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第7章 25

 ◇




「霊装填! ……からの、飛線っ!!」


 ヴィラを正面に据えて銀弾を捌き続ける化け物に、修一は大きく剣を振り上げながら斬撃を飛ばす。

 銃弾への対処のためにその場に釘付けにされているヴァンパイアは、忌々しそうにしながらも避けようとしない。


 修一の飛線よりもヴィラの銀弾の方がダメージが大きいからだ。


 その結果、右半身にまともに斬撃を浴びて体表が薄く裂ける。出血は大した事ないようだが、明らかに苛立っているのが見てとれた。

 これ幸いにと修一は、もう一発同じものを叩き込もうとする。


「もう一丁! 飛せ――」

「“リープスラッシュ”っ……!」

「!?」


 そこに、弾幕の隙を突いて魔術の刃が飛んでくる。またもや数本纏めての乱れ打ちである。堪らず修一は、横っ飛びで躱す。


 苛立ちのせいか、先程のものより威力が増していた。ゾブリと抉られた床と壁に、浮かぶ想像は明るいものではない。一瞬、避け損なって全身を斬り刻まれた姿が脳裏に浮かび、それを振り払うように悪態を吐いた。


「自分の屋敷を平気で壊してんじゃねえよ……!」


 この屋敷。規模で考えればノーラの家とほとんど変わりない。どうやって手に入れたのか知らないが、正規の手段で購入するとなればかなりの額になるはずだ。

 それなのに、侵入者を始末するためとはいえ、こうも躊躇いなく魔術を使ってくるとは。壊れても惜しくないのだろうか。


「しかし……」


 まあ、なんにせよ、だ。距離を取っての撃ち合いは、どう考えても修一の方が分が悪い。

 飛線も、焦熱壊剣も、威力では負けていないだろうが連射出来ないのだ。一回使うと次に使うために一呼吸か二呼吸必要で、その間は手が出せなくなってしまう。

 こちらから一発打つたびに何倍にもなって返されるわけだから、やはり割に合わない。


 そもそも、修一本来の戦い方ではないのだ。彼の本領は近接戦闘であって、一定以上の実力を持った者に対する距離を取っての攻撃は、あくまでも牽制や間合いの保持の為に使うだけだ。

