合縁奇縁
ep3【3人の少年】の続きの時間軸になります
「アズール?どうなんだ?シュピネル嬢と何があったんだ?」
ユング王子がアズールを問い詰めている。
いつも冷静なアズールが、困っているのを見て王子は多分、楽しんでるな。
——ほっとくか。
とはいえ、さっきのは本当にシュピネル様の娘だったのか、あの小さな娘がティト?
余り成長しなかった様だな。
随分とめかし込んでいたし、目を閉じて寝ていたから分からなかったな。
かつて自分の事を「ヘルグ兄様」と呼び懐いてくれた可愛い妹分とは、直ぐに打ち解けて仲良くなれた。
——あの時以来会えなかったんだよな。
出会った商会からシュピネル家に移動して、迎えが来るまで、客間で魔道具の使い方など引き続き仲良く喋り、今度また遊ぼうと約束などもした。
そろそろ迎えが来る頃合いに、
ティトが「ヘルグ兄様」と呼んだその時、
彼女の兄が、背中にケルベロスでも背負っているかの形相で
「『兄様』?ティト『彼』は『誰』かな?」
と、尋ねて来たので
「ヘルグラウ・フェルトシュパートです。
ティトとは、先程商会で会って仲良くして貰い友達になりました。
お兄様ですよね?よろしくお願いします」
挨拶をし、握手の手を出したら、氷よりも冷たい刺さる様な眼差しで
「既にティトと呼んでいるのかい?
まあいいや、ティトは"僕の"妹だから、今日はお客様だから許すけど…よくよく考えて行動してね?」
握手は完全に無視され、物凄い剣幕で捲し立ててきた。
ティトも兄の登場に、悪い事はしてないのに青い顔をしてブルブル震えていた。
——すごく機嫌が悪いな。八つ当たりかな?
彼女の兄は、丁度外に迎えが来たとの知らせを知るや否や
「お迎えが来た様ですね?今日はティトと仲良くしてくれてありがとう。さあ、御者を待たせてはいけないよ!」
ティトに挨拶もままならず、僕は慌ただしく追い出されてしまった。
その後も、何度か父が交友にと打診したが、毎回タイミング悪いのか、はたまた嫌われてしまったのか。
不在や体調不良が重なり、結局1度も会えなかった子だ。
相性も良く、妹分が出来て嬉しかったんだ。折角仲良くなれたし、残念だったが…
学園が忙しくなり、すっかり忘れていた。
ふと、ユング王子を見ると、物凄い笑顔で
「さあ、聞いてあげるから話してごらん?」
顔を手で覆い、項垂れてソファーに座るアズールの真横にわざわざ座り、肩を抱きながら迫っていた。
「ユング王子、それ近すぎて、逆に喋りにくいと思いますよ。とりあえず離れてあげて」
とりあえず助け船ぐらいは出してやるかな。
「後、昔2人に妹分が居るって言ったの覚えてる?それ、シュピネル嬢の事だったわ。
今まで忘れていて、綺麗さっぱり、すっかり頭から抜けていたけど」
起きている時に合わなくて良かったな。
「何!何度か会おうとして、結局1度も会えなかった、可愛いけど兄が凄く怖いあの娘か!
ヘルグ、今まで誰なのか聞いても、絶対教えてくれなかったよな?」
そういえば、言わなかったな?
「ユング王子の専属護衛として学園にいたろ?
どこの家か分かると、彼女の兄が気まずいかなと思ったのでね。
それに、妹分とか言ってるけど、結局会えなかった事が何だかカッコ悪くて、無かった事にしたかったのかも?
その頃は、まだモヤモヤしていたんです。
今は、忘れていた事が気まずいですが」
彼女はもう忘れているかも知れないな。
「久々の再会だったのに、結局本当の意味では会えなかったのだな。
皮肉にもアズールは、偶然とは言え彼女に出会ったようだな?」
にやにやしながら、王子はアズールを揶揄っている。余り虐めてやるな。
アズールがだんだん小さくなっているぞ?
「アズール?何をそんなに気にしているんだ?何かしたなら謝れば良いのでは?」
あの兄は厄介、いや、面倒そうだけどな。
「彼女が、ヘルグラウの…俺は…特別何かしたわけでは無いんだ…」
ティト、アズールの凹ませるとかすごいな?
「そもそも俺のでは無いな。なら何でそんなに気にしてるんだ?何もしてないなら気にする事無いだろ?」
一体何があったんだよ?
「まあ、そうなんだけど…やっぱり俺のせいかも知れないんだよ」
アズールが、ポツリと呟いて話し始めた。
▪️合縁奇縁
人の交わりには、互いに気がよく合う合わないがあって、それは不思議な縁によるのだということ。
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