ティトの家族
見つけてくれてありがとうございます。
更新は不定期になります。出来る時に頑張ります
コンコン
侍女がドアノックすると、ガチャリと重厚なドアが開く音がする。
中から扉を開けた使用人が告げる。
「奥方様と、ティーフロートお嬢様が参られました」
お父様を筆頭に、シュト兄様、ディア、シャルがソファに座り、今か今かと待ち構えている。
「お待たせ致しましたわ。皆、色々と尋ねたいでしょうけれど、ティトは目覚めたばかりです。
先ずはゆっくりお茶をしましょう。質問は1人ひとつまでですよ。
ティトは、これから毎日居るのですから、慌てずゆっくり過ごしましょうね」
にっこりと笑顔のお母様の圧が凄いです。
皆、ひたすら首を縦に振っています。
首、取れそうだけど大丈夫かしら?
「そうそう、能力の話は家族であっても明かさないのが基本です。絶対に無理に聞いてはいけませんよ?」
お母様はそう付け加えた。
知らなかった。基本的には話さないんだ……
お父様とお母様もお互い知らないのかしら?
「まぁ、立ったままじゃなくて、とりあえず座ったらどうだ?」
(いつまでも目覚めたばかりのティトを、立たせておくのは心配だ!)
お父様、ありがとうございます。
「そうでしたわね、ティトも座りなさい」
「はい、お母様」
座る前に家族の顔を1人1人見つめながら
「お父様、お母様、シュト兄様、ディア、シャル、長らく心労を掛けました。この通り元気ですので、もう心配ありません。ありがとうございました」
深々と頭を下げて感謝する。
「ティト、頭を上げてくれ。まずは座って顔をよく見せてくれ?」
お父様に言われた通り、家族で過ごす時の所定の位置のソファに収まる。
侍女が紅茶を淹れてくれたので、折角なので一口頂く。
周りの様子に少し緊張していたのか、紅茶の香りと暖かさにホッとする。
カチャリとカップが置かれる小さな音がした音をたてるなんて、珍しいなと音の主であるお父様に顔を向ける。
「(本当に無事でよかったよ。それ以外は何も謝らなくて良い。皆ティトの目覚めを待っていたんだよ)」
「・・・ありがとうございます」
お父様、心の声と話し声が被っていますわ。本心でお話しなさっているのですね。
すると隣から、少し慌てた様な声で
「あの!お姉様はご自分がどのくらいお眠りになられていたのか、ご存知なのですか?」
(お姉様の身体は本当に大丈夫なのでしょうか?)
「姉様、凄く凄く長く眠っていたんだぞ!」
(すっごい心配したんだ。もう起きないんじゃないかって怖かったよ)
ディアが思わず質問し、シャルも負けじと口を挟む。
「「待ちなさい、ディア!シャル!」」
お父様とお母様の焦った声がかぶる。すると、お兄様が落ち着いた口調で
「お父様、お母様、一旦ティトと3人で話されたらいかがでしょう?私達もティトと話したいですが、弟も妹もまだ落ち着いていないので」
(多分、2人はまだ興奮してるし、小さいから興味本位でティトに質問して困らせそうだ)
お兄様、ナイスパスです。
正直、能力の話は何を話して良くて、何が話してはいけないのか把握してないので、弟妹にどう答えれば良いか分かりませんでした。
お父様とお母様に、一度事前にご相談したかったのです。
「そうだな、では私の執務室で話そうか」
(その方が、ティトとゆっくり話せるな♪)
「ええ、それが良さそうですわね」
(その方が、ティトとゆっくり話せますわ♪)
お父様とお母様、似たもの夫婦だった!
「ディア、シャル、怖い思いをさせてしまってごめんなさいね。心配してくれてありがとう。又後でお話ししましょうね」
ディアとシャルは気恥ずかしいのか、頬を染めてコクコクと頷いて居る。可愛いわ。
「お兄様、お気遣いありがとうございます」
私が目覚めてからずっと冷静に、私が困らない様に立ち回ってくれて居る兄様には感謝だ。
「ああ、また後で」
とニコっと笑顔を見せる。
(うわぁ、ティトは弟と妹だけじゃ無く、僕にまで気遣いも出来るなんて!やっぱりティトは本当にいい子だし可愛いなぁ。目覚めてくれて、何事も無くて、本当に無事で良かったー!!)
お兄様?!そのテンションは有りですか!?
褒めて頂けるのは本当に有難いけど、何か聞いてはいけない声が聞こえて来ましたわ。
この能力、使い方を間違えると、かなり精神的にダメージを受ける様な気がします……
たとえ、好意であったとしても、諸刃の剣ですわね。
人には、その方が努力して形成して居るイメージがある。
それを覗き見るのは、尊厳を破壊して居るような、居た堪れない気持ちになりますわ。
これから先は『スマートなお兄様だった残念な人』になってしまいました……
聞かなきゃ良かった。
そうだわ!誰か記憶を消せないかしら?
お兄様は一気に株を下げました。妹は兄に対して厳しかった…