 単純な能力の使用や威力を絞った飛線、これだけで倒せるのは相応の格下までである。

 まともに戦うのであれば、接近戦でないとどうしようもない。

 ……どうしようもないのだが。


 ――迂闊に近寄ると、なんかヤバそうなんだよな……。


 首筋でチリチリと燻るような感覚が、修一に最大限の警戒を呼び掛ける。

 後ろ髪に火が付いたみたいなこの感覚は、近付いて斬り掛かりたい修一を踏み留まらせるには十分な効果があった。

 最初の一撃、涅槃寂静剣を叩き込んだ直後から感じている警戒感。抑え込んだ恐怖とは別種の怖気に、修一は接近するのを躊躇っている。


「どうすっかな…………っと、」



 と、ここで。



「ぐうっ……」

「ッ!」


 ヴィラの撃ち続けていた弾丸、その内の一発がヴァンパイアの左腿に当たった。

 精密射撃の乱れ撃ちという文字だけ見れば矛盾した芸当は、とうとう化け物の反射神経による防御行動に瑕疵を生じさせたのだ。

 即座に銃をホルスターにしまうと、腰の剣に手を掛けながら接近する。

 銀弾の命中を好機とみたのか、これ以上の無駄撃ちは無益だと思ったのか。

 ヴィラは二本の剣を抜き放ちながら化け物に襲い掛かる。


「はあアッ!!」


 白銀剣を、化け物の鳩尾に向けて激しく突き込む。

 ヴァンパイアは、左腕を内から外に払うように動かして少女の剣先を逸らすと、右脚で地を蹴って左脚から踏み込む。

 大きく開いた口の奥に、鋭い牙が覗く。


「かっ!」


 ヴァンパイアの十八番。吸血だ。少女の首筋に牙を立て、その溢れる命を飲もうとしているのだ。

 真っ白な肌を食い破らんとする恐るべき凶器。

 当たればもちろんただでは済まないだろう。

 それだけの凶悪さを感じ取れる一撃だった。


「!」


 しかしヴァンパイアは、それを自ら中断する。

 食らい付く間際、顎下から聞こえた風切り音。

 ご丁寧にも視界の外に外れるまで攻撃を引き付け、相討ちすらも覚悟の上で伸び切った喉を貫こうとする短剣が、不可避の間合いを侵そうとしていたのだ。

 噛み付きを取り止めて上体を大きく仰け反らす。

 直後に、目前を掠めて振り上げられた短剣。

 躱されたヴィラは、挑発的に笑っていた。


「残念ネ?」

「この……!」


 右手の白銀剣の腹を、噛み付かれそうだった首筋にトントンと当ててみせる紫金の少女。

 ヴァンパイアはそれが嘲りだと理解した。

 化け物の頬がピクリと動いたのを、ヴィラの金色の瞳は見逃さなかった。


 ――まだまだヨ……!


 一つ短く息を吸い込むと、挑発的に笑ったまま、更に激しく斬り掛かる。

 長短各々の剣を、休む事なく上下左右に振り続けていく。

 十でも二十でも三十でも、防がれ躱され往なされても、攻撃の手を緩めない。

 攻めて攻めて攻め立てる。

 攻撃こそが最適解だと言わんばかりに。

 全神経を、目の前の化け物を斬る事に注いでいる。


「――っ、」


 苛立たしげにしながらも、攻撃に対しては冷静に対応するヴァンパイア。

 一つ一つの斬撃を丁寧に鞘で払う。

 あんな安い挑発で崩れる事などありえない。

 もっといえば、例え崩れたとしてもこの程度なら大丈夫だという自信がヴァンパイアにはあった。

 だからこそ、わざわざ接近戦にも応じているのだ。

 しかし。


「……」


 鬱陶しいのもまた、事実だった。

 脆弱な人間のくせして、疲れを知らぬかの如く剣を振り回してくる。

 払っても払ってもこれでは、キリがない。

 さっさと元を絶ってしまうべきだ。


 ヴァンパイアは、連撃を捌く最中にあって二度、視線を滑らす。

 一度はヴィラの左手に。

 もう一度は自らの右腕に。

 それからギラリと視線を戻し、ヴィラを見据える。


「ッ!!」

「ふっ!」


 袈裟懸けに振るわれる白銀剣を、ヴァンパイアは鱗鞘で受け止めた。

 ヴィラは、外向きに弾くようにして込められた力を肘と手首の脱力によって往なす。と同時に剣先を回すようにして軌道を変えると今度は逆袈裟に剣を振り下ろした。

 右後方に体を捌いて躱すヴァンパイア。追うようにして左手の短剣を突き出すヴィラ。


「むんっ!」


 そこに合わせるようにして振り上げられた左足が、短剣の柄を強かに蹴った。


「アッ!?」


 環状になっている護拳部によって手指は守られたが、ヴィラの左腕は真上に弾かれ、衝撃で短剣は高く高く吹き飛んだ。

 シャンデリアを掠めて天井に当たり、遠くに落下していく。

 すぐには回収できないだろう。


 そしてヴィラは、突くために踏み込んだせいで左半身を大きく晒け出す格好となっていた。


 ……心臓の守りが、ガラ空きである。


「っ、」


 しまった、と思うより早く、ヴァンパイアが動く。

 左足を着地させると同時に、――小剣を握って垂らしていた右腕を突き上げた!


