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第5章 10

 ◇




 外はすでに夕日が沈み切り、村の家々からは夕餉を準備する音と匂いが漏れてくる時刻。修一はメイビーと一緒に宿の一室でのんびりとしていた。


 結局、女性陣が宿に入ってきたのは修一が自室に入ってから一時間ほど経ったあとだった。長過ぎんだろいつまで遊んでんだよ、と思わなくもなかったが、別に自分に迷惑が掛かったわけでもないため口には出さなかった。

 その間に修一も剣の手入れを終えていたわけであり、ベッドの横に立てかけられた剣は、貰った時と同じくらいまで綺麗になっている。

 ただ、メイビーが部屋に入ってくるなり、レイが逃げるように帰ってしまった事を愚痴ってくるのには辟易としたが。


「うー、あんなに嫌がって逃げることないのに」

「まあ、何したかは聞かないが、よっぽどメイビーたちに絡まれるのが嫌になったんじゃないのか?」

「そんな事はないと思うんだけどねえ、僕らと遊んでるときは全然嫌そうにしてなかったし」

「ふうん? じゃあ、原因はなんだろうな?」


 「それが分かれば苦労しないよ」と口を尖らしてぶつくさ言っているメイビーを、聞く人が聞けば逆に怒り出しそうなほど適当な言葉で宥め賺してみる修一。「絶対、適当に答えてるよね?」と案の定怒りをあらわにするメイビーに掴み掛かられそうになるが、修一は軽く受け流した。そこから、お返しとばかりに腕関節を取って脇固めからの後ろ固めでメイビーをベッドの上に押さえ込む。


「あう」


 肘と肩の関節を完璧に極められたメイビーは、ベッドの上という不安定な場所に押さえ込まれたにも関わらず、一切体を動かすことが出来なかった。というか、痛すぎて本当に動けない。恐ろしい手際の良さだった。


「くっ! こんな……、って、痛たたたたっ!! ちょっ、待って待って待って!?」

「なんだ?」


 ギリ、ギリ、と関節を捻っていく修一に慌てて待ったをかけたメイビー。修一も捻るのを止めただけで押さえ込みを解こうとはしなかったが、それでも余裕が出来たメイビーはなんとか荒い息を整える。


「な、なんか今日は厳しくない? 僕、ちょっと胸倉掴もうとしただけだよね?」

「いや、武術家の胸倉掴むとか、俺の世界ではぼろ雑巾のようにされても文句言えないぞ?」

「そ、そうなの? ……いやいや、それはシューイチの世界の話でしょ! こっちではそこまで酷くないから!!」

「へえ?」

「本当だって! だから放してよ!!」


 必死の訴えに修一は、仕方ないなと手を離した。やれやれとばかりに額の傷を掻いている。

 しかし、二人きりで部屋にいて男が女をベッドに押し倒すという、字面だけ見ればなんともアレな感じがするやり取りだったわけだが、残念なことにそんな色気は一切無かった。メイビーの頬が紅潮しているように見えるのも、瞳が潤んだように見えるのも、痛みに喚いたからにすぎないのだ。


「普段あんまり使わない技を色々試してみたかったんだが、残念だ」


 軽く涙目になったままゆっくりと起き上がるメイビー。「それ、どんな技なの?」と聞いてみたが、修一に「実際にやられると分かり易いぞ」と言われ諦める事にした。ちなみに後日改めて聞くと、やりようによっては一瞬で関節を砕ける技だとか言われ、メイビーは、折られる前に放してくれて本当に良かった、と心の底から思った。



「まあしかし、実際どうしてだろうな。お前らに心当たりがないなら、他の要因があったんじゃないのか?

