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私の能力は『以心伝心』全部丸聞こえですわ。【第1章100話完結済】  作者: 黒砂 無糖
初めての学園生活

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また会えるかな? 


 過去が一つ軽くなり、私は少しすっきりしていたが、チャコ姉が複雑そうな顔をしていた。


「……子供の頃からすごい苦労したね?今、幸せなんだよね?」


(分かっていたのに!私、なんで探さなかったのよ)


 チャコ姉の心が聞こえた。


 もしかしたら、私の存在は聞いていたのかもしれないね。


 チャコ姉が、申し訳なさそうな、辛そうな顔をしている。



「チャコ姉、会えなかったことは気にしないでね?昔の私はそれなりに殺伐としていたから、今ほど呑気ではなかったわ」


 あの頃に出会っていたら、私は、きっと彼女に八つ当たりをしただろう。


「だから合わなくて良かったのよ」


 今は幸せだから、色々冷静に見れるわ。


「とりあえず、お墓の場所教えて?もしあっちに帰ったら墓参りするから」


 チャコ姉は、あちらに帰るつもりなのかな?


「あー、家の親のことだから多分墓はないかな?」


 たとえあっても、そこに私はいないわ。


 だから帰るなら……


 姉妹だと伝えておいて勝手だけど、私のことは忘れてほしい。


「じゃあ、私が遺した店の場所教えるから、戻ったら行ってみて。でも、戻っちゃうの?せっかく会えたのに寂しいわ」


 店を教えると言ってはみたけど……実際は教える気など、まったくない。


 せっかく会えたのに……


 ——帰らないでほしいな。


「まだ考えてるから、一旦聞いてもいいかな?」


 う、チャコ姉、私が教える気がないことに気付いていそうね。


「分かったわ。あと、私もアルゼと同じく魔王討伐はするつもりないけど大丈夫?」


 とりあえず、話をそらしてみようと、討伐の話を振ってみた。


「大丈夫、私かなり強いから」


 チャコ姉は、にかっといい笑顔で笑った。


 そうか、チャコ姉って強いんだ……


 ——なんかいいね。


 この先も、チャコ姉と連絡が取りたいわ。


 手元を見れば、先日購入したばかりのシルバーのバングルがある。


 ——余分に購入して良かったわね。


 私はそれを外すと、チャコ姉に渡した。


「……チャコ姉、これあげるわ」


 私は、チャコ姉の手首にバングルを勝手に取り付けた。


「サイズ的に無理……じゃない?」


 サイズが変わったことに、チャコ姉は驚いている。


 初めて見ると、きっと不思議だよね。


「これは、私のところに声を届けることができる魔導具。私の能力に直接気持ちを投げてくれたら、念話もできるけど……」


 絶対自分から連絡しないタイプよね?


「チャコ姉、思いが強くなさそうだから、これ使って?そうしたら私から念話を繋ぐから……携帯電話みたいなものよ?」


 チャコ姉は、ぼーっとしながらバングルを見つめている。


 急にいろいろなことが起きたから、疲れたのかもしれないわね。


 ——時間的にも、そろそろ限界ね。


「チャコ姉、そろそろ行かないと私の迎えが来る頃だわ。資料室に行かないと心配されちゃうから」


 アズ兄様がそろそろ動きそうだわ。


「さっき伝え忘れたけど、私の能力は国の結界に阻まれるから、国外ではこれを使ってね?」


(これがあればティトと連絡が取れるんだ)


 チャコ姉の気持ちがまた聞こえてきた。


 無意識なのか、チャコ姉はさっきからずっとバングルを撫でている。


「また、ゆっくり会えるかな?」


 チャコ姉は、少し寂しそうに聞いてくる。


 あちらに帰ってもひとりだし、戻る気持ちが揺らいでいるのだろう。


「うーん、私がもう少し大人になったら会いに行けるし時間も作れるはずよ? だから、チャコ姉こちらに残ってよ」


 もっと、いろんな話をしたいわ。


「アウスリーベン様はどうなのよ?チャコ姉のこと物凄く好きみたいだし。かなりのおすすめだよ?」


 条件だけは良さそうだけど……


 ちょっと性格的にみると相性は、微妙かもしれないわね。


 ——でも、チャコ姉、押しに弱そうだわ。



「それは、まだ分からないわね……」


 流されやすそうなチャコ姉のことだし、私と同じで、きっとろくな恋愛をしてこなかったんじゃないかな?