「――――!」


 脇腹から入って心臓に届く。

 言葉になるより早くそれを理解した。

 身を捩って避けようとするが、明らかに化け物の方が速い。

 神術の行使も間に合うか。

 分からないが、間に合わなければ――。


「――ァ」


 次の瞬間、左胸にドン、と強い衝撃を受ける。

 咄嗟にヴィラは、やられた、と思った。

 次いで、あの剣筋は間違いなく心臓を捉えていた、間もなく灼けるような痛みが襲って来るはずだ、とも。


「貴様……!」

「!」


 だが、どうやらそうはならないらしい。


「ギリギリ……」


 ヴァンパイアの眉間に寄ったシワ。

 それを見て、胸元を見下ろして気付いた。

 刺さっていない。

 当たっただけだ。

 自分の胸と小剣との間に、硬い何かが挟まっていた。

 すぐに分かった。


 横合いから、騎士剣の剣先が差し込まれていた。


「そんで、」


 ヴァンパイアの不自然な視線に不審感を覚えた修一が、警戒心を振り切って飛び出していたのだ。

 その直後にヴィラの短剣が弾かれたのを見て慌てて陽炎で距離を詰めたわけだが、やっぱり右腕は動かせるようになっていたのか、と少々ゾッとした。

 苛立っていた様子から遊びなしで殺しにくるだろうと読み、心臓を守る位置に剣を差し込んだものの、もう一瞬遅ければ防げなかっただろう。


「ドンピシャ、――だあっ!!」

「!!」


 それでも、今回は防げた。それなら次は反撃だ。

 小剣の突きを受けて軋む剣先。

 構う事なく刃筋を立て、修一は騎士剣を真横に薙ぐ。

 大きく踏み出し、突き出された小剣の上を滑らせて、ヴァンパイアの首を打つ。

 斬れはせずとも、たたらを踏ませて後ずさりさせることは出来た。


「破断鎚!」


 振り抜いた騎士剣を真上に。

 天井に向けてピンと伸ばした全身を、一気に畳んで叩き付けた。

 小剣を握る右手の指に、目一杯の力を込めて。


 これにはさしものヴァンパイアも、痛みで顔を顰める。


「おらあっ!」


 さらに、身体を畳んだ状態から右足を引いて股を開き、低い姿勢のまま水平に一回転。

 遠心力を剣先に乗せ、左から右に騎士剣を。

 狙う高さは化け物のくるぶし。

 右足首の外側に、掬い上げるようにして剣を当てる。

 転倒を目的とした足払い。

 しかし、これは耐えられた。


 当たる瞬間に床を踏み付け、力ずくで堪えたのだ。

 絨毯の下で床の石材が砕ける音が聞こえたため、修一にもそれは理解出来る。


 ――……化けモンめ。


 内心で吐き捨てるように呟く。

 そこに、修一のすぐ後方から聞こえる呟き。


「――天界剣」


 右腕を引き絞り、白銀剣を寝かせて突きの構え。

 ヴィラが、剣の間合いの外から剣を突き出す。


「堅陣貫通!」


 修一には、剣先が一瞬伸びたように見えた。

 実際は、剣に込めた聖なる力を刺突の形で撃ち出す剣技なのだが、まあどちらでもいいだろう。

 大事なのは、それがヴァンパイアの左肩を貫いた事だ。



 ここが勝負所だ、と、修一は思った。



「――っああああああ!!」


 ここで倒し切るくらいのつもりで、一気に攻勢をかける。

 相手が反撃も出来ないように、少し前のヴィラよろしく攻めまくる。

 そしてヴィラも、修一の右横で同じように連撃を繰り出しはじめた。

 修一から二歩分ほど距離を取り、お互いの攻撃が邪魔し合わないようにしながら白銀剣を振るう振るう。


「――っ!」


 ヴァンパイアは、右手で修一を、左手でヴィラを相手取りながらも、ジワジワと後退していく。

 二人の猛攻に、少しずつ押されているのだ。

 身体各所への度重なるダメージと、その回復を阻害する柔らかな光。

