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第1章 プロローグ
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血の海に沈むとは、まさしくこの事だろう。
そう言い切ってしまえるような状況に、少年は陥っていた。
ペンキをぶちまけたような赤の中に寝転がり、手足を力なく投げ出している。
身体がピクリとも動かない。
痛みなどとっくに感じない。
今、呼吸が出来ているのかも分からないし、鼓動の音も聞こえない。
混濁していく意識。
寒いのか? 暑いのか? 明るいのか? 暗いのか?
もはやそれすらも理解出来ない。
分かるのは、全身から失われていく血と熱と、その後に訪れるであろう結末だけだ。
死ぬ。おそらく、もう間もなく。
それは、既に避けようのない段階まできている。
ここまできて、奇跡の一つでも起きて生き残れるなどとは思っていない。
少年は、ここで死ぬだろう。
少年自身も、それは理解できていた。
「――!!」
ふいに、声が聞こえた。
誰の声かは、すぐに分かった。
視界に映る、声の主。
少年は――。