↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私の能力は『以心伝心』全部丸聞こえですわ。【第1章100話完結済】  作者: 黒砂 無糖
第1章 始まりのお話

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
25/150

婚約の打診には早すぎます。

「お嬢様、そろそろロビーでお客様をお迎えする時間です。準備はよろしいでしょうか?」


 ソフィアが、もう来客が来る時間が近いと伝えてきた。


 ——もうそんな時間なのね


 今日は、ヘルグラウ様を屋敷に招いて、謝罪とお礼を目的としたお茶会だ。


 私は部屋で、ヘルグラウ様にお渡しするための贈り物の確認をしていたところだった。


「準備はもうできてるわ。贈り物を居間へ運んでくださるかしら?」


 ソフィアに持参する物の指示を出す。


「かしこまりました。お嬢様は今からロビーへ向かわれますか?」


 軽く、私の髪や衣装を整えながら、ソフィアは尋ねる。


「そうね、もう到着の時間よね。お父様てお母様はもう向かわれているわよね」


 先日は、本当にお世話になってしまった。


「お会いできるのは2年ぶりだし嬉しいわ。贈り物、気に入ってくれると良いけれど……」

 

 選ぶのは楽しかったけど、かなり真剣に悩んだから疲れてしまったわ。


「お嬢様からいただけるのなら、なんだって嬉しいと思います」


 ソフィア、それはあなたの感想よね?


「殿方に贈り物なんて初めてだから、ちょっと不安だわ」


 令嬢からの異性への贈り物には、何かと面倒くさいルールがあったから、大変だった。


 ——負担にならない程度って、難しいのよ。


「旦那様にもご相談なさったのですから、大丈夫ですよ」


 困った時は、やっぱりお父様よね?


 ソフィアは専属の侍女になり、いつも私がやりたい事を、先回りして準備してくれるので大変助かっている。


「お嬢様、お見えになったのでは?」


 ソフィアに言われて窓の外を見ると、正面入り口に馬車が止まったのが見えた。


「急がなくては!お出迎えに遅れてしまうわ」


 私は、走らない程度の急ぎ足で、玄関ロビーに向かう。


 ロビーにたどり着き、少し上がった息を収めるために、軽く深呼吸をした。


 ——セーフ、間に合ったわ。


 お父様とお母様は既にロビーで待っていた。


「ティト、遅いですよ。もう少し早く行動できるようになりなさい」


 お母様から小言を頂く。


「……はい」


 と小さな声で返事をし、両親の横に控える。


 そうこうしているうちに、玄関の扉が従者の手によって、ゆっくりと開かれた。


 ——うわぁ、大きくなってるわ!


 そこには背が高く伸びた、体つきはしっかりとしているが、あどけなさが少し残る、優しい雰囲気の懐かしい顔があった。


「ご無沙汰しております。中々お会いすることが叶いませんでしたが、こうして縁がつながりました。本日はお招きありがとうございます」


 ヘルグ兄様は、お父様とお母様と爽やかな笑顔で握手をして言葉を交わしている。


 私と視線が合うと……


「お久しぶりです。シュピネル嬢、ヘルグラウです。覚えておいでですか?」


 懐かしいような、面白いものを見るような、そんな表情をしている。


「ご無沙汰しております。ティトで良いですよ。ちゃんと覚えています、ヘルグラウ様」


 こちらも、ニヤリと目元に笑みを浮かべる。


 すると、私の意図を受け取り、イタズラが成功した様な笑顔を見せ


「ティトは俺のことを、もう兄とは呼んでくれないのかな?」


 なんて、わざと悲しそうにヘルグ兄様は眉を下げて見せた。


 そんなやりとりをして、2人でふふと笑い合っていたら——


「二人とも、そんなところで立ち話ではなく、応接間に移動したらどうかしら?」


 母は呆れながらも、笑顔で提案をしてきた。


「まずは、先日娘が大変お世話になり、ご迷惑をかけたことを謝罪させていただく。助けてくれて、ありがとうございました」


 父が話を切り出してくれた。


「私を、抱えて運んで下さったと聞きました。失態に巻き込んで、ご迷惑をお掛けしてしまい本当に申し訳ございませんでした」


 今考えても、ヘルグ兄様で良かった。


「令嬢にあるまじき失態が、他へ広がらずに済んだのは、王子とヘルグラウ様のお陰です。本当にありがとうございました」


 私は、心から感謝して深々と頭を下げた。


「謝罪の言葉はもらいますが、もう気にしなくていいです。ティトが無事で良かった。結果として、再会できたからよしとしませんか?」


 ヘルグ兄様は、そう言ってフワッと笑う。


「丁寧に対応して頂くのはありがたいですが、みなさんどうか俺の為だと思って、肩の力を抜いてくれませんか?」


 恐縮してしまいます。と、ヘルグ兄様が今度は明らかに困り顔になりつい笑ってしまった。


 皆で席につき、お茶を頂きながら懐かしい話に花を咲かせていたら、


「そういえば、あの頃は済まなかったなぁ。2人の相性が良かったから、仲良くさせてやりたかったんだが……」


 お父様はしみじみ、ヘルグ兄様に語り出した。


「此方の都合で茶会が中止になったり、お誘いを頂いても叶わなくて、2人ともあれっきり、顔を合わすことができなかったわね」


 お母様は、理由がアレだから申し訳なさそう。


「こちらの落ち度とはいえ、本当に申し訳なく思っているよ」


 お父様は残念そうにしている。


「確かに、何度こちらから打診してもタイミングが合わず、てっきり俺が嫌われてしまったのかと、悩んだ時期もありましたね」


「でも学園が始まり、忙しい毎日を過ごしているうちに、僕も忘れていたので……だから謝らないでください」


 ヘルグ兄様は「僕も同罪ですよ」と笑った。


 ——相変わらず、気遣いがある人ね。


「2人は商会で会ってから、直ぐに意気投合していたろう?あの頃は時が来たら、婚約者にと考えていたんだよ」


 え……そんなこと何も聞いてないわ


「まさか身内から、邪魔されると思わなかっんだ。ちなみにヘルグラウ君、今、決まった相手はいるのか?家のティトなんてどうだろう?」


 お父様は、ちょっと食い気味に質問をした。


「お父様! 婚約者なんて、そんな話聞いてないし知らないわ。本人を目の前に聞くのもどうかと思います。良くも悪くも、気まずいですわ!」


 話が進むのも、断られるのも気まずい。


 ——正直困るわ


 そんな話は聞いてないです! お父様!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。