 それらの積み重なりがヴァンパイアの行動力を削いでいるのだ。


「人界剣」


 ヴィラが、ダメ押しとばかりに三界剣術の構えを取る。


「――過重縛鎖!」


 斬った相手に「重さ」を纏わりつかせ、動きを鈍らせる剣技だ。

 ヴァンパイアは、体を捌いて躱そうとする。


「逃がすか!」


 それを許さない修一。

 ダン、と騎士剣を床に突き立てた。

 床面を這わせた極低温の冷気が化け物の足を絨毯に張り付け、ヴァンパイアはその場から動けない。


「くうっ……!」


 足止めされ、それでも上体を逸らすことで直撃を避ける化け物。

 左肩から右腰に向けて抜けた白銀剣。浅く体表を斬られた程度だ。

 纏わりつく重さも、ヴァンパイアの筋力なら有って無いようなものだ。無視できる。

 化け物は、剣を地面に突き立てたままの修一に狙いを――。


「――キエエェェァアアアアアアアアッ!!」

「!?」


 定めようとして、視界が大きく滲んだ。

 鼓膜を突き破りそうなほどの大音声が、耳から耳へ突き抜けた。

 平衡感覚が狂う。聴覚が鈍る。手足の痺れと目眩まである。

 騒音歌術(ノイズ)だ。

 ヴィラが化け物に、至近距離から歌声を叩き付けたのだ。


「……よし」


 そして修一、簡単には剥がせないように、きっちり冷やしてから剣を抜く。

 よろめくヴァンパイアへ、容赦なく剣撃を浴びせていく。

 手心はない。慈悲もない。

 あるのは純粋な戦意と、必倒必滅の決心だけである。


 受けるヴァンパイア。歪む視界に苦戦しながらも、どうにか二人の攻撃を凌いでいる。

 歌術の効果はそこまで大きいものではない。人外の精神力をもってすれば尚のことだ。それに、身体に纏わりつく重さも時間の経過とともに少しずつ軽減していっている。足の裏を貼り付けられたのだって、もう少し回復してから剥がせばいい。

 そうした思いとともに、有効打になりそうなものを優先して弾き、当たっても大したことないようなものは肌で受け止めている。そしてそれは、大半が修一の攻撃であった。


 さもありなん。ヴィラの白銀剣と修一の騎士剣では、大元の与ダメージ量が違う。

 ヴァンパイアなどの魔なる者に対して非常に強力な攻性を持つ特銀製の剣と、特注品ではあるものの元が量産品の鋼の剣だ。

 どちらをより警戒するべきかなど分かりきったことであるし、事実、修一の剣撃はまともに刃が通っていない。防御を抜けたものが肌に当たっても、擦過傷すら与えられていない。


 これには修一も、腹が立った。

 ヴィラの斬り付けは完全にシャットアウトしているくせに、こちらの攻撃は抜けても構わないというのだ。舐めているにも程がある。

 修一は、「思い知らせてやろうじゃないか」と、一つ呼吸を整えた。

 そして。


「霊装填」


 騎士剣に、淡く霊力を纏わせる。

 青白い光が刃を包む。

 ヴァンパイアは、それに目もくれない。

 だから修一は。


「――霊装填」


 斬り掛かりながら。攻撃の手を休めることなく。


「霊装填!」


 篭められるだけの霊力を、刃に乗せていく。


「――霊装填!」

「なっ……!」


 防御を抜けた袈裟打ちが右上腕部に当たる。

 剣は、化け物の皮膚を浅く斬り裂いた。

 ようやくヴァンパイアも、それがこの世界の技術系統から外れた力であると気付いたようだ。

 傷口に感じる不快な痛みによって、それが特銀と同質の性質を持つものなのだと。


「霊装填!!」


 都合五回。

 体内に残る霊力の全てを乗せた。

 修一自身も理屈のよく分からない力ではあるが、間違いなく存在するし使いすぎれば枯渇する力。


 霊力を、最大限に。


 ――保って、十五秒!!


