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男3人仲良しこよし

「おはようございます」


 ヘルグラウは、部屋に入ってくるなり、僕の護衛としての位置に着く。


 彼はまだ騎士見習いではあるが、慣れるために学園に入った時から、通常の騎士と同じような動きをする。


 ヘルグラウはとても優秀で、学園での騎士としての成績は1番だ。


 成人の騎士を相手にしたとしても、劣る事無く存分に働ける。

 

 穏やかな見た目とは裏腹に、かなり強い。


 確か、昨日は例の幼なじみと逢瀬を楽しんだはずだが…


 ——ちょっとからかってみようか?


「ヘルグラウ、昨日は感動の再会ができたのか?勢い余って求婚して婚約してきたか?」

 僕は言っていて、顔がニヤついてしまう。


「ユング王子、気が散るので仕事をするか、休憩をするか、どちらかにしてくれませんか?」

 僕の言葉に反応したのはアズールだ。

 

 ——アズールも気になっているくせに


「ユング王子、アズールの言う通りですよ。私は今来たばかりです。護衛の仕事をするつもりで来ましたが、必要がないようでしたら、他の勤務に当たりますが?」

 ヘルグラウは、真顔でつれないことを言う。


「…今やってる業務に、区切りがついたら休憩にする。アズールとヘルグラウも付き合え」

 

 ちぇっと舌打ちがしたくなったけれど、

 王子として、品がないのでやめておく。


 自分達はまだ、青年というには若すぎる年齢ではあるが、勉強の他に、王子教育としていくつかの仕事を任されている。


 今日はその執務の時間だ。

 

 アズールと一緒に過去の資料を調べながら、問題を見つけ、順次対応していく。


 数時間ほど真面目に執務をこなし、ちょうどお茶の時間になった。


 ——この時間を待ち浴びたぞ!


「ヘルグラウ、さぁ話せ!幼なじみの姫とはどうだったんだ?楽しかったか?可愛い子だったよな?どんな子だった?」

 人の恋の気配は、めちゃくちゃ楽しい。


「ユング王子、期待してるような話はありませんよ?強いて言うなら、幼少期に親同士は俺と彼女との婚約を進めるつもりだったようです。

 ですが、まぁ色々と知っての通り、縁が繋がらなかったので、会うことも叶わず、その話は自然に流れてました」


 ヘルグラウ は何事もないのが、当然のような顔をしているが…実際はどうなんだ?


「そうなのか…幼少期に会うことが叶っていれば、今頃、彼女はお前の婚約者だったなら、

会う事が出来た今は、どうなったんだ?」


 アズール、いいぞ!


 僕は、そういう話を聞きたかったんだ!


「今回、シュピネル様と話した時も、婚約の打診があったけど、俺も彼女もその意思はなかったから、ティトと一緒に丁重に断ったよ」


 シュピネル家との縁談は、かなり良縁だし、

 本人を前にして断るなど、あり得ないだろ!


「ヘルグラウ 、本人の前で断ったのか?!」


 アズールは、驚愕の表情をした。


 だよな?普通なら目の前で断らないよな?


「シュピネル嬢とは仲が良かったんだろう?

かわいい子だったじゃないか。家柄も申し分ないし、何が不満なんだ?」


 婚約するのに、何の問題もないじゃないか。


「不満はないよ?けど、俺も彼女も特別急いで婚約を結ぶ必要はないし、お互い異性として認識してないんだよね。

 年頃になって相手がいなければ一緒になるだろうけど。俺の勘だと彼女は別の人を選ぶよ」


 ヘルグラウの勘はよく当たるからな。話を聞く限り良さそうに見えたのに、


 うまくいかないものだな…。


「そうだ!アズール、彼女に贈り物、ちゃんと渡したよ。謝罪される身に覚えがなくて、最初物凄い警戒していたぞ?」


 アズールは、ヘルグラウに彼女への贈り物を託したのか?


「何を贈ったんだ?花か?菓子か?」

 女性が苦手なアズールが、何を選んだんだ?