 帰る時間になったとか、急な用事を思い出したとか」

「いや、はっきりとは聞かなかったけど、レイちゃんってここの住人じゃないみたいだから、家に帰ったとかじゃないと思うんだよね。用事も、あんな歳の子に急用なんてあると思う?」

「それもそうか」


 無くはないだろうが、まあ、無いだろうなといったところか。


「ていうか、話の流れ的にレイちゃんも結構打ち解けてくれてて、一緒に晩ごはん食べようって誘ったばっかりだったのに。あーもう、ワッケ分かんない! おかげでゼーベンヌがまたちょっと落ち込んじゃったし」

「あの人も明るくなったり落ち込んだり忙しい人だな、おい」


 修一が半ば揶揄するように呟くが、ゼーベンヌも本来なら仕事の出来るビジネスマンタイプの人間なのだ。ただ、今はいかんせんタイミングが悪い。彼女も自分の在り方を見直したばかりで、少しばかり精神的な衝撃に弱くなっているのだ。レイに振り回されていると言えばそうなのだが。


「ちなみにゼーベンヌは今、ウールとヘレンちゃんに慰められてるよ」

「年下に慰められるって、それはそれでへこみそうだよな」

「いちいちうるさいな、もう」


 一応述べておくなら今現在修一たちは修一用の一人部屋におり、ゼーベンヌたちはノーラたち(ノーラ、メイビー、ウール、ヘレン)用の四人部屋にいる。今日一日で随分仲良くなったものだとも思うが、自衛的な意味もあるようだから文句はない。修一に文句があるとすれば、それなら男三人も一緒の部屋にしてくれよといった程度だ。カブとテリムの二人部屋は修一の部屋から遠く、会いに行くのが面倒なのだ。


 まあ、三人用の部屋が存在せず一緒にするなら四人部屋になるため、それなら別々に部屋を借りたほうが安く済むらしいので仕方ないのだが。そこらへんの決定権を持つのはノーラなので、修一はそれに従うだけである。

 それに、なにやら夕食は三組合同で食べようという話になっているらしく、一階の食堂では現在、それぞれの財布担当がお金を出し合ってちょっと豪勢な夕食を準備してくれているとか。小さな村の寂れた宿であるためそこまで期待できるものではないかもしれないが、それでも、修一とメイビーはちょっとだけわくわくしていた。


 やがてテリムが部屋を訪れ、準備が出来たことを教えてくれると、二人は揃って食堂に下りた。食堂では、テーブルを二つ繋げて全員が揃って座れるようにしてくれていて、その上にはすでに大皿がいくつも並んでいた。修一が見たことのない料理もちらほらあったが、どれも美味しそうである。


「やあ、こっちこっち」


 手招きするエイジャに従いテーブルに近付くと、ノーラとカブも席に着いていた。修一はちょっと迷ったが、ノーラの隣に座ることにした。メイビーも空いている椅子に適当に腰を掛ける。


「よ、お疲れさん」

「お疲れ様ですシューイチさん」

「なんか、思ってたより豪華でちょっと驚いた」

「まとめて注文したら安くなりましたから、その分で」


 その様子を見ていたエイジャ曰く、「あれは熟練の商人と遣り合えるほどだった」そうだ。親父さんからノウハウを教えて貰っているかといえばそういう訳でもないらしいので、おそらく血筋なのだろう。というか、単なる宿の経営者相手にそこまで本気を出すのも大人げないようにすら思う。


 さらに聞いてみれば、明日乗る馬車もすでに交渉が終わっているらしい。

 明日の午前中に村を出る馬車の御者が偶然ここの食堂で食事をしていたらしく、カブたちの分を含め七人分の料金をまとめて払う代わりに値引きしてもらったとか。

 仕事が早いというか、手際が良いというか、ともかくこれで明日の足を心配する必要がなくなった訳だ。


 交渉後、パーティーメンバー分の馬車代を払うカブは、わざわざ自分たちの分までまとめて交渉してくれたノーラにしきりに恐縮していたが、ノーラとしてもそのお陰で安くできたため、まあ、おあいこなのだろう。


