第六話 勇者、名案が浮かぶ
それからグレイスを探して外に出る許可をもらうと、あたしは意気揚々と城を出た。
グレイスにもあまり遠くに行っちゃだめですよ。迷子になりますからねって言われた。あたしは子供か!
プンプンしながら城の周りをウロウロしていたあたしだが、妙に歩きやすい地面を見てハッとした。
城の周りの土はフワフワで、作物を作るのに適していることに気が付いたのだ。
そう言えばあたし、勇者になる前は家の畑仕事をお手伝いしていたんだっけ。
お父さんがこの土を見たら、これなら作物がよく育つぞーって大喜びするだろうな……。
そこであたしはひらめいた。
「そうだ! ここに畑を作るのはどうだろう?」
大掛かりな畑ではない。一人でもやって行けるようなこぢんまりとした家庭菜園を作るのだ。
そうすれば暇つぶしになるし、新鮮な野菜も食べられる。一石二鳥ではないか!
思い立ったら居てもいられなくなって、すぐにグレイスに相談した。
グレイスは魔王様に聞いてみますと言ってから、あたしの元に戻ってきた。
「城の外観が損なわれるのであまり賛成は出来ないが、バカガキの暇つぶしになるのなら、いいぞとのことです」
「!!」
やったぁ! 許可が降りたぞー!
あたしは嬉しくなって、その場をぴょんぴょんと飛び跳ねた。
「ありがとう! グレイス!」
あたしの言葉に、グレイスはニコニコと微笑んだ。
「お礼は魔王様に言ってください」
「うん! 分かった!」
キャアキャア喜びながら執務室まで走る。
部屋に入ると魔王はまだ机に向かって書き物をしていた。
あたしは構わず魔王のそばに行き、腕にギューっと抱き付いた。
「魔王! 畑のこと、ありがとう!」
「……。お前本当に女なのか? 抱き付かれても全く緊張せんぞ」
失礼だなぁ、本当。
まぁ、今は魔王の暴言にも目を瞑ってあげよう。
それより畑だ!
これから何を育てよう?
ダイコン、ジャガイモなんかもいいな!
あたしはこれから始まる畑仕事に胸を躍らせ、その場をぴょんぴょんと飛び跳ねたのだった。
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