表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

49/72

✽ 公爵令嬢、領地(天国)で女子会をる ✽ 第49章 無意識な差別意識 (ユリアーナ視点)


「まだ信じられないわ。お父様が私を愛しているなんて。だって私はお祖母様に瓜二つの容姿をしているのよ?」

 

「だから可愛くて仕方がないのでしょう。旦那様はね、本当はマザコンなのよ。

 自分は素直に愛情表現できないのに、私達嫁が母親と仲良くしているのにヤキモチを焼いて会わせないようにしていたのだと思うわ。

 ヘンリー様やケンドル様は本当に嫁いびりを心配していたみたいだけれど」

 

「馬鹿よね。お義母様がそんなことするわけないのに。

 姑は嫁をいびるもの、女は嫉妬深い、女は弱いもの、女は男より能力が劣る……そんな思い込み男にはうんざりだわ」

 

 母に続いてレイラ義叔母様が憤慨してそう言った。

 たしかに叔父がレノマン先生に対してした失礼なやらかし話には正直引いた。

 叔父のヘンリーは妻との会話を大切にし、何事も相談して決めていて、頭ごなしに命じることはないと聞いていた。

 だから、女性を軽視するような人ではないと私は思っていたのだ。何せ、この国の守護神と呼ばれている祖母の息子なのだから。

 

 しかし、叔父がこれまで妻の要望に沿ってきたのは、その要求が、この国の女性の常識範囲内の事柄に収まっていたからに過ぎないのかもしれないわ。

 多くの国ではすでに認められていても、現在の我が国ではまだ認められないような女性の権利がたくさん存在している。

 もし妻がそのような要求していたとしたら、叔父はそれを認めただろうか? ふとそんな疑問が浮かんだ。

 レノマン先生に対する接し方を鑑みると、認めなかった可能性の方が高いのではないかしら。たとえ愛する妻が理路整然と説得したとしても。

 レイラ義叔母様も私と同じことを感じて、ヘンリー叔父様に不信感を抱いたのかもしれない、と私は思った。

 

 義叔母様がここに到着する何日も前から、叔父様の手紙は何通も届いていた。

 叔父様はかなり焦っているのだろう。でも、騎士団長の地位いる立場では、そう簡単に叔母様を追って来られないものね。宰相の父お父様もそうだけれど。

 お祖母様によると、従兄弟達からの手紙には、父親は自分達が反省させておくので、母をよろしくと書いてあったらしい。

 従兄弟達は祖父に厳しく教育されているから、兄達同様、女性に対する偏見なんて一切ないのだ。

 当然お祖父様は、息子達にも同じ教育を施していたとは思うけれど、現役時代はやっぱり超多忙だっただろうから、完璧に仕込むのは色々と難しかったのだろうなあ。

 ただでさえ個性強過ぎで、面倒臭い人達だし。

 う〜ん。


 それにしても、これからどうしたらいいのかしら?

 レイラ叔母様に関しては、暫く叔父様に反省させるために家を出てきただけだから、まあいいとしましょう。

 でも、お母様は私が婚約してからずっとお父様と上手くいっていなかったから、修復するのは結構難しいわよね。

 お母様は今までずっと大変な思いをしてきたのだから、もう自由になってもいいのでは、と思わないわけでもない。

 けれど別れる大元の原因が私だということになると、そんな簡単にお母様を応援できないわ。

 だってあの婚約は、お父様が私のためを思ってしてくれたことだったからだ。それが原因で、お母様との仲が拗れてしまい、離縁っていうことになったら切ないというか、申し訳なくて耐えられそうにないのだ。

 

「そんな困った顔をしないで。私のことなら心配しなくても大丈夫よ。離縁したらここで使用人として雇ってもらうから。

 きっと楽しいと思うわ。それは貴女にもわかるわよね?だって私と同じことを考えていたのでしょう?

 でも、話の流れでわかると思うけれど、貴女が家を出る必要は全くないの。

 貴女と王太子殿下との婚約解消は折り込み済の話だったわけだから、我が家の迷惑になることは一切ないのだし。

 それに、貴女とエリックはとうの昔に婚約をしていたわけだし。


 まあ、王太子殿下と偽装婚約したことが知られたら、さすがに詐欺罪で公爵家も取り潰しを命じられる可能性もあるわね。

 でもまあ、そうなったらこの国から独立すればいいだけだから、それも問題にもならないわ。

 まあ、それも面倒だから、できればそれを公にはしないつもりだけれど。

 そうそう、肝心なことを言い忘れたけれど、なぜ貴女達が婚約することになったかは、私達は説明できないの。

 なぜなら、エリックから自分の口で説明するから何も言わないでと懇願されてしまったから。

 あの子、自分の思いは自分自身で伝えたいらしいのよ。祖父様を崇拝しているから、きっと同じ様にしたいのでしょう」

 


 それにしても、十歳のときから私がエリックお兄様の婚約者だったなんて! その事実に私は衝撃を受けた。嬉しくて涙が出そうになった。

 しかし、たしかにその当時にそれを聞かされていたら困惑して、お兄様を避けていたかもしれないわ。

 だってその当時だって、もちろんエリックお兄様のことは誰よりも好きだったけれど、それはあくまでも兄としてだったから。

 

 私にまだ自覚がなかったとはいえ、兄に恋心を抱くようになったのは、自宅のパーティーで兄が多くのご令嬢方に囲まれているのを頻繁に目にするようになってからだ。

 エリックお兄様は美しい。下の二人の兄達もかなりの美形だったけれど、スコットお兄様は婿養子だったお祖父様によく似ていて、マックスお兄様はお母様似だった。

 それに比べてエリックお兄様はお父様に瓜二つの正統なモントーク公爵家の色合いをしていた。まさしく正しい後継者だと周囲に知らしめるように。

 だからこそ、多くのご令嬢方が、そんな兄を射止めようと必死なのだろうと思った。

 

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