「本当に、ありがたく思う。ウチも金銭的に潤ってる訳じゃないから、節約できるならそれに越した事はないからな」

「なんだ、冒険者ってそんなに儲からないもんなのか?」

「一流になればそうでもないが、俺たちぐらいなら大体いつもカツカツだよ。装備整える金もバカにならないし」

「へえ、大変なんだねえ」


 メイビーが他人事のように呟いたが、彼女もお金の大切さは良く分かっている。伊達に借金で身を滅ぼしかけたわけではない。あれはあれで高い授業料を払って社会勉強したと言えなくもないが、彼女にとっては世界一受けたくない授業であった。


「ファステムでならもっと大きな仕事を受けて沢山報酬を貰えるだろうし、そうすればもう少しマシになるんだろうけどな」

「だといいけどな、ま、その辺はカブたちの努力次第だろ」

「違いない。なんにせよ、今日は色々と世話になったから、また何かの機会でお返しはさせてもらうよ」


 このカブという男もなかなか義理堅い男のようだ。ただ、ノーラは苦笑交じりに首を振る。


「いえいえ、そんなに気にしなくても構いませんよ?」

「いやしかし」

「恐らくファステムに着くまで道のりは一緒ですし、その間に仲良くしていただければ私はそれで構いませんから」

「それは、もちろんだが、……本当にそれでいいんですか? ノーラさん」

「はい」


 エイジャに「おお、ノンちゃんやっさしい~」と囃し立てられ少しだけ照れているが、ノーラのその言葉は紛れもなく真実であった。

 ここ最近は修一たちと出会って賑やかになったが、それまでのおよそ二か月間はたった一人で毎日毎日歩き続けていたのだ。目立った危険はなかったが、寂しくなかったと言えば嘘になるし、心が折れそうになったことも一度や二度ではない。家族という心の支えがなければ挫折していたかもしれない、と自分でもそう思うのだ。

 それを思えば、今の旅路は危険に巻き込まれたりもしたが、常に賑やかで、何より楽しかった。実家に早く着きたいと思いながらも、もう少しだけこの旅が長く続けばいいのに、と思えるくらいには。


 そしてそれなら、一緒に旅をする人間は多いほうがいい。


 そう考えて楽しげに微笑むノーラに、カブとエイジャはちょっとだけドキっとしたし、それは同性であるメイビーでも同様であった。ノーラのとびきりの笑顔は、見る者の目を釘付けにする不思議な魅力に溢れていた。


「――仲良くはいいけど、そうするとまだまだウールとかに弄られるんじゃねえのか?」


 ただ、修一が冗談のつもりで言ったこの一言で、たちまち引き攣ってしまったが。


「…………ま、まあ、それはそれですよ、シューイチさん」

「ノーラ、僕から目を逸らさないでよ、傷付くからさ」

「はは、メイちゃんもそっち側なんだ」

「……本当に、ウチのバカが申し訳ない、です」



 結局その後、テリムがゼーベンヌたちを連れて下りてくるまで、修一は雰囲気を壊した償いとしてひたすらノーラのご機嫌取りをする羽目になった。相変わらず余計なことを言う男である。




 ◇




 食堂に下りてきたゼーベンヌはちょっとだけ気恥ずかしそうにしていたが、大体元通りになっていた。修一やエイジャはそのときの様子を見ていないが、レイが逃げ出したときには見た目に分かりやすく落ち込んでいたそうなので、今は立ち直ったとみて大丈夫なのだろう。


「はっは、まあ、あたしの手に掛かればこんなもんさ、落ち込んだ人を慰めるのは得意だからねえ」

「お前、今度はなにやったんだ?」

「おや? それを聞きたいのかい?」

「……いや、やっぱりいい。なんかゼーベンヌさんのこっちを見る目が怖いし」


 ゼーベンヌは、僅かに頬を赤く染めながらカブを睨み付けていた。その反応を見て大体の予想が付いたカブは、これ以上踏み込まないことを決めた。……のだったが、ウールは逃げるカブを追撃した。


