラスの生徒や先生だって、私を誰も起こさない。
確かに、昔は先生やクラスの人に起こされる事はあった。でも、それはこのクラスで一週間だけの事。
チャイムが鳴っても私は起きないし、流石に帰る時だけは起きるから周りからは『中途半端な眠り姫』と呼ばれているらしい。
たまたま寝れない時に寝て振りしながらこの話を聞いてしまった。
つまり、噂をするほど私はクラスで有名になってしまったのだ。
寝る事も極めると有名になるのかも知れない。
「ふぁぁぁ……」
大きな欠伸した後、私は学校の時計を見た。
時計の針は六時半を指していた。辺りは少し薄暗く、周りには誰もいない。
先生も酷いなぁ。教室にまだ生徒がいるのに電気も付けてくれないなんて……。
電気のスイッチを睨みつけ、教室のドアを外から閉めた後、バックから鍵を取り出した。
「眠っ、ホント鍵係とかやってらんないよ」
ドアの鍵を掛けた後、私は家へと直行で帰る。
私が家に帰ってやりたい事は『眠る』と言う動作一択だけ。
普通の人は娯楽や趣味とかあるらしいけど、私には睡眠以外の趣味が無い。
もう、睡眠は趣味とかじゃなく人生の生きる意味にまで到達している。
でも唯一、趣味っぽいと言われるものを上げるとするならば遠くの友達との文通だろう。
文字を書くのは姉に任しているが、ちゃんと自分が口を発した事を姉に書かせているので問題ない。
寝ていた時の夢の話や家族環境や学校では溶け込めない事まで全てその友達に共用しているが、それは趣味では無いと私は思っている。
なぜなら、私が手紙を自分の手で書いていないからだ。
姉の力を使って間接的に手紙を書いているので、趣味では無い。
姉が善意でやってる事、なので姉の趣味だと思う。
だから、睡眠だけが私の趣味だと思う。
「お休み……」
私は家の玄関を開けてそう言い放った後、姉と私の共同部屋の布団に横たわって寝た。