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商人グレました  作者: モロモロ
第一章 決意までの日々
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準備1 店番

 さぁ、勢いでいろいろとハッタリをかまして、契約書まで作ったはいいが、これからの予定は行き当たりばったりだ。どうにか、あの契約書を不履行にしたいとは思っているが、冒険者達の性格や、生活、主たる収入など、まったく分からない現状では対策の練りようがない。

 明日から彼らに監視者として送り込む、冒険者ルーク・トラビックとは、分かってるとは思うが、エルフに変装したオレだ。先日「ファイアーロックバー」でラグとは会っているが、先方は酔いつぶれていたので自分の事は覚えていないだろう、一緒に「ファイアーロックバー」に行くのだけは念の為に避けようと思う。

 それと、彼らはかなり良いパーティーを組んだ、装備もかなり良質の冒険者だから、きっと、主たる収入源は狩りだろう。監視者として、街の外に出る事になりそうだ。

 明日、なんの対策も無しに、彼らと狩りに同行するのはかなり危険だろう。本当に付け焼刃にはなってしまうが、今日は午前中は訓練所、午後は街の外に出て、若干でも実戦を積んでみようと思っている。


今まで、街の外に出ようとは思ってなかったから、まず戦闘スタイルを考えなきゃいけないな。


「スキル値変更」はあるにしても、オレの「能力値」がそもそも戦闘向きではないし、今日中に一つでも必殺技を会得したい。明日以降、彼らと行動を共にするのに、いざという時、もしかしたら冒険者では無いとバレてしまう可能性は極力少なくしておきたい。


オレの能力値は

筋力(攻撃力) 45

体力(HP&持久力) 30

耐久(物理防御) 18

器用(成功率) 80

敏捷(身軽さ) 28

知識(魔法防御) 40

魔力(MP)3


 だから、とりあえず、魔法を使うって線は諦めようと思う。エルフなら一番は魔法を操るのがいいと思うのだけどな。いかんせん、「魔力」が少なすぎる。今から秘薬を大量に揃えて修行とか破産してしまう。

 弓なら、強弓ではなく、連射可能な弓なら、オレの能力値でも練習さえすればなんとかなりそうだ。ただ、弓矢という武器は、オレから言わせれば、矢を打つ度に金を捨ててる感覚になるんだよな。強い弓になればなるほそ、その矢の値段も跳ね上がっていく、「矢生成」のスキルがあったとして、材料を確保して、生成して、強敵がいたら、ガンガンそれを撃ちまくるとか、ちょっと商人として許せない武器だわ。

 そうやって、試行錯誤した結果、オレの琴線に触れた武器は「暗器」と云われる、アサシンなどが使う武器だ。これなら、筋力はあまり必要無いし、急所を上手く突けば、一撃で敵を屠る事も可能だ。肉弾戦になりにくい武器だから痛い思いもあまりしなくてすむだろう。オレの能力値の中で、唯一他人に誇れる器用80も、暗器を主体とした戦闘スタイルなら役に立ちそうだ。ただ、俊敏28というのは、今日一日でどのぐらい上げられるか分からないが、俊敏だけどうにかすれば、明日以降の街の外での、冒険者の監視もある程度安全に行えるだろう。


さて、戦闘スタイルも決まったところで、装備を整える。

店の商品から、選りすぐった装備を紹介する。


装備 神速の九宮袖箭 俊敏 +2 毒 +6 攻撃力 24

頭: エルフ族変装セット 防御力 2

上半身 下半身: ラビットメイル 俊敏 +4 防御16

足: ラビットシューズ 俊敏 +4 防御13

腕: ラビットグローブ 俊敏 +4 防御14

アクセサリー:イケメンフルフェイス(イケボ変換機能付き) 防御力 3


 しかたがない事だが、頭とアクセの変装セットがキツイ。分かってたけど、本格的に戦闘をするわけじゃないから、なんとかなるだろう。

 ラビット装備は、全身兎のモコモコした感じで、まったく強そうに見えないから、俊敏+4があるにも売れ残った商品だ。女性がすぐに買っていくと思って生成したのだが、売れ残った。

 そして、その売れ残りをオレが着てるわけだ、鏡で確認したが、これだけエルフにミスマッチな装備も無いだろう。はっきり言って我ながらクッソダッセェ。素顔でこの装備を身につけるよりは、かなりマシだけどな。ダサくても、装備補正も入れれば、 敏捷(身軽さ) 28+14 となり、俊敏42だ。これならなんとか戦えるかもしれないな。ダサさよりも今は自分の命と計画優先でいく。

