閑話 ???
※ 本日七度目の投稿です。
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とある地の人里離れた山奥に、小さな小屋がある。
誰かが使っている訳ではないはずなのだが、いつだってここは、誰かが掃除をしているかのように、清潔さが保たれている。
付近の村の住人はこの山の恐ろしさを子どものころから知っているため、誰一人として小屋に近付こうとしないのだが、しかしそこは現在、一人の女が休息の地として利用していた。
女は、白い髪と赤い目を持ち、青白い肌に、真っ赤な唇と爪が印象的であった。
そしてなにより目を引くことは、その女、左腕が無いのである。
肩口に巻かれた包帯にはもう血は滲んでいないものの、それでも時折痛むのか、残った右手で傷口を撫でたりしている。
女は、ソファーに腰掛けたまま、独り言のように呟く。
壁のランプから伸びる淡い光に照らされたその顔には、堪え切れないかのような愉悦が滲んでいた。
「こんな目に遭うなんて、ついてないわ」
「左腕、千切られるし、氷付けにされたもの」
「数日は、回復に専念かしら?」
「やれやれね、まったく」
「他の皆は、ちゃんとやってるのかしら?」
「まあ、いいか」
「どうせ、そのうち終わる」
「主様も、起きてくれるわ」
「もう一頑張り、それまでは」
「うふふ、うふふふ」
…………彼女の声を聞く者は、誰一人として存在していない。
本日は、とある人物の生誕祭でした。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
次回から第6章に入りますが、またしばらくは書き溜めを行います。
連載の再開については活動報告なりでお知らせ致しますので、それまでお待ち頂ければ幸いです。