「……何があったかは……まあ、察するし、臆病になる気持ちは分かるわ」


 私もチャコ姉も、きっと、クズに耐性があり過ぎたんだわ。


「けど、どうせ何したって後悔するなら行動してから後悔した方がいいよ? やらなかったことって後々引きずるから」


 そっくりそのまま、昔の私に言ってやりたいことだわ。


 まあ、最後は自力で抜け出せたから……


 ——私の人生は良かったんだけどね。


「ありがとう、少し前向きに考えてみるよ。あと、ティトのこと、ソージュにはどこまでなら話していい?」


 特殊部隊の人たちか……どうするかな。


「うーん、能力に関しては表向きには私は観察眼がすごいとしてあるから、追加できるのは念話ができるまでかな?」


『以心伝心』は、今後の関係性によるわ。


「能力はそれ以外は秘密。前世姉妹は……アウスリーベン様には話していいわ。今後味方になってほしいし。彼以外との関係性は?」


 チャコ姉との関係によっては、詳しく言わない方がいいかもしれないわね。


「ペリルはよく世話してくれる強い味方。エストラゴンは私を養女にしたいって言ってる。オリガンは?友達?かな?」


 へえ……チャコ姉、なかなかやるじゃない。


「アウスヴェーク様とクレフティッヒ様になら聞かれても良いわ。あとの方は、私自身がどんな方か知らないから、まだ言わないで頂戴」


 特殊部隊のトップ3人なら高位貴族だし、味方にしておくのは、今後のためになるわ。


「ペリルとエストラゴンの家名、初めて知ったわ」


 チャコ姉は、なんて言うかお気楽な人ね……


「ま、あの3人をまとめて名前呼びできるのはチャコ姉くらいだと思うよ?」


 ——さすが勇者ね


「あー私ももっとチャコ姉と話がしたかったなぁ、私の愚痴も聞いてほしかったよ。時間が足りないよぅ」


 1週間くらい一緒に過ごしてみたかったわ。


 でも、パーティーメンバーとして動けば目立ってしまうから……


 ——それは無理だわ。


「でも、ティトの前世が私の妹だと知れて本当に良かった。声を掛けてくれて、教えてくれてありがとう」


 チャコ姉は、文句を言う私を優しく見つめて微笑んでくれた。


 ——本当に、お姉ちゃんなんだよね。


 なんだか少しくすぐったく感じた。


「……また、必ず、絶対会おうね?」


 絶対、帰らないでほしいな。


 ——なんとかならないかしら?


「……そうね、会いたいしまたゆっくりお話したいわね」


 チャコ姉の言葉に嘘はなさそうだ。


 ——期待してもいいのかな?


 話が終わるタイミングで、入り口ドアがノックされた。


「まだ、時間がかかるか?」


 先生、扉に張り付いて、気配を探っていましたね?


 ちょっと……いえ、かなり不審者ですわ。


「いま、ちょうど出ます」


 チャコ姉が扉を開けたので、私はするりとチャコ姉の前に出た。


「アウスリーベン先生、ありがとうございました!チャコ姉のこと、必ず!絶対!捕まえて離さないでくださいね?」


 私は今後、先生に気に入ってもらうために、ここぞとばかりに、チャコ姉との仲をプッシュしておいた。


「姉を幸せにしてあげてください!じゃ、私は、こちらから失礼致します」


 ついでに、チャコ姉の妹であることもアプローチしておいた。


「アウスリーベン先生、お姉様、またお会いできる日を心よりお待ちしております。では、ごきげんよう」


 私は返事を待たず、貴族令嬢としての挨拶を先生にして、足早に、アズ兄様とヘルグ兄様の待つ会議室に急いで向かった。



(ありがとう!また会おうね)


 チャコ姉の心の声が届いてきて、私はちょっぴり泣きたくなった。


ここまで読んで頂きありがとうございました。

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