 逆にこれだけダセェと先日「ファイアーロックバー」でカッコつけながら飲んでいた人物と同一人物だとは、誰も気づかなくなるだろうから、結果オーライと思うことにしよう。


神速の九宮袖箭に関しては、自分で生成したものではなく、出入りの業者がオレの店のオープンの時に売り込みにきて、「武器の性能は間違いないものなんですが、暗器使いっていうイメージが悪すぎて、暗器の使い手がどんどん減ってるのもあって、暗器がまったく売れないんです、モートさんどうか助けると思って仕入れて下さいませんか?値段は勉強させていただきますんで。」ということで、足元みて、破格で買い取った商品だ。まぁ、店頭に並べてから今日まで、手に取る人もいなかったので、仕入れて失敗したと思っていた商品だ。あんなに売れない商品をオレに売りつけた、あの出入りの業者の方が、オレよりも数倍商才があるって事なんだろう。だか、ここでオレが使えば、有効利用出来るし、属性が2つも付いているって意味では、かなり良い武器ともいえる。九宮袖箭は、どんな武器かというと、袖の中に仕込んで近距離で毒の短い鉄矢を出すってものだ。基本、9発を仕込めるが、一発で仕留める事が目的だから、そんなに矢の消費も多くないだろうし、敵を屠った後に、余裕があれば鉄の矢は回収も可能だろう。



装備も決まったところで、一旦、装備をアイテムボックスに入れて、いつもの商人ローブに着替える。明日からしばらく宿泊続きになるだろうから、冒険アイテムをアイテムボックスに入れて、「閉店」の札を出して、店を出発した。


 まず、最初に商人ギルドへ向かった。明日から一週間店を留守にするので、ギルドに店番を頼む事にした。棚卸在庫の表をギルドの受付に渡す。それと7日分のギルドからの派遣費用2万8000ドランを支払う。

 一日4000ドランというわけだ、ここから一日2000ドランが商人ギルドに、派遣されてくるスタッフには2000ドランが支払われるわけだ。店を持たない商人などは、派遣専門の商人で食っていってるヤツも多い。

 オレも昔はそうやって派遣商人をずいぶんやったて店をもったから、この制度が3方良しで凄く良く出来ているのも分かる。日給2000ドランなんて誰も派遣商人をやるヤツなんていないんじゃないかと思うかもしれないが、派遣期間が終わった時に、棚卸在庫の表から、どれだけ商品を売って、販売したかによって、利益の4割を還元する事になる。だから、派遣を依頼する側からすれば、売れなければ日給4000円の安価で店番が雇えるし、派遣商人からすれば、人の店の商品で仕入れなどのリスク無く、自分の商才を存分に磨くことが出来る。ギルド側からすれば、派遣制度の利用が多ければギルドが潤うって訳だ。棚卸在庫表もあるから、窃盗などあった場合は、ギルドと派遣商人で折半で弁済してくれるから、安心して店番を任せられる。


奥から今回の派遣商人としてオレの店の店番をすることになったらしい人物が現れる。


「よっ!モートの旦那!7日間ものご依頼誠にありがとぉごぜぇます!」

「お、ソマックさんが派遣されて来るとはありがたい。在庫は全部売り払ってくれて構わないから、成果を楽しみにしているよ」


奥から出てきたのは、ソマックというドワーフ族の新鋭商人だ。中肉中背、赤い髪にテカテカと光る顔も酒焼けなのか真っ赤だ。キリリとした眉に力強い意思を秘めた黒い瞳。既に何度か派遣をお願いしたことがあるが、オレが店にいる時よりも、断然売っている。かなり優秀な商人だ。いつか、オレ以上の店を持って強力なライバルになる可能性もある。オレとしては、現状はソマックが来る度に、在庫がはけて、新商品を入荷できるので彼が派遣されてくるのは嬉しい。せっかく今回は変装出来るわけだから、あとで時間があれば、ソマックさんの店番っぷりも偵察させていただこう。


「モートの旦那。まかせてください。7日後にはきっと良い報告が出来ると思います。今回はどこかへご旅行ですか?」

「まぁ、そんなところだ」

「でしたら、良い馬車があります、護衛も手配いたしましょうか?」

「い、いや、今回は既に別で手配済みだ。相変わらず商魂たくましいな」

「お褒めの言葉ありがとうございます」

「その調子でよろしく頼むぞ。今日の昼から頼む」

そう言って、店の鍵を渡す。

「はい。かしこまりました。いってらっしゃいませ」

深々とお辞儀をするソマックを後に、オレは再度店に戻り、装備一式を装備すると、<潜伏>と<隠密>を発動。店裏から出て、訓練所近くの物陰で姿を現す。


そして、ラビット装備に周囲の視線を釘付けにしつつ、訓練所へと入っていった。

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