 保持性の低いエネルギー。

 篭めたそばから少しずつ抜けていっている。

 化け物に対して有効打を与えられるのは、長くてもその程度だ。

 ならばこそ。


「十五秒以内に仕留めるぞ!!」

「了解ヨ!!」


 あとはもう、攻めるしかない。

 修一の霊装填が切れる頃には、ヴァンパイアに掛けた弱体化も切れる。

 つまり、今このタイミングで決め切れなければ、後はもうジリ貧になるのだ。


「――――っ!!」

「――――ッ!!」


 吼え猛り、遮二無二無我夢中に剣を、振るう、振るう、振るう!

 当たろうが当たるがまいが。

 防がれようが抜けようが。

 関係ない。関係ないのだ。

 もはやそんな事に一喜一憂している場合ではないのだ。


 あと十秒。

 化け物を削りきり、仕留めなくてはならないのであれば。

 そこに至れるまで、手を止めることは出来ないのだ。


「ぐうう……!」


 ヴァンパイアには、防御が有効なのかどうかすら分からない。

 きちんと守っているはずなのに、どんどん傷が増えていく。

 頬を、首を、肩を、腕を、胸を、腹を、腰を、足を。

 受けても受けても、弾いても弾いても、往なしても往なしても。

 それを上回る量の波状攻撃が押し寄せてくる。

 流れ出る血が飛び散り、床を濡らしていっていた。


 あと七秒。

 全身傷だらけになっていくヴァンパイアを見て、ヴィラは思う。

 まだこれでは足りない、と。

 ダメージは確かに重なっていっているが、致命傷には至っていないと。


「いやあああぁぁぁあああアッ!!」


 裂帛の気合を乗せて叩き込むが、それでも致命傷には届かない。

 おそらく、当たるギリギリで力を逸らされているのだ。

 となれば、それ以上の威力が求められるわけだ。

 ヴィラは、腰に吊ったポーチにサッと手を伸ばし、――小さな瓶を取り出した。


 あと五秒。

 修一が、この期に及んで考えることは、たった一つである。

 すなわち、如何にして勝ち切るか。

 どのようにして倒し切るか。

 何をどうやって、詰めを詰め切るか、である。


「…………」


 最後の詰めには、最大の一撃を。

 この状況で、使える技はどれだ。

 重ねても、問題ないのは。

 そのために必要なものは。


 ――……やるしか、ないか。


 修一は、ギュウッと握りに力を込めた。


「――焦熱壊剣」




 ◇




 あと三秒。


 一手目は、ヴィラだった。

 ポーチから取り出した瓶を、ポイっと、ヴァンパイアに向かって投げた。

 緩く、投げ渡すような気安さで。

 反射的にそれを叩き落とすヴァンパイア。

 瓶が割れ、中身が飛散した。


 ……よく聖別された、聖水(・ ・)が。


 化け物の全身に、散って掛かった。


「……っ!?」


 全身が硬直した。

 瞬間的なものだろうが、微動だに出来ない。


 あと二秒。


 それに乗じて、修一もヴィラも、構える。


「霊装填!」

「天界剣!」


 修一は剣を、身体ごと高く突き上げる。

 残りカスを振り絞って。

 ヴィラは剣を、真っ直ぐに振り上げる。

 刃を青白く発光させて。


 あと一秒。


「――――」


 ヴァンパイアは、直感的に避けられないと。

 防御行動すら取れないと、そう感じた。


 ネズミ相手に。

 ここまでやられて。

 身体中、血塗れにさせられて。


 寝起き早々、冗談ではない。

 冗談ではない、――が。


 ――仕方ないな(・ ・ ・ ・ ・)


 コイツらは、強い。

 自分に比べれば甚だ脆弱な種族だが、それでも時々このように、実力を携えてやってくる。

 そういえば、前も(・ ・)こうやって負けたんだったか。

 あれはもう、何年前になるんだ?

 ずっと寝ていたから、分からないな。


「――――ふん、」


「破断鎚ぃいいいい!!」

「聖火滅鬼ィイイイ!!」


 そこで二人の剣が同時に振り下ろされ。


 ヴァンパイアの両肩に、叩き付けられた。



 そして――。




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