魂の契約
さて、では、俺の狙う美女軍団のステータスを発表よう。
能力値や装備から、およそのパーティー内での役割も予想がつくのでそちらも。
・シャルロット・クーシャニナ
装備 両手剣 ブラッディースライサー 闇属性+2 攻撃力 35
頭:シルバーアーマー 防御21
上半身 下半身:シルバーアーマー 防御46
足:シルバーブーツ 防御21
腕:シルバーガントレット 防御21
アクセサリー:ゴールドピアス 光属性 +7
筋力 48
体力 52
耐久 56
器用 20
敏捷 49
知識 9
魔力 8
全身銀の鎧に身を包んだ両手剣戦士だな。きりっと切り上がった海の様に深い蒼い瞳でこちらを睨みつけている。気が強そうな女だ。身長も俺と同じぐらい高いし力もあるのだろう。銀装備に映えキラキラと輝く黄金色の髪は短くカットされている。可愛らしい唇はキッと食いしばっている。象牙のような肌で一瞬エルフ族かと思ったが、耳を確認すると、どうやら人間族のようだ。ラグと一緒に前衛で戦うのだろう。
・アース・カンファニック
装備 強弓 紅鋼弓 属性 火属性+3 攻撃力 34
頭:ガーネットシャークカチューシャ 防御7
上半身 下半身:ガーネットシャークアーマー 火属性 +4 防御39
足:ガーネットシャークアーマー 火属性 +2 防御14
腕:ガーネットアーマー 火属性 +2 防御12
アクセサリー: イエローバタフライリング 火属性 +6
ガーネットシャークから作った装備で全身を覆っている。鎧というより、スーツに近い装備はボディーラインをくっきりを浮かび上がらせている。真っ赤な髪と、目鼻立ちのはっきりした顔立ち、そういったドワーフ族の特徴が、ガーネットの紅装備と非常に合っている。自分の身の丈より大きな、紅鋼から作られている強弓を、女性ながらに引き絞る筋力はドワーフ族ゆえだろう。スーツの上からでも引き締まって均整のとれた筋肉が良く分かる。
筋力 63
体力 45
耐久 46
器用 47
敏捷 36
知識 22
魔力 24
・ラムラ・イーゼニア
装備 サンダーロッド 雷属性 +3 攻撃力 8
頭:エメラルドサークレット 防御7
上半身:下半身:サンダータイガーローブ 雷属性 +3 防御22
足:サンダータイガーブーツ 防御13
腕:サンダータイガーアームレット 雷属性 +3 防御12
アクセサリー: エメラルドリング 光属性 +6
雷系の攻撃魔法主体で、遠距離から攻撃するんだろう。先ほどのダークエルフがコイツだ。艶々とした褐色の肌に、煌めきを伴う黒い髪、髪にはアクセントとしてエメラルドのメッシュが入っている。エルフ族の亜種なだけあって、もの凄い美人だ。そして、スタイルも凄い、ローブを着ていても、肉感的なフェロモンが周囲に漂う。目の奥に強い意志力が秘められていて、今はラグの横で心配そうにラグを見つめている。
筋力 26
体力 34
耐久 31
器用 26
敏捷 37
知識 56
魔力 69
・セシリア・ホムライン
装備 スリーピングレイピア 睡眠属性 +5 攻撃力 15
頭:ジャウ猫の耳飾り 俊敏 +2 防御15
上半身:ジャウ猫の胸当て 俊敏 +2 防御17
下半身:ジャウ猫の腰巻 俊敏 +2 防御15
足:ジャウ猫のブーツ 俊敏 +2 防御13
腕:ジャウ猫のグローブ 俊敏 +2 防御11
アクセサリー:スリーピングホロウの瞳 睡眠属性 +6
一瞬獣人かとも思ったが、装備の耳のようだ。体の周囲に黒い霞がかかってるように見えるのはシャドー族の証だ。ネコ耳に黒髪ロングのストレート、純和風な顔立ち。凛とした姿勢で、無表情で冷たい視線をこちらに向けている。ジャコウ猫の装備は可愛らしいのに、印象的には冷たさしか伝わってこない。俊敏さと睡眠属性で、相手を眠らせたり、戦闘前に斥候に行ったりと、この俊敏さはなにかとパーティー内でも重宝されているだろう。
筋力 41
体力 49
耐久 38
器用 60
敏捷 72
知識 28
魔力 32
・アイラ・メーテルンド
装備 ホーリーバタフライロッド 光属性 +5 攻撃力 22
頭: 癒しの髪飾り 回復+6% 防御21
上半身 下半身: テトラフィッシュメイル 水属性 +2 防御18
足: アクアシューズ 水属性 +2 防御14
腕: アクアブレスレット 水属性 +2 防御12
アクセサリー:ヒーリングアミュレット 回復+5%
透き通るような青い髪と、蒼い瞳、ウンディーネ族だろう彼女は、かなりの高身長だ、180cm近くあると思う。キラキラと輝くテトラフィッシュメイルはうっすらと透けていて、モデルのような体型がシルエットで浮かび上がっている。穏やかな瞳でラグを静かに見つめている。後方から彼女の補助魔法がどんどん飛んでくるのは、かなり心強いだろう。
筋力 30
体力 36
耐久 35
器用 20
敏捷 50
知識 62
魔力 48
パーティー的に、タンク役のラグ、前衛のシャルロット、撹乱としてセシリア、後方からはアイラの支援魔法、ラムラの攻撃魔法、アースの強弓とかなりバランスのとれたパーティーだな。
