第五話 お外に出よう!
それからあたしの魔王城ライフが始まった。
最初はワクワクしながら城の中を探検したり、お部屋のベッドでぐうぐうお昼寝をしたりして楽しかったけど、一ヶ月もすると飽きてしまった。
退屈しのぎに本棚にある本を読んでみたのだが、デルモン大陸の文字で書かれていたので読めなかった。
「暇だなぁ……」
あたしはベッドに寝転がり、暇を持て余していた。
なにかやることはないかと考えて、ひらめいた。
「そうだ! どうせなら普段魔王がなにをしているのか見に行こう!」
デルモン大陸の女性魔族を追い出そうとしているのだから、愚王であることは間違いない。
どうせ豪奢な椅子に座り、ワインでも飲みながら豪遊しているのだろう。
そんな魔王に、あんたのせいでみんな大変な思いをしているんだぞ! しっかりしろ! と喝を入れてやろうと思ったのだ。
思い立ったら即行動するのがあたしの長所だ。
あたしはベッドから起き上がり、急いで部屋を出た。
すると、廊下で使用人らしき人が掃除をしていた。
あたしはその人を呼び止めて、魔王が今どこにいるのか聞いてみた。
ちなみに使用人も男性だ。
魔王の女性嫌いは徹底していて、城に女性はあたししかいないらしい。本当、女性嫌いって大変だなぁ。
「魔王様は執務室におりますよ」
使用人がニコニコ答えてくれたので、場所を聞いてそこに向かう。
執務室で遊んでるのかな? 全く魔王はしょうがないな。などと思いながら執務室に着くと、バターン! と勢いよく扉を開ける。
「魔王! 遊んでばっかいないで少しは仕事し……」
仕事しろ! と言おうと思ったのだが、執務室の光景を見て目を丸くする。
なんと……! 魔王は机に向かい、忙しそうに働いていたのだ。魔王はチラリとあたしを見ると、すぐに視線を机に戻した。
「なんだお前。私はちゃんとやるべきことはやっている。遊んでばかりなのはお前の方だろう?」
「ぐぬぬ……」
悔しいが、その通りだ。
だが、往生際の悪いあたしは本当に魔王が仕事をしているのか確かめるため、ズカズカと部屋に入り、机の上に載っている山のような書類の一枚を手に取った。
書類はデルモン大陸の文字で書かれているので読めなかった。でも、ズラズラと細かい文字がびっしりと書かれていて難しそうだった。
「勝手に書類に触るな! バカガキには見ても理解不能だろうがな」
「ぐぬぬ……!」
あたしは書類を元の位置に戻すと、魔王の腕をぶらぶら引っ張った。
「魔王。あたし暇なんだ。遊ぼう?」
「ふざけるなバカガキ。一人で遊べ。私は見ての通り忙しいのだ」
「むぅ……」
「暇ならガキらしく外を走り回って来い。バカだから体力があり余っているのだろう? 少しは運動しろ」
外か……。それは良い考えだ。
そう言えばここに来てから一度も外に出ていない。
外の山々を探検したら楽しそうだ。
よし! 外で遊ぼう!
「分かった。外で遊んでくる。魔王、お前もたまには良いこと言うな」
「あまり遠くに行くなよ。外には野生のモンスターがいるからな。襲われても助けてやらんぞ」
「大丈夫だもん。あたし、強いから」
「強い〜〜? この前、手合わせしたときは、赤ん坊のように弱かった気がするのだがな」
そう言ってバカにしたようにケラケラ笑ったので、あたしは怒りのパンチを魔王の肩にお見舞いしたあと執務室を出た。
魔王は、今のがパンチか? 非力だなぁと最後までバカにしていた。
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