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私の能力は『以心伝心』全部丸聞こえですわ。【第1章100話完結済】  作者: 黒砂 無糖
初めての学園生活

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先生に警戒されました


 ——私は先生の素顔を見てしまった。



 先生の眼鏡は、認識阻害の眼鏡だった……



「わぁ、先生って眼鏡外すと更にお顔立ちが美しいのですね?」


 びっくりした。認識阻害眼鏡をしていてもイケメンだったのに……


「それは認識阻害眼鏡でしたのね?学校で外したら、殺傷事件が起こりそうですわ」


 ——アズ兄様、上には上がいましたわ


「その眼鏡は、自分で外す以外は絶対外れないように陣を刻まれていますか?」


 学園の令嬢を思うと……想像しただけで恐ろしいわね。


「……外れない陣は刻んでいない。参考にさせて貰うよ」


(平気みたいだな……陣か、それはいいな。後でつけてもらおう)


 先生の警戒が、フッと解けた。


 納得したならいいけど、顔を見る事に、何の意味があるのだろうか?


「先生ナトゥーアのご出身でしたね?そのお顔立ちだと人に囲まれてしまい、生活するのにさぞかし不便でしょうね」


 アズ兄様だってあんなに大変なのに……


「でも、認識阻害眼鏡をかけるのは、綺麗な顔立ちが隠れて勿体ないですね」


 ——モテるって、なんだか大変なのね。


「……君は随分と物知りのようだな?」


(誰から聞いたんだ?)


 あら、先生少し嫌そうね?


「お友達に、噂話が大好きな令嬢達もおりますので、何かと聞き及んでおりますわ。貴族女性の嗜みですの」


 リリお姉様のお友達だって、先生に言ってもいいのかしら?


 でも、今、先生とゆっくり話している程の時間はないわね。



(やっぱり転生者の彼女は大丈夫そうね。ちょっと詳しく話を聞いてみようかな?)


 転移勇者の思考にハッとする。


 先生に余計なことを言われたらマズイ。


「貴方は、魂の……」


(転生者よね?)


 私は、キッと睨みつけ「先生の前で言うことではない」と目配せした。


 彼女は私の視線に気付き、言葉を途中で止めてくれた。


「ソージュ、ちょっとこの可愛らしい少女と、2人でお話がしたいの。目立たない良い場所はある?」


(きっと今のでソージュは、彼女が何者か気付いたわよね?)


 しまった、遅かったわ。


 どうしよう……先生に転生者だと、気付かれてしまったみたいだわ。


 ——まずいわよね。


 後で、アズ兄様たちに相談しよう。


 ヘルグ兄様の勘では、悪いことにはならないようだし、彼女との話の内容次第だけど……


 ——味方になってもらえないかな。


「あるにはあるが……本当に、大丈夫なんだな?」


(小さくても貴族女性だ。チャコにもしもの事があったら…)


 彼女、チャコさんていう名前なのね?


 ——可愛らしい名前ですわ。


 なんでかしら?……先生は随分と転生勇者に対して、過保護なようね?


「可愛らしい少女とお知り合いになれたから、お喋りしたいだけですよ?」


(ありがたいけど、ソージュはちょっと心配しすぎだわ)


 勇者である彼女も、先生の過保護状態はやりすぎだと感じているのね……


 ——まっとうな人そうで良かったわ。



(彼の気の変わらないうちに急がないと)


「行きましょうか?」


 え、先生ってそんなに煩わしい人なんだ……


 ——知りたくなかったな。



「……ありがとうございます」


 憧れているヘルグ兄様には、秘密にしておいた方がいいかしら? 


 でも、知ったところで……


 ——強さに変わりはないとか言いそうね



 勇者と私は、私たちが使っていた会議室と、真逆に位置する小部屋を使うことになった。


「ここを使うといい。俺はここで待機しておく。何があったら必ず言えよ?」


(相手は子供だし、何とか話に参加できないだろうか?)


 うわ……先生わざわざ人払いした女性の話に参加するつもりなの?


 ——ドン引きなんですけど


「あの! 防音の魔道具を使ってもいいですか?」


 私は慌てて、聞かれたくないと意思表示をするために、防音の魔導具を見せた。


(さすがにだめか。小さくても令嬢なのだな)


「良いだろう。余計な事はするなよ?」


 先生は、とりあえず要求を呑んでくれた。


「はい、私が彼女に何かする事は、神に誓ってありません」


 ほっとして私が答えると、先生は扉を閉め出て行った。


 ……扉の前にいるつもりだろうな。


 ——でも、出て行ってくれてよかった。


 あ、兄様たちにも話をすると伝えなくては。



「とりあえず座ろうか?」


 彼女に促されたので、彼女との繋がりを切り、ヘルグ兄様に念話をした。


(ヘルグ兄様、勇者の女性に出会えました。今から少し話をするので、もしかしたら結構時間がかかるかも)


 取り急ぎヘルグ兄様だけに念話を繋いだ。


(使っている会議室の反対側の小部屋です。入り口にアウスリーベン先生が立っているけど、今は警戒心がかなり強いから近寄らないで)


 余計なことに巻き込みたくないわ。


(わかったけど、何でアウスリーベン先生が?まあいいけど、アズールには伝えないのか?)


(ヘルグ兄様は、状況をさらっと受け入れてくれるでしょう?今は時間がないの。アズ兄様だと……時間がかかるわ)


 こちらも……かなり過保護だ。


 相手は同郷の女性だし、問題ないだろう。


(わかった。アズールには俺が伝える。また後で説明してね。何かあったらいつでも呼んで)


(ヘルグ兄様ありがとう。またあとでね)


 私は念話を止め、チャコさんに向き合った。


「防音の魔道具を使いますね?」


 私は、会話をしながら、魔導ペンのスイッチをカチリと押した。


 ——心の声を聴くべきか迷うわね


 強い感情は聞こえるだろうし、とりあえず、今はいいかな。


「ペン型なんですね?」


 チャコさんは、防音魔導具は見た事があるのか、形の違いに興味を示していた。


「私の立ち位置的に、関係ない者には聞かれたくない話をする事も多いので、こっそり防音にするために、この型にしました」 


 実際は、能力を隠すためなんだけどね。


「お貴族様は色々大変ね。嫌にならない?」


 チャコさんは、明らかに面倒くさそうに眉間に皺を寄せている。


 ——あら、可愛いお顔が台無しだわ。


「そうですね。でも生まれてからずっとだから、慣れてしまえば普通になりますね」  


 前世に比べると、確かに面倒ではあるわね。


「貴方、転生者よね?」


 チャコさんは、分かっていながら、確認のために聞いてきたようだ。


「はい。貴方は転移勇者ですね?」


 なので私も、ハッキリと聞きたいことを尋ねてみた。


「そうね、で?話は何?」


 彼女は、真剣な顔になっているけど……


「それだけですよ?」


 ヘルグ兄様、彼女には出会ったけれど ……


 ——この後、どうすれば良いのかしら?

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