それにして、これだけの美女を引き連れいてるこのラグというサラマンダーは、まったくイケメンでも無いから、かなり人間的な魅力のある人物なんだろう。そして、タンク役という、身を呈して仲間を守るポジションに付いているところから、かなりの父性愛と、ドM精神の持ち主だと俺なりに分析する。
「みんなも協力してくれるって言っている。モート。かなり厳しいかもしれないが、その条件で受けさせてもらおう」
「すまねぇな。ラグ、俺がそれだけの経済力を持ってれば、俺が助けてやれたんだが、ウチの一家は、世帯がでかい分、上納金もお前のとこの倍以上だ、なんとか今月も収められたがな、残念ながら、お前の一家を助けるだけの余裕は無いんだわ」
「それは、俺も同じですから、良く分かるからな。兄貴の気持ちだけで充分だ」
「何か力になれることがあったら、なんでも言ってくれ」
兄弟分の熱いドラマが展開されている。金は無いけど、何か出来る事、ありますよ。提供しましょう。
「ラグさん、先ほど、私はリスクというお話をしました。そして、この5人の一家の方々が保証人となっていただけるなら、30万ドランというお話をしました。しかし、更に信頼出来る力ある保証人の方が、血判を押して頂けるということでしたら、一週間後の返済はかなり確実性の高いものとなります。」
「それは、俺の事を言っているのか?」
獣人が睨むように問いかけてくる。
まぁ、ここまで話が進めば、相手にとっても自分が必要な存在になりつつある、かなりギリギリの交渉をしていっても、さすがに暴力は加えてこないだろう。
「はい。あなたのような、権力も力もある方が保証人となっていただけるのであれば、当方としても非常に安心なところです。22万ドランで結構です」
ここで、思いっきり金利を落とす。相手の退路を塞ぐために。
周囲の目線が一気に獣人に集中する。もうこの状況で断れないだろうな。
「分かった。お前が想像するほどの権力などないが、俺の血判一つにそれだけの価値があるならば、それでラグ一家の力になれるなら、保証人になってやる。」
「ありがとうございます。私も高利貸しのような汚名を受けたくはありませんし、リスクを少なく良いビジネスが出来るのが一番でございます。では、こちらの契約書に皆さん血判をお願い致します。契約内容は主に3つ。」
「1つ目は、7日後の夜、商人ギルドにて、22万ドランを私に手渡しで一括返済すること。返済には、ラグさん一人で来ていただきたい。商人ギルド側も、冒険者の方々が多数押しかけては、相応の対応をすることになると思います」
「2つ目は、あまり考えたくはないのですが、返済がかなわなかった場合、もしくは、期日の時間を過ぎてもラグさんが現れなかった場合、本人及び連帯保証人の方々には、当方に魂を移譲していただきます」
「3つ目は、大規模な逃亡や、当方への暗殺・監禁などを計画しない、またその所作が発覚した場合には、即刻魂の移譲を行う。監視人として、当方より一名を派遣することを容認する」
「上記、3つの事がこの契約書には書いてあります。その内容に離叛した場合には、この契約書に込められた魔力で、即刻、当方への魂の委任が行われる事は、ご承知下さいませ」
契約内容を読み上げると、ラグ一家の面々、獣人達一同、かなり厳しい顔つきになっている。魂の契約書など、冒険者の人々が接する事はまずない。噂程度には聞いたことはあっても、きっと内容はすべて理解できてないだろう。
「契約しよう」「うむ」「早く済ませてしまおう」「押すっちゃ」「何処に押すんだ」「ワカッタ」「了承します」「俺も押すぞ」
魂を移譲するという意味の恐ろしさも本当の意味で理解できている人物はいないことが、こんな軽はずみな決断から良く分かる。まぁ、オレにそこを細やかに説明する義務はない。
「それでは、旦那様方。こちらになります」
赤みを帯びて輝く契約書に、それぞれが指を傷つけ、自らの血で拇印を押していく。全員分の血判が終わった所で、オレ自身も、鈍い痛みを伴いながら親指を切りつけ契約主の場所に拇印を押す。契約者達の血の魔力を充分に吸収すると、契約書が赤く輝き、その輝きがそれぞれの胸の位置に吸収されていく、そして、吸収された赤い輝きが、それぞれの魂の色を吸い込んで、契約者達の胸がから再び浮き上がると、様々な色の輝く球体が、契約主たる、俺の元へ飛んできて、俺の胸の中に収まる。契約者達の魂が担保として、自分の体内に収まった。
「契約完了です。では、7日後の夜、商人ギルドにてお待ちしております。それと、明日から、私の雇った冒険者ルーク・トラビックなる者が監視者として、そちらに伺うと思います。よろしくお願いいたします」
深々をお辞儀をする。
「必ず弁済する。みんなの恩義に応えるためにもな」
「ありがとうございます」
ラグに再度深々とお辞儀をすると、冒険者達は、走ってきた方向に去っていった。
現実世界、こちらの世界、合わせて37年間生きてきた人生の中で、一番スリリングな体験だったかもしれない。あんな怖そうな奴らを相手取って契約書まで押させるとか、昔の自分なら、想像も出来ない行動だが、何かが自分の中で変わりつつあるのが、良く分かる。高揚感と達成感が胸をいっぱいにする。
「さて、忙しい一週間になりそうだ」
明日からの準備に取り掛かる為、店前の掃除を切り上げ、店の奥へと入っていった。