十人十色〜非日常〜
… ヒタヒタ ヒタヒタ。
ボクハ廊下を歩く。 長い長い廊下を歩く。
ココは何もない廃墟である。
…ボクタチを除いては。
時々人間がやってくる。
目に光がある。宿っている。
『きらきら輝くそれは
神々しいものだ。』
と、前に誰かが教えてくれた。
ボクハそれを見つめることができない。
…ヒタヒタ ヒタヒタ。
ボクハもうどのくらい歩いたのかも忘れた。
気がついたら、ずっと歩いていた。
ずっと独りで。
寂しいなんて最初は思ってなかった。
いつか迎えに来てくれることを信じて。
でも、もう何もかも諦めた。
いつまでも続く長い廊下。
終わりなんてない。
…ヒタヒタ ヒタヒタ。
歩いていく中で、ボクハいろんなことを学んだ。
一、どんなに歩いても疲れない
二、周りを見渡すとたくさんのヒトが歩いている。
三、走ろうとするけれど走れない。
四、濃い霧に包まれている。
五、ぶつかっても、殴っても、痛くない。
…ヒタヒタ ヒタヒタ。
ボクタチは、『眼』がない。
『心』がない。
眼の前に誰かが立ち塞がる。
ボクハ気づかない。
…周りの誰かが気付いたようだ。
歩くことしかできないはずなのに。
…タタッ
…走った。
ボクハそのヒトに助けられた。
…ありがとう
そう伝えたいのに、声の出し方さえ忘れた。
そのヒトはもうどこかへ行ったようだ。
ヒトの気配がなくなった。
ボクハ、久しぶりに、本当に久しぶりに
…寂しくなった。
泣きたいのに
泣くことさえ忘れてしまった。
…あぁ、そうか。ボクハ『心』は
『心』だけはまだ残っていた。
嬉しかった。
嬉しくて、できもしないスキップをしたくなった。
…ヒタヒタ。バタン。
…その瞬間、ボクハ歩くことができなくなった。
立ち上がることさえできない。
誰も助けてくれない。
息ができなくなった。
呼吸の仕方ってどうやるんだっけ?
なんでこんなことなっている?
ボクガ『心』を持っていたから?
感情を「生かした」から?
ボクガ『眼』があることを隠していたから?
…また「生きたい」と思ったから?
ねえ。どうして?
声の出し方を忘れたボクハ今、何もできない。
ヒトがボクの間を通り抜けていく。
もう終わりがくる?
ちょっと思った。
…『そんなはずはない』
誰かが言った。
「じゃあ、ボクハどうなるの?」
『心』の中で問う。
…『ただただそこにいるだけさ。
周りを見てみろ。倒れたヤツらがわんさかいる。
そのヤツらがいずれ建物と化し、またココを作って
いく。もちろん「生かした」ままな。』
ボクハ途方にくれた。
『ただし、最近ココの仕組みには『穴』があることを
聞いた。まぁ、単純に「生きる」のではなく、
「死ぬ」ことを選べばいいだけだがな。』
そして決して終わりのないこの「世界」の仕組みに
…終わりを告げる。
…ボクハ「死」を選ぶ。
かろうじて呼吸の仕方を思い出して息をしていたが
ボクハその「息」を手放す。
息を止め、肺に酸素が行き渡らなくなる。
…苦しい
そう思った。
それでもこの世界を終わらせたいから
また違う世界で会えることを信じて。
さよなら
END
読んでいただきありがとうございます!
今回は 少し展開が早すぎたかな〜と思ってます。
ではでは。