第九話 サツマイモの収穫
今日のあたしは張り切っていた。
なぜなら、側近のグレイスが畑仕事を手伝ってくれると言いだしたからだ。
畑仕事の楽しさを、グレイスも知ってくれたら嬉しいな。そんなことを思いながら、ウキウキと畑に向かう。すでにグレイスは到着していた。
あたしはグレイスの格好を見て、ぷっと吹き出す。
「あはは〜。グレイス気合い入れすぎ!」
そうなのだ。今日のグレイスはいつものピシッとしたスーツ姿ではなく、白いヨレヨレのTシャツに、カーゴパンツ。それに長靴と麦わら帽子。更には首にタオルまで巻いていた。完璧な農作業ファッションなのだ。
私はいつものグレイスとのギャップに笑いが止まらなかった。
「ふふ。畑仕事ならこの格好が一番良いのです。フウ様は、いつも通り可愛らしいですね」
私の格好はオーバーオールにスニーカー。それにグレイスと同じように麦わら帽子をかぶっている。
こんな格好なのに褒めてくれるグレイスは、やっぱり女の子にモテるだろうなぁとしみじみ思った。
「ありがとう、グレイス! じゃあ今日はサツマイモの収穫をするよ!」
「はい。頑張ります」
畑を見回し、サツマイモの生育状況を確認する。
葉や茎が黄色っぽくなっているのが収穫時期なので、それを探す。すると、ちょうど良い頃合いのサツマイモがあったので、グレイスを呼ぶ。
「こっちに良いのがあるよー」
グレイスがクワを持ち、ニコニコしながら近付いてきた。
まずはクワでつるを刈り取る。それからあたしは土を指差し、ここをそおっと掘ってねと指示を出す。
言われた通り、グレイスがそっと土を掘ってゆく。すると、紫色に染まった美味しそうなサツマイモが少しだけ顔を出した。
「あとは茎を引っ張って、サツマイモを掘り起こそう!」
二人で協力して、うーんうーんとサツマイモの茎を引っ張る。力を入れ過ぎると茎が切れてしまうから、ここは慎重に。
二人で頑張って引っ張っていたら、途中でスルッと力が抜けた。それと同時に、泥をかぶったサツマイモがスルスルと顔を出す。
「わぁ! 立派なサツマイモですねぇ!」
サツマイモを持ち上げて、グレイスは嬉しそうに笑っている。その笑顔を見ていたら、あたしまで嬉しくなってきた。
「うん! 上手に取れたねぇ!」
サツマイモは大きく、どっしりとしていた。
切って天ぷらにしてもいいし、スイートポテトにしても美味しそうだ。
「また料理長に今晩の夕食で出してもらいましょう」
「うん!」
引き続き良い頃合いのサツマイモを探し、どんどん収穫してゆく。あたしとグレイスはひたいに汗を流しながら、夢中でサツマイモを掘り起こしていた。
そんなとき、畑の外から声が聞こえてきた。
「おい!」
あたしとグレイスは一端作業を中止し、声の方へ顔を向けた。
なんとそこには、滅多に外に出てこない魔王が立っていたのだ。
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