 軽くヘレンに目配せしたウールは、二人でゼーベンヌの両サイドに回り、「ちょっと二人とも!」という声を無視して、それぞれがゼーベンヌの腕を取る。

 それから二人揃って上目遣いにゼーベンヌを見ながら、甘えたような声を出した。


「お姉さまぁ、落ち込まないでくださいな?」

「……お姉ちゃん、元気、出して?」

「~~~~っ!!」


 ゼーベンヌの顔が羞恥のためか一気に赤くなる。それを見たエイジャが「あははははっ!」と思わず笑い出すくらいに。


「そんな悲しそうな顔をされると、あたしたちまで落ち込んでしまいますわ」

「ほら、……今日はわたしが、いい子いい子して、あげるから」


 両腕を押さえられているゼーベンヌは、頭を撫でてくるヘレンの腕を振り払えない。あうあうと言葉にならない声を出しながら口をパクパクさせている彼女の様子に、修一とカブは見てられないとばかりに目を逸らし、エイジャはとうとう堪え切れずにテーブルに突っ伏して腹を抱えている。それを見たゼーベンヌは、羞恥と怒りが入り混じった声で叫んだ。


「隊長!! 笑いすぎではありませんか!?」

「あはははは! ――いやあ、ごめんごめん。ゼーちゃんのそんな姿初めて見たから思わずね」

「お姉さまぁ、お怒りにならないで?」

「……怒っちゃ、ダメ」

「貴女たちもいい加減にしなさい!!」


 さすがにこれ以上はよくないと思ったのか、二人はさっとゼーベンヌから離れて席に着いた。一頻り声を荒げたゼーベンヌであったが、他の客も驚いてこちらを見ていると分かると、さらに顔を赤く染めながら乱暴に着席した。そのとき彼女に一睨みされたカブは、俺のせいじゃねえだろ、と思わざるを得なかった。


 ちなみに騒ぎの間にそっと席に着いていたテリムは、部屋に呼びに行ったときに室内から漏れ聞こえる声を聞いていたため、本当はこれよりもっと凄い内容だった事を知っている。しかし、それを暴露するのは誰も幸せにならないことであるので、彼はその記憶を脳内から放逐するように努めた。


 あと、このやり取りの最中エイジャが一番気にしたことが、「将来ゼーちゃんが歳若い娼婦・・を買ったり新人の女性・・騎士団員を誑かしたりして、こんな事させるようになったらどうしようかな」という、本人に聞かれたら今度こそ絞め殺されかねないものだったというのも、まあ知らなくて良いことだ。




「おほん、えーっとまあ、ちょっとバタバタしたけど、とりあえず食べようか」

「そ、そうですね、そうしましょう皆さん」


 この場において年長者であるエイジャとノーラのその言葉に、各々が食前の挨拶や神への祈りを捧げ、それから料理を口にする。料理はどれも量を重視して大皿に山盛りにされており、その分味に文句を言うなよという宿の主人の思惑が透けて見えた。

 とはいえ、味は普通に美味しいし、そもそもテーブルを囲んでいるのが大飯喰らいばかりであるので文句など出なかった。半数以上が十代であることに加えて、自棄になったように料理を食べるゼーベンヌもいるからだ。彼女は、今日一日の感情の振れ幅が大きすぎたせいでその辺りの感覚が鈍っているらしかった。魔力の回復のためにはよく食べてよく寝ることが大事なので自棄食いするのも悪くはないのだが、見ているほうからすればちょっとだけ心配に、ならなくもない。


