✽ 公子は祖母の慧眼の力に改めて感心する ✽ 第46章 公子の縁談2 (エリック視点)
アベール=ヤマトコクーン国王は、若い頃はプレイボーイで婚約者を泣かせてばかりいたと聞く。
しかし祖母フランソワーズに振られて改心した後は、側妃も娶らず妻一筋みたいだ。
そのため国王夫妻には十人もの子宝に恵まれた。妻である王妃が多産の家系だったようだ。
そしてその血筋のせいなのか、その子達も皆四、五人以上の子供に恵まれたため、この先、その孫達の結婚ラッシュが来ることが予想されるのだ。
王族なので、結婚相手が誰でもいいというわけにはいかない。となると、とても国内だけでは見つからないだろう。
そこで、他国との縁を結ばなくてはならない状態になった。すでに三人の孫が他国の王族へ嫁ぎ、一人の王女が嫁いで来ている。
そして五人目が、アベール国王陛下の次男であるロイドネス公爵の三女、スレッタ嬢になる予定だったのだ。
本音では、見目麗しくかつ才媛である彼女のことは国内に嫁がせたかったようなのだが、幼いころから密かに思い合っていた二人の恋を、さすがに裂くことはできなかったらしい。
しかもその相手があの親友である「魔王」の孫であるならば仕方がない、と許してくれたのだと思う。
そしてその優秀な姉が近くにいるなら、サリナ嬢を嫁がせても安心だ、と思ってもらえるに違いないと私は考えたのだ。
それで、ランドール公子の話を持っていったのだ。
そもそもヤマトコクーン国王やそのお子様達は、自分の子供達の結婚に王位継承権を持つような相手を望んでいなかったのではないかと思う。
なぜなら、縁を結んだ相手が後継者争いなど起こせば、援助を求められて争い事に巻き込まれる恐れがある。
そして実際にそんな事例ができてしまったら、そのような面倒な血筋との縁は避けた方がいいと思われてしまうかもしれない。
そんなことになったら、他の孫達の婚姻相手探しがさらに困難難になってしまう。
まるで三段論法のようだが、無きにしもあらずだろう。まあ、私の想像の域を超えてはいないのだが。
それを踏まえて考えてみると、未だに王位継承を持っているランドール公子との縁を結ぶということには、恐らく躊躇いがあったに違いない。
しかし最終的には、モントーク公爵家がサーキュラン王国を支えているのだから大丈夫だ、と思ってくれたのだと思う。
とはいえ、実際、我が家の父はそのランドール公子を国王にと考えていたのだ。もしそのことを知られていたら、この話はなかったことだろう。
今では父もその気がなくなったようなので、安心してこの話を進められると私は思ったのだ。
たとえ父が今後宰相として復活したとしても、私達の計画を邪魔することはないと思った。最終目的は同じなのだから。
そしてそれを達成しなければ、この国は世界から一国だけ取り残されてしまうのだから。
私は、せっかく祖母が繋いだ隣国との絆を断つような、そんな真似だけは絶対にしない。
いや、その絆をもっと強いものにしていくつもりだ。もちろん、もう一つの友好国であるブリテンド国王とも。
あの双子の王女達のおかげで、このまま順調に行けばこの五か国(サーキュラン王国、ヤマトコクーン国王、ブリテンド国王、双子の王女と嫁ぎ先の国)で同盟を結び、帝国に対抗できるかもしれない。
もちろん、帝国に喧嘩を売ろうという訳ではなく、あくまでも今後は帝国の好き勝手にはさせないというアピールのためだ。
そしてその見合いの結果がどうなったのか、その結論を述べると、私の思惑は無事に成功したのだ。
姉のスレッタ嬢と共に我が国にやって来たロイドネス公爵家のサリナ嬢は、ランドール公子と顔を合わせた瞬間に恋に落ちた。
そして公子の彼女への印象も悪くなかったようで、二人は何度か逢って話を交わした後、無事に婚約することが決まったのだった。
しかしその後、公子が彼女を婚約者に決めた理由を聞いて、正直私は驚いた。
何せ、サリナ嬢が女魔王の熱狂的ファンだった点が気に入ったというのだから。
どうやら公子も祖母の隠れファンだったらしい。別に私と親類になるのが嬉しかったわけではなかったようだ。
自惚れていた自分がかなり恥ずかしかった私だった。
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