歪愛
貴方の愛する人を思い浮かべてみて下さい。
月夜の下、はだけた服の下から覗く素肌は、まるで白い彫像の様に美しい。
そっと指を走らせれば、くすぐったそうに彼女は身をよじった。
真っ赤に染まった顔は、潤んだ瞳と共に僕に向けられている。
それはどんな魔法よりも強力で、誰でもない僕を君の虜にしてしまう。
奪う様に、それでも優しく丁寧に、彼女の唇に自分のそれを重ねた。
視界いっぱいに広がるその顔は、今まで見たどの顔よりも艶やかで、綺麗で。
全てが欲しい。君の全てを、僕だけのものにしたい。
狂っているのかもしれない。毒されたのかもしれない。
でも、それでもいい。
白い肌に指を走らせれば、どんな風に悶えてくれるのか。
柔らかい膨らみを掌中で弄べば、どんな風に声をあげてくれるのか。
彼女の一番大事な場所を僕の色に染めれば、どんな風に踊ってくれるのか。
知りたい。知りたい。知りたい。
君の全てを、何もかもを。僕だけの色で染めて、僕だけのものにして。
それを狂うというのなら、僕は喜んで狂ってやるさ。
ねえ、刹那。
こんな風にしか君を愛せない僕を、君はどう思う?
こんな形でしか想いを伝えられない僕を、君はどう思う?
答えてはくれない。だって彼女の口は僕がいま塞いでいるから。
口を離せば、きっと彼女は嬌声をあげて踊り狂う。僕の指の動き一つで、彼女の全てを想いのままに出来る。
そんなのはつまらない。もっと、もっともがいてくれよ。
僕の腕の中で必死に身体をよじる君が、何よりも愛おしい。もっと足掻いて、抵抗して、そしてそれでも尚、君は僕から逃れられない。
僕が君に狂った様に、君も僕に狂うから。狂わせてみせるから。
今はまだ大丈夫でも、いずれ僕しか見えなくしてみせる。
だから今は、まだ純粋に彼女を想える自分がいるこの刹那は。
―――ただ想いのままに、君を求めたい。
以前書いた短編を手直ししたものです。『刹那』は適当に思い浮かんだ名前なので、お好きに変換して下さい。
何というビター!!
みたいな感想を抱いて頂ければ幸いです。