また会えるかな?
過去が一つ軽くなり、私は少しすっきりしていたが、チャコ姉が複雑そうな顔をしていた。
「……子供の頃からすごい苦労したね?今、幸せなんだよね?」
(分かっていたのに!私、なんで探さなかったのよ)
チャコ姉の心が聞こえた。
もしかしたら、私の存在は聞いていたのかもしれないね。
チャコ姉が、申し訳なさそうな、辛そうな顔をしている。
「チャコ姉、会えなかったことは気にしないでね?昔の私はそれなりに殺伐としていたから、今ほど呑気ではなかったわ」
あの頃に出会っていたら、私は、きっと彼女に八つ当たりをしただろう。
「だから合わなくて良かったのよ」
今は幸せだから、色々冷静に見れるわ。
「とりあえず、お墓の場所教えて?もしあっちに帰ったら墓参りするから」
チャコ姉は、あちらに帰るつもりなのかな?
「あー、家の親のことだから多分墓はないかな?」
たとえあっても、そこに私はいないわ。
だから帰るなら……
姉妹だと伝えておいて勝手だけど、私のことは忘れてほしい。
「じゃあ、私が遺した店の場所教えるから、戻ったら行ってみて。でも、戻っちゃうの?せっかく会えたのに寂しいわ」
店を教えると言ってはみたけど……実際は教える気など、まったくない。
せっかく会えたのに……
——帰らないでほしいな。
「まだ考えてるから、一旦聞いてもいいかな?」
う、チャコ姉、私が教える気がないことに気付いていそうね。
「分かったわ。あと、私もアルゼと同じく魔王討伐はするつもりないけど大丈夫?」
とりあえず、話をそらしてみようと、討伐の話を振ってみた。
「大丈夫、私かなり強いから」
チャコ姉は、にかっといい笑顔で笑った。
そうか、チャコ姉って強いんだ……
——なんかいいね。
この先も、チャコ姉と連絡が取りたいわ。
手元を見れば、先日購入したばかりのシルバーのバングルがある。
——余分に購入して良かったわね。
私はそれを外すと、チャコ姉に渡した。
「……チャコ姉、これあげるわ」
私は、チャコ姉の手首にバングルを勝手に取り付けた。
「サイズ的に無理……じゃない?」
サイズが変わったことに、チャコ姉は驚いている。
初めて見ると、きっと不思議だよね。
「これは、私のところに声を届けることができる魔導具。私の能力に直接気持ちを投げてくれたら、念話もできるけど……」
絶対自分から連絡しないタイプよね?
「チャコ姉、思いが強くなさそうだから、これ使って?そうしたら私から念話を繋ぐから……携帯電話みたいなものよ?」
チャコ姉は、ぼーっとしながらバングルを見つめている。
急にいろいろなことが起きたから、疲れたのかもしれないわね。
——時間的にも、そろそろ限界ね。
「チャコ姉、そろそろ行かないと私の迎えが来る頃だわ。資料室に行かないと心配されちゃうから」
アズ兄様がそろそろ動きそうだわ。
「さっき伝え忘れたけど、私の能力は国の結界に阻まれるから、国外ではこれを使ってね?」
(これがあればティトと連絡が取れるんだ)
チャコ姉の気持ちがまた聞こえてきた。
無意識なのか、チャコ姉はさっきからずっとバングルを撫でている。
「また、ゆっくり会えるかな?」
チャコ姉は、少し寂しそうに聞いてくる。
あちらに帰ってもひとりだし、戻る気持ちが揺らいでいるのだろう。
「うーん、私がもう少し大人になったら会いに行けるし時間も作れるはずよ? だから、チャコ姉こちらに残ってよ」
もっと、いろんな話をしたいわ。
「アウスリーベン様はどうなのよ?チャコ姉のこと物凄く好きみたいだし。かなりのおすすめだよ?」
条件だけは良さそうだけど……
ちょっと性格的にみると相性は、微妙かもしれないわね。
——でも、チャコ姉、押しに弱そうだわ。
「それは、まだ分からないわね……」
流されやすそうなチャコ姉のことだし、私と同じで、きっとろくな恋愛をしてこなかったんじゃないかな?