「別に、わざわざユングに、令嬢への贈り物を言いたくはないんだが?」

 アズール、怖いから睨まないでくれ。


「ヘルグラウ!お前は贈り物を見たのか?令嬢の感想は聞いたのか?」

 お前だけ知っているのは、狡いぞ。


「ふふっ、いやね?なかなか愉快なことになりましたよ?」

 ヘルグラウはアズールをチラッと見て笑う。


「何か不都合があったのか?マズイな、謝罪のつもりが、迷惑をかけてしまったのか?」

 アズールが慌ててる。なんだか面白いぞ。


 普段冷静な奴が慌てるのは気分が良いな。


「何があった?手を貸したほうが良いか」

 面白いことなら、僕は参加したいぞ。


「王子はただ面白がってるだけでしょう?貴方が関わると、面倒になるから手出し無用です。

アズール、不都合は無いから、一旦落ち着け」


 ヘルグラウの物言いのせいで、僕はアズールから睨まれた。


「ちょっと驚いただけです。彼女が、僕に謝罪の贈り物としてくれた物と、アズールが彼女に選んだ贈り物が偶然一緒だったんです。

 ツァオバライ商会のオリジナルの品だから、店も同じですね。

 お陰で、俺は彼女と色柄違いのお揃いを持つ事になりましたよ」


 ほら、とヘルグラウが机にハンカチを乗せた


「ハンカチか?まぁ普通だな?令嬢に送るにはつまらない贈り物だな」

 

 ——アズールよ、僕はガッカリしたぞ


「これは空間魔法のポーチです。チーフとしても利用できますよ。彼女には、美しいレースの施された物を送りました」


 アズールはちょっとムッとしながら、貶されたのが嫌なのか、結局贈り物を教えてくれた。


「アズール、多分だけど、ギリギリやり過ぎだったぞ?ほんの一瞬会っただけの相手から、謝罪と共に送られてきたんだ。

 俺が間に居たから何とかなったが、彼女、貰うべきか、かなり困惑していたよ。

 今度、一緒に会いに行くからよろしくな?」


 ヘルグラウは、アズールにニカッと笑うと、卓上のポーチを懐にしまった。


「なんで俺が会うことになってるんだ?謝罪は済んだだろ。意味がわからんのだが?」

 アズールが不満そうに、ヘルグラウに絡む。


「良いのではないか?謝罪なんだから、贈り物送って終わりより、一度きちんと顔を見て謝罪をした方が誠実ではないか?」

 もっとアズールが困るのを僕は見ていたい


 ヘルグラウよろしく頼む。


「アズール、これも何かの縁だよ?多分だけど、アズールとティトは相性が良いはずだよ。

 感性が近いって言うのかな?僕の勘だ。

 絶対に会ったほうがいい」


 アズールは、ヘルグラウの「勘」という言葉を聞き、ぐっと黙り込んだ。


「ヘルグラウがそうやって言うなら、一度会ってみるよ。どのような子なんだ?」


 そうか、実際会ったのは一瞬なんだよな?

 

 その一瞬のために、アズールがこんなにも心を揺らしている事自体、いつもと違うよな。


「その時は、僕もついて行っちゃだめかな?

 2人だけ会いに行くのは、ずるくないか?」


 報告だけではつまらないんだよなぁ。


「ユングはダメ。あなたが出てくると、変な憶測が飛び交い、シュピネル嬢に迷惑がかかる」


 アズール、さっきから僕に冷たいよ?


「俺も王子はやめておいたほうがいいと思う。ティトの心の負担が増えちゃうので」

 えー、ひどいな。僕も会いたいなぁ。


「そんなに、二人揃って、じゃけんにしなくてもいいじゃないか。

 それより、さっきから呼んでいる、ティトというのは彼女の名前なのか?

 愛称で呼んでいるなら、お前はなんて呼ばれてるんだ?」

 

 ——それ本当に、ただの友達か?


「ん?ティーフロートだからティト。小さな時にそう呼べと言われた。今もそのほうがいいらしい。俺のことはヘルグ兄様と呼んでる」

 ヘルグ兄様だと?なんだそれ羨ましいな!


「僕のことも、お願いしたら、ユング兄様と呼んでくれないかな?」

 僕も妹欲しかったなぁ…。


「それは無理だと思います」

 アズール、無感情のツッコミが早すぎるよ。


「それは無理。望んじゃ可哀想だと思います」

 ヘルグラウまで…そんなにダメか?


「いっそ、3人とも兄様と呼んでもらったら、それが当たり前にならないか?それか、こっそりなら良くないか?」


 バレなければ問題ないのでは?


「おやめください」

 アズール、さっきから打ち切りが速いよ?


「王子は相手の負担を考えてくださいね」

 ヘルグラウ、僕の存在はそんなに負担か?


 2人して残念な者を見るような目で、こちらを見るのはやめてくれ!


「さぁ、そろそろ休憩は終わりです。お仕事に戻りましょう」

 アズールが、話を切り上げ、休憩は終わりと席を立ち、執務机に戻っていく。


 ——王子だし、仕方がないか


 僕もアズールも、ヘルグラウの能力はよく知っている。彼の勘は絶対外れない。

 だから彼が「勘だ」という時は、必ずそれに従うようにしている。

 

 きっとアズールとその彼女は、ヘルグラウの勘によれば縁を繋いだ方が良いのだろう。



 モテるくせに堅物のアズールが、彼女と、

どのような関係性になるのか…楽しみだ!




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