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新訳MineFuneral  作者: 原作:とろこ リライト:ひさめ
13/21

【13】 複数方向への疑問

「ン? ドクター!! あれ!!」


しばらく流されていたクロだったが、腕を引かれる感触で意識を取り戻した。そこにはエリクシルとDr.バルチャーがいた。


「大丈夫ですか? クロさん……」


「私……ユキちゃんを殺しちゃった……」


「え?」


血の付いた絵筆を見つめるクロの頬に、雫が伝う。


「でもこれで安心してる私がいるのが許せない……。私はどこかでユキちゃんに嫉妬してた……」


「それは……?」


「私はいつだってそうだ! 他人の優れた点に嫉妬して、汚点探しに必死になって、その人が不幸になったり汚点があったりしたら安心して……」


ぽたぽたと涙を零しながら、クロが続けた。


「……私、最低だ。自分のつまんない嫉妬なんかで他人を犠牲にして優越感に浸って生きてるなんて」


「クロさん……」


「ねエ、クロはトラシーウィザードの秘密知ッテるンだヨね?」


「え? あれ……?」


クロは頭の中を整理した。しかし、自分が最初に与えられた秘密以外は分からないことに気がついた。


「そういえば分からない……」


「ジャあ、まダ大丈夫!! 殺シてナンかないヨ!! トラシーウィザードは生きテるヨ!」


エリクシルがクロの手を握りながら元気付けるように言う。


「そうだよね……きっとそうだよね……!」


クロは涙を拭き、ぎこちなく笑みを浮かべた。


***


クラウンヘッドとの戦いを終えたシュンヤは、二人を探して走っていた。


「クロー!!!! トラシー!!!!」


曲がり角を曲がったところで血まみれで倒れているトラシーウィザードを見つけ、シュンヤは駆け寄った。


「トラシー、トラシー!!」


シュンヤが声をかけるが、氷のように冷たくなったトラシーウィザードは一切リアクションなく目を閉じていた。


「あー……、し……んじゃったのか? だとしたら……」


「だとしたらなんだ?」


シュンヤの腕の中の冷たいままのトラシーウィザードが目を覚ました。シュンヤは驚いて彼から手を放した。トラシーウィザードはそのままその場に倒れ、後頭部を強打した。


「痛っ!!」


「わああああああ!! すいません!!」


「いや、いい。それより起こしてくれる? 死後硬直まだ解けてないから自力は無理だ」


「は……はぁ……、」


片手を伸ばしイライラした表情で助けを求めてくるトラシーウィザードを起こすと、シュンヤは不可解そうな目をトラシーウィザードに向けた。トラシーウィザードは準備運動をしながら、何か聞いてくるだろうかとシュンヤの質問を待った。


「あの……あの失血量と胸の血……、なんで生きてるんですか……?」


「何? 生きてちゃ悪い?」


「あ、いえ、純粋な好奇心です」


「好奇心な……。ボクみたいに魔力の強い魔法使いは、何かと命を狙われやすい。だから仮死状態になれる魔法を使うんだ。いわゆる死んだふりさ」


「あぁなるほど……」


「で、あの時は致命傷負ったから、仮死状態のまま体力を回復する魔法を使ったってだけの話だ」


「いい作戦ですね」


「あながちそうでもない。トリックスターに負けたからボクの勝率が下がった、今まで何度か負けてるからもう後が無いかも知れない」


「大丈夫ですよ!!」


「いやいや、大丈夫だったらこんなに取り乱してねえし……あーっ!! ニコチン切れ!! あの野郎!!」


「あ、それで取り乱してたんですか……あ、そうだ、これ差し上げますよ」


「これ?」


シュンヤはポケットからタバコの箱を取り出すと、トラシーウィザードに手渡した。


「はい、どうぞ」


「おぉ!! これはボクの愛用タバコ!! でもなんでこれを……?」


「あ……いえ、たまたまですよたまたま」


「ふーん……。まぁとにかく助かった」


トラシーウィザードは見るからに嬉しそうな表情でタバコをくわえると、それに火をつけゆっくり吸い、煙を吐き出した。


「あー……、やっと落ち着いたわー……」


「そうですね、表情も明るいですし」


「……シュンヤ」


「はい?」


「ボクは、お前の口調が一瞬変わったの聞き逃さなかったからな」


「っ!!」


シュンヤが声にならない声を上げ、戦闘態勢に入った。


「……だったら、何?」


トラシーウィザードは平然と首をかしげながら、『何でそんなに警戒するんだろう』とでも言いたげに言う。


「いや、別に。ただ何かしら理由があるんだろうなって」


「え?」


「今は話さなくていい。でもいつか話せる時が来たら、シュンヤのこともっと教えてくれよ。ボクのことも出来る限り教えるからさ」


「……はい」


「でもな、これだけは言っておく。自分が一分後には生きていないかも知れない体だっての思い出したからな」


「え?」


トラシーウィザードが真剣な面持ちでシュンヤに告げる。


「トリックスターを倒せるのはお前だけだ。だから、お前だけは死ぬな」


「へ?」


「ゲホッ!! ゲホッ」


「うわっ!! トラシー!!」


盛大にむせて口から血を流すトラシーウィザードに、シュンヤが声をかける。荒い息を整えながらトラシーウィザードが手の平をシュンヤに見せる。真っ赤になった口周りと同じ、赤い血が付いた手だ。


「ほら、ボクに残された時間は少ない、正直さっきの戦いはボクにとっての限界だったんだろうな……」


「……分かりました、一刻も早くトリックスターを殺します!! 彼を殺せばゲームは終わりますもんね!!」


「あぁ……頼んだ、じゃあボクは休んでるからな……」


「はい」


走り去るシュンヤの背中を見つめ、トラシーウィザードはふと疑問を口にした。


「あれ……? ボクはトリックスターを殺したらゲーム終了、とは言ってないよな……?」


次のタバコを取り出しながら、考える。


「みんなが知ってるルールにはそんな事書いてないはず……、じゃあシュンヤは……?」


トラシーウィザードが出す紫煙が、辺りに漂っていた。

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