「……何があったかは……まあ、察するし、臆病になる気持ちは分かるわ」
私もチャコ姉も、きっと、クズに耐性があり過ぎたんだわ。
「けど、どうせ何したって後悔するなら行動してから後悔した方がいいよ? やらなかったことって後々引きずるから」
そっくりそのまま、昔の私に言ってやりたいことだわ。
まあ、最後は自力で抜け出せたから……
——私の人生は良かったんだけどね。
「ありがとう、少し前向きに考えてみるよ。あと、ティトのこと、ソージュにはどこまでなら話していい?」
特殊部隊の人たちか……どうするかな。
「うーん、能力に関しては表向きには私は観察眼がすごいとしてあるから、追加できるのは念話ができるまでかな?」
『以心伝心』は、今後の関係性によるわ。
「能力はそれ以外は秘密。前世姉妹は……アウスリーベン様には話していいわ。今後味方になってほしいし。彼以外との関係性は?」
チャコ姉との関係によっては、詳しく言わない方がいいかもしれないわね。
「ペリルはよく世話してくれる強い味方。エストラゴンは私を養女にしたいって言ってる。オリガンは?友達?かな?」
へえ……チャコ姉、なかなかやるじゃない。
「アウスヴェーク様とクレフティッヒ様になら聞かれても良いわ。あとの方は、私自身がどんな方か知らないから、まだ言わないで頂戴」
特殊部隊のトップ3人なら高位貴族だし、味方にしておくのは、今後のためになるわ。
「ペリルとエストラゴンの家名、初めて知ったわ」
チャコ姉は、なんて言うかお気楽な人ね……
「ま、あの3人をまとめて名前呼びできるのはチャコ姉くらいだと思うよ?」
——さすが勇者ね
「あー私ももっとチャコ姉と話がしたかったなぁ、私の愚痴も聞いてほしかったよ。時間が足りないよぅ」
1週間くらい一緒に過ごしてみたかったわ。
でも、パーティーメンバーとして動けば目立ってしまうから……
——それは無理だわ。
「でも、ティトの前世が私の妹だと知れて本当に良かった。声を掛けてくれて、教えてくれてありがとう」
チャコ姉は、文句を言う私を優しく見つめて微笑んでくれた。
——本当に、お姉ちゃんなんだよね。
なんだか少しくすぐったく感じた。
「……また、必ず、絶対会おうね?」
絶対、帰らないでほしいな。
——なんとかならないかしら?
「……そうね、会いたいしまたゆっくりお話したいわね」
チャコ姉の言葉に嘘はなさそうだ。
——期待してもいいのかな?
話が終わるタイミングで、入り口ドアがノックされた。
「まだ、時間がかかるか?」
先生、扉に張り付いて、気配を探っていましたね?
ちょっと……いえ、かなり不審者ですわ。
「いま、ちょうど出ます」
チャコ姉が扉を開けたので、私はするりとチャコ姉の前に出た。
「アウスリーベン先生、ありがとうございました!チャコ姉のこと、必ず!絶対!捕まえて離さないでくださいね?」
私は今後、先生に気に入ってもらうために、ここぞとばかりに、チャコ姉との仲をプッシュしておいた。
「姉を幸せにしてあげてください!じゃ、私は、こちらから失礼致します」
ついでに、チャコ姉の妹であることもアプローチしておいた。
「アウスリーベン先生、お姉様、またお会いできる日を心よりお待ちしております。では、ごきげんよう」
私は返事を待たず、貴族令嬢としての挨拶を先生にして、足早に、アズ兄様とヘルグ兄様の待つ会議室に急いで向かった。
(ありがとう!また会おうね)
チャコ姉の心の声が届いてきて、私はちょっぴり泣きたくなった。
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