「ノーラ、これも美味いぞ、ほれ」

「あ、ありがとうございます」

「あいあい」


「ゼーちゃん、そこの肉団子取ってよ」

「……はい、どうぞ」

「あれ、まだ怒ってる?」

「……怒ってません」


「テリム、これをあげようじゃないか」

「これって、……ウールの嫌いなピーマンじゃないですか」

「アンタは好きなんだろ、頼むよ」

「こら! 好き嫌いしてんじゃねえぞウール!!」


「ヘレンちゃん、もっと食べないと」

「え? でも、もうお腹が……」

「ちゃんと食べないと、――大きくなれないよ?」

「!! ……分かった。もう少し、頑張る」


「……?」

「どうした、ノーラ」

「いえ、今何故か、メイビーがこちらを見ていまして」

「んん? そこの料理を取ってほしかったのかな」

「さあ、どうでしょうね?」


「お、ヘレンがいつもより食べてるじゃないか。よし、それならこれをあげよう」

「……ウール、トマトもちゃんと、食べなきゃ」

「ウール!! お前いい加減にしろ!!」

「うわっ! カブ、そんなに怒らないでおくれよ。ほら、どうしても食感がさ、」

「やかましい! 無理矢理にでも食わせてやるから口を開けろ!!」

「や、止めておくれよ、それだけは!」


 ……そんなこんなで賑やかに食事は進み、やがて皿の上の料理が粗方胃に収まったところで宿の主人が空いた皿を片付けに現れた。


「いやはや皆さん、これだけ綺麗に食べてもらえれば腕を振るった甲斐があったというものですね」

「ごちそうさま、やっぱりここの野菜は新鮮で美味しいね」

「ありがとうございます。作った者たちも喜ぶと思います」


 エイジャが代表してお礼を述べると、宿の主人は嬉しそうに頭を下げる。そのまま空いた皿を片付け始め、両腕一杯に空いた皿を乗せて厨房に運んでいく主人。

 それを見ていたメイビーが、不意に呟く。


「ああ、そういえば……」

「どうしたメイビー?」


 修一に聞かれ、「いや、たいした事じゃないんだけど」と答えるメイビー。


「そういえば、レイちゃんが逃げたときにあの人もいたなあって、ふと思ったんだよ」

「あの人って、宿の主人か?」

「うん」

「へえ……」


 そう言われた修一が、何気なく、本当に何気なく厨房に入っていく主人の横顔を見る(・・)と――。


「――――ああ?」


 修一は眉を顰めた。そのまま、隣に座るノーラに顔を向け、ジッとその横顔を凝視する。それに気付いたノーラは僅かにたじろいだ様子を見せた。


「え、えっと、シューイチさん? 私の顔に何か付いていますか? そんなに見つめられると恥ずかしいのですが」

「…………いや、ノーラって顔の血色良いよな」

「へ? そ、そうですかね」

「ああ、……すまん、ちょっと部屋に忘れ物したから取ってくる」

「え、あの?」


 ノーラが何か問うより早く修一は椅子から立ち上がり、階段を上がっていってしまった。


「おや、シューイチ君はどうしたんだい? 折角、食後のお茶を持ってきてくれるというのに」

「いえ、何か忘れ物をしたと言っていますが」

「忘れ物?」


 やがて主人がやって来てお茶を注ぎ始めたところで、修一は二階から下りてきた。


 ――腰に騎士剣を吊って。


「シューイチさん?」

「あれ、シューイチってば何してんの?」


 いち早く気付いたノーラとメイビーが疑問の声をあげ、それに気付いた他の面々も同様に修一の姿を認め、あいつは何をしているのかと思う。

 不思議そうな顔で自分を見ている宿の主人に近付いた修一は、普段どおりの声音で主人に話し掛けた。


「よお、オッサン」

「は、はい、なんでしょうか?」

「さっきは美味い飯をありがとな。美味かったよ。ご馳走様でした」

「えっと、ありがとうございます?」

「まあ、それはそれとして、だ」


 そう言うと修一は、躊躇いなく腰の剣を引き抜いて、主人の首元に突き付けた。

 驚愕する主人に対して修一は、殺気を滲ませながら、問う。



「アンタ、何者だ? ――少なくとも、人間・・じゃあねえな。

 答えろよ、オッサン。俺が短気を起こす前にな」




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