第一話 悪しき魔王の誕生
「ここが魔王のいる城かぁ」
あたしは天高くそびえ立つ城を見上げ、ひとりつぶやいた。
ここは魔族が住むデルモン大陸。
人間のあたしがなぜこんなところにいるかって? それは半年前にさかのぼる。
この世界は東西に分かれていた。
東は人間の住むラクリナ大陸で、西は魔族の住むデルモン大陸。
二つの種族は干渉せずに千年の間、平和を築いていた。
だけど半年前、デルモン大陸で新しい王が即位してから、状況が変わった。
新しい王が即位してからすぐに、たくさんの魔族がラクリナ大陸に流れ込んできたのだ。
流れ込んできた魔族は女性が大半を占めていた。
魔族に詳しく話を聞くと、新しく即位した王が暴君で、デルモン大陸から女性全てを排除しようとしているらしいのだ。
女性がいなくなったら子孫が作れず、魔族が滅んでしまう。新しい王は頭がおかしいのかもしれないと危惧したラクリナ大陸の王は、デルモン大陸の新王を滅ぼすことに決めた。新王を『魔王』と呼び、ラクリナ大陸一の強さを誇る勇者を呼び寄せた。
その勇者があたしってわけ。
あたしはすぐに魔王を倒すことを了承し、デルモン大陸に向かった。
それで今あたしは魔王の住む城――通称魔王城の前に立ってるのだ。
魔王ってどんなやつなんだろう?
女性の魔族を大陸から追い出したくらいだから女性にモテないのかも。と言うことは、もの凄くブサイクだったりして。もしくはもの凄く太っているのかも。
でも、ブサイクだろうが太っていようが悪いやつは倒さなければいけない。
それが勇者の役目なのだ。
あたしは気合いを入れるためにパンっと両手で頰を叩くと、よぉーし! と叫んでから魔王城に一歩踏み出したのだった。
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