婚約の打診には早すぎます。
見つけてくれてありがとうございます。
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「お嬢様、そろそろロビーでお迎えの準備をしたほうがよろしいのではないでしょうか?」
ソフィアが、そろそろ来客が来ることを伝えてきた。
今日は、ヘルグラウ様を屋敷に招いて、謝罪とお礼を目的としたお茶会だ。
私は、自分の部屋で、ヘルグラウ様にお渡しするための贈り物の確認をしていた。
「準備は既にできてるわ。贈り物を居間へ運んでくれるかしら?」
ソフィアに持参する物の指示を出す。
「かしこまりました。お嬢様は今からロビーへ向かわれますか?」
軽く、私の髪や衣装を整えながら、ソフィアは尋ねる。
「そうね、そろそろ到着の時間ね。お父様もお母様もいらっしゃるのよね?
先日は、本当にお世話になってしまったし、お会いできるのは2年ぶりだし嬉しいわ。
贈り物、気に入ってくれると良いけれど」
楽しかったけど、かなり真剣に悩んだわ。
「お嬢様からいただけるのなら、なんだって嬉しいと思います」
ソフィア、それはあなたの感想よね?
「殿方に贈り物なんて初めてだから、ちょっと不安だわ」
異性への贈り物には、何かとルールがある。
負担にならない程度って、難しかったわ。
「旦那様にもご相談なさったのですから大丈夫ですよ」
困った時は、やっぱりお父様よね?
ソフィアは、今ではしっかり専属の侍女となっている。
いつも私がやりたい事を、先回りして準備してくれるので大変助かっている。
窓の外を見ると、正面入り口に馬車が止まったのが見えた。
「急がなくては!お客様がお見えになったわ」
私は、走らない程度の急ぎ足で、玄関ロビーに向かう。
ロビーにたどり着き、少し上がった息を収めるために、軽く深呼吸をした。
お父様とお母様は既にロビーで待っていた。
「ティト、遅いですよ。もう少し早く行動できるようになりなさい」
お母様から小言を頂く。
「はい」
と小さな声で返事をし、両親の横に控える。
そうこうしているうちに、玄関の扉が従者の手によって、ゆっくりと開かれた。
そこには背が高く伸びた、体つきはしっかりとしているが、あどけなさが少し残る、優しい雰囲気の懐かしい顔があった。
「ご無沙汰しております。なかなかお会いすることが叶いませんでしたが、こうして縁がつながり、やっとまた会うことが叶いました。
本日はお招きありがとうございます」
お父様とお母様と握手をして言葉を交わす。
私と視線が合うと…
「お久しぶりです。シュピネル嬢、ヘルグラウです。覚えておいでですか?」
懐かしいような、面白いものを見るような、そんな表情をしている。
「ご無沙汰しております。ティトで良いですよ。ちゃんと覚えています、ヘルグラウ様」
こちらも、ニヤリと目元に笑みを浮かべる。
「ティトはもう兄とは呼んでくれないのか?」
お互いにしてやったりと、イタズラが成功した様な笑顔を見せる。
そんなやりとりをして、2人でふふと笑い合っていたら——
「あなたたち、そんなところで立ち話ではなく、応接間に移動したらどうかしら?」
母は呆れながら提案した。
「まずは、先日娘が大変お世話になったこと、ご迷惑をかけたことを謝罪させていただく。
その時に娘を内密に助けてくれた事、ありがとうございました」
父が話を切り出してくれた。
「私の失態に巻き込んでしまい、大変ご迷惑をかけて申し訳ございませんでした。
抱え運んで頂いたと聞きました。令嬢にあるまじき失態が、他へ広がらずに済んだのは、王子とヘルグラウ様のお陰です。
本当にありがとうございました」
私は、一旦深々と頭を下げた。
「謝罪の言葉はもらっておくよ。でも、もう気にしなくていい。大事にならなくてよかった。
結果として、こうやってまた再会できたんだからよしとしよう?
シュピネル様、ティトも、丁寧に対応して頂くのはありがたいのですが、どうか俺の為だと思って肩の力を抜いてくれないですか?」
恐縮してしまいます。と、困り顔になっているので、つい笑ってしまった。
それから皆で席につき、お茶をいただき、
懐かしい話に花を咲かせた。
「そういえば、あの頃は済まなかったなぁ。
2人の相性が良かったから、仲良くさせてやりたかったんだが…
此方の都合で茶会が中止になったり、フェルトシュパート家から、お誘いを頂くも叶わず、
2人ともあれっきり、顔を合わすことが全くできなかった。こちらの落ち度とはいえ、申し訳なく思っているよ」
お父様は残念そうに語る。
「あぁ確かに、何度打診してもタイミング悪く
俺が嫌われてしまったのかと、悩んだ時期もありました。
でも学園が始まり、忙しい毎日を過ごしているうちに、いつの間にか僕も忘れてました。
だから謝らないでください」
ヘルグ兄様は
「僕も同罪ですよ」
と笑っている。
——相変わらず、気遣いがある人だわ。
「2人はツァオバライ商会で会ってから、直ぐに意気投合していたろう?
時が来たら、婚約者にと考えていたんだよ?
まさか身内から、邪魔されるとは思わなかったが…
ちなみにヘルグラウ君は今、決まった相手は居るのかな?
居ないなら家のティトなんてどうだろう?」
お父様が、食い気味に質問をする。
「お父様! 婚約者なんて、そんな話聞いてないし知らないわ。
本人を目の前に聞くのもどうかと思います。
良くも悪くも、気まずいですわ!」
話が進むのも、断られるのも気まずいし、
——正直困るわ
聞いてないです! お父様!
いきなりな婚約話?
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