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7.王都襲撃……?

 これで復讐が遂げられる。リオン達に追いかけられることもなくなる。

 そう思ったのも束の間だった。


「えっ、ちょっと待って! なんで⁉︎」


 降り注ぐ闇は途中で眩しく光り、白く色を変えた。神聖な光として王都に注いだそれは、地上に近づくと次々に聖花の白い花びらへと変わって行く。

 王都は、白くけむり、フェリスたちのもとまで甘い香りが立ち上ってくるほどだ。


「花⁉︎」

「……吹雪ですねぇ。すごく綺麗ですまるでフェリス様の心みたい!」

「も、もう! なんで闇魔法から花ばっかり出るのよ!」

「フェリス様の心が美しいからでは?」


 当たり前でしょ? という顔をして首を傾げたマオが、うふふと笑いほおをゆるませた。


「お花を出すフェリス様、あまりにもかわいいです」

「そうじゃなくて!」

「あっ、すみません! 推しが尊くてつい」


 悪びれなくそう言ったマオが、わざとらしく眉をハの字にする。


「うーん、フェリス様が聖力セイクリッドが強すぎるからですかね?」

「闇堕ちまでしたのに!」

「フェリス様は希代の大聖女ですから! ちょっとやそっとの闇なんてかき消しちゃうんですよきっと」


 むうとほおを膨らませる。なんだか納得がいかない。


「なんで……もう聖女に生まれ付いたのが一番の不幸じゃない……!」


 人の役に立てる力だと喜んでいたのに、この力はフェリスを幸せにはしてくれない。

 まるで呪われてるみたいだ。


「僕は、別に今のままのフェリス様で良いと思いますけど」

「復讐も出来ないのに⁉︎」

「それはそれで、僕と美味しいものいっぱい食べてくれれば」


 フェリスを見つめてにこりと笑うマオに、一瞬心が揺らぐ。

 今まで知らなかった美味しいものを、マオと食べる。マオはきっと、フェリスを甘やかしてくれるだろう。


「でも、じゃあこの気持ちをどこにぶつければ」

「待って」


 低い声がフェリスの声を遮った。マオのまとう空気感が変わり、ぴりっとした緊張が走る。

 鋭くなった視線の先に視線を動かした瞬間、二人の前に闇の障壁が現れた。そこになにかがものすごい勢いでぶつかり、大きな音が鳴る。それが続いた。


「な、なに⁉︎」


 目をこらす。王都から一直線に二人を目指して飛んで来ているのは、光の矢。魔法だ。

 こんな上空まで魔法を放てるような魔法使いを、フェリスは一人しか知らない。


(ミリアね……)


 お姉さまと慕ってくれていたのに、この仕打ち。フェリスが聖女だからと、取り入ろうとしていたのだろうか。

 あんなに可愛がっていたのに、そのフェリスの気持ちを利用していたのだ。


(ミリア……可愛かった。妹のようだと本気で思っていたのに)


 容赦なく打ち込まれる光の矢に、心の底が冷える。

 復讐しなくては。フェリスを裏切った者全てに。


「この魔法きっとミリアよ」

「勇者一行なだけありますね。でも、さすがに上空過ぎて威力弱まるんで簡単に防げます」


 ふふんと口角を上げたマオが、表情をゆるめた。光の矢の威力がわかって、余裕が出たようだ。


「この魔法障壁、マオくんよね? マオくんなら、反撃も出来る?」

「出来ますよ。僕がやるなら確実です」

「なら、して! マオくんなら花は出ないでしょ⁉︎」


 もちろん出ませんけどと言いつつ、マオは首を横にふる。


「僕が魔法でどーん! も出来なくはないですけど、障壁張りながら攻撃って隙が出来やすくて。一人なら余裕ですけど、今はフェリス様を抱えていますからね。ちょっとでも危ないことはなしです。ひとまず戻りましょうか」

「そんなぁ」

「まあ、今日は偵察みたいなものだと思って。やっぱり勇者一行は、カモフラージュしても僕たちを見つけて来ますね。さすがだなあ」


 心底感心したように頷いて、マオが全方位へと障壁を拡大した。

 闇に包まれ、風景が暗くなる。

 王都に背を向けて飛ぶ。あっという間に光の矢は届かなくなり、王都の姿も視界から消えた。


(今度こそは……! お花出さないように練習してやる)


 そう心に誓い、流れ行く景色へと目を映した。せっかく空を飛んでいるのだから、景色は楽しみたい。

 それに景色を見ていれば、大人マオの顔を見なくて済む。大人マオを目にすると、どうにも気恥ずかしい。

 子供だと思って、デートイベントまでしてしまった。


(大人のマオくんとデートイベントしたらどんななんだろう……)


   * * *


(やっぱり出来ないよね……フェリス様の聖力セイクリッドは強すぎる)


 前を向いていると見せかけて、真生まおは景色を眺めているフェリスを盗み見た。

 その表情は、もの珍しそうにあちこちを見ては瞳を輝かせている。

 清廉潔白な、聖女。真生から見たフェリスは、今でもそう見える。フェリスの中にある聖力は、あまりにも大きい。


(フェリス様は、本当に闇の力を授かっているのかな?)


 いや、フェリスの中に闇力ダークネスがあるのは間違いない。なのに、なにかが引っかかる。

 そもそも、聖力と闇力が同居するなんて設定は、このゲームにはなかった。


(いや、もう僕が転生して来たところからシナリオ違うから色々おかしくなってるのかな)


 ねえマオくん、あれ海かな⁉︎ そんなはしゃいだ声を出すフェリスが指差す先を見る。

 あれはめちゃくちゃでっかい湖ですと返すと、驚いた声を上げてフェリスは湖を見つめた。今度ピクニックに行きましょうねと提案すると、フェリスは素直に頷いた。


(うーん、やっぱりおかしい)


 彼女は復讐してやる、滅ぼしてやると思っている。それなのに、食事やスイーツに感動しているし、滅ぼすはずの世界に興味もある。レクイエム・オブ・ダークネスの魔王をかわいそうと思う慈悲も持っている。

 根本的に、なにかがおかしい。フェリスの感情は矛盾だらけだ。


(出来るかわからないけど、推しは絶対に助けなきゃ……じゃないと、フェリス様推しの僕が転生して来た意味ない)


 なぜこの世界に転生して来たのかはわからない。それでも、もし理由があるとすればそれしかない。というか、自分の中での意味付けはそれだ。

 世界を滅ぼすために転生して来たとは思いたくない。


 真生は、ごく平凡な専門学生だった。

 学校へ通い、バイトをして、空いた時間にゲームをする。そんな普通の生活。

 叶えたい夢もあったし、友達もいた。両親を悲しませてしまったのは本当に心残りだ。だけど、死んだことをなかったことには出来ない。

 むしろ、そのままこの世界に転生して来て人生の続きを生きていることが奇跡だ。自分の存在はなくならなかった。

 そして推しに出会ったのだ。これが運命でなくしてなんだというのだろう。


 世界を滅ぼしたいなどとは思わない。きっとフェリスだって、闇堕ちさえしていなければ、そんなことなど思わないはずだ。

 でももし、これがフェリスの本心なのだとしたら。それを止められるのもまた、自分だ。勇者の聖剣から守れるのも。


「フェリス様、帰ったら美味しいスイーツ食べましょうね」

「ありがとうマオくん!」


 瞳を輝かせたフェリスに真生も笑いかけ、腕に力を込める。


(フェリス様は僕が……必ず……)


   * * *


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