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三題噺もどき3

料理

作者: 狐彪

三題噺もどき―ごひゃくさんじゅうはち。


※ちょっと注意なので、R-15にしてます※

 


 なんだか久しぶりにここに立っている気がする。


 なんとなく換気扇のスイッチをいれながら、必要なモノを冷蔵庫の中から探し出していく。

 キッチンに立つことなんてめったにないどころか、もう二度とないと思っていたから、勝手がよく分かっていない節がある。

 が、まぁ、なんとなく道具の場所は分かるし、何も問題はないだろう。たいして難しい料理をするわけでもないからな。

「……」

 小学生でも作れる料理だ。

 私も過去に、宿泊学習というやつで、班ごとに分かれて作ったりもしたものだ。

 あの日は、テントにとまったのだけど、大雨が降っていて、眠るどころじゃなかった記憶がある。あと、翌日行われてスタンプラリー的なイベントで、盛大に迷い、教師陣に探されたことも、今となってはいい思い出である。……多分。

「……」

 しかし、ここに立つだけで、割と気が滅入るのは何なんだろうな……。料理が得意とか苦手とかの話ではなくて、面倒なのでしないと言うところがあるからだろうけど。

 きっと1人暮らしでもしたら変わるんだろうけど、それはそれで1人分なら何も食べなくてもいいとなりそうな気もしてはいる。それか適当に買って済ませる。

「……」

 まぁ、そんなもしもの話は置いておいて。

 とりあえず、今日作るものの材料はあると言っていたから……。

 一番下にある野菜室の中から、人参と玉ねぎ。あとジャガイモ……は、外に置いてある。

 数日前に祖母が大きな段ボールに大量にいれて送ってきた。畑をしているわけではなく、祖母の知り合いが畑をしていて売り物にならないからとくれたらしい。詳しいことは分からないけど。これでも母が職場の人に持っていったらしいが、半分ぐらいしか減っていないように見える。

「……」

 後は、肉と固形のルーを出しておく。

 本当は、ジャガイモよりもサツマイモとかカボチャを入れたかったんだが。

 今回のカレーは、ジャガイモをできるだけ消費できるようにというやつなので……。ジャガイモを多めに入れる。

「……」

 普段なら、絶対こんなことしないんだけど。料理なんて、できる限りやりたくない。

 しかし、母が今日は夜遅くまで仕事で、作っている暇がないので、カレーを作っておいてくれとのお達しがあったので、こうしてキッチンに立つことになっている。

 まぁ、こうして仕事をやめて、家に入り浸っている身としては、そういうのに逆らうのは気が引けるのもある。

「……」

 さて、何からしたものか。

 調理方法はカレールーのパッケージにも書いてあるが。

 とりあえず、材料を切ってしまおう。

「……」

 鍋に油を敷いておき、玉ねぎを切っていく。

 泣くほどのことはないが、ジワリと目頭が熱くなるので玉ねぎを切るのは嫌いだ。

 あと、手に匂いがついて、いくら洗っても2,3日は玉ねぎっぽい匂いがするんだけど、これは気のせいなのか何なのか……。ものすごく気になるんだが。私の手の洗い方が悪いのかと思い、何度も洗ったけど、取れたためしがない。

「……」

 まな板の上に玉ねぎを置き、頭の方を切り落とす。

 続いて、反対側も切り、皮をむいていく。

 ―のだけど。

「……」

 球体のモノを切るときはそれなり注意を払うべきなのに。

 こういう時に限って、注意はふいに切れる。

「……」

 扱いなれない刃物というのは。

 気を抜くと、牙を抜いてくるもので。

「……ぁ」

 思いきり手を滑らせた。

 たいして力はないから、切断まではいかないけど。

 玉ねぎを支えていた左手の親指に。

 さっくりと。

 切込みを入れてしまった。

「……」

 うんまぁ。

 持ち方も悪かったんだけど。

 どうして、刃が落ちる先に指があるんだと言うかんじなんだけど。

「……」

 滲みだす赤が、玉ねぎにつかないようにさっさと手をのける。

 包丁を軽く洗いながら、どうしたもんかと考える。

 どうしたも何も、さっさと止血なりなんなりしないといけないのに。

 ―流れる水に、さらしてみたくなる。

「……」

 自分の体から流れ出ていく。その赤は。

 昔にやっていた行いを思い出して。いけない。

「……」

 堕ちたことのない人間には分からないだろうが。

 一度堕ちてしまうと、そこから上がるのは案外とても難しい。

 それがいかに楽で、心地いいのか知ってしまっていると。

 離れていても、ふとした瞬間に、こうして蘇ってくる。

「……」

 生きている価値がないと、心の底から思っていたあの頃に。

 それでもここに居ると自分で自分を自覚するために。

 伴う感覚と、視覚的なこの赤を。

 何度も確認していた。

「……」

「……」

「……」

「……」





 ―ガチャ



「……」

 玄関のドアが開く音がして、顔を上げた。

 時計を見ると、そろそろ父が帰ってくる時間だった。

 この状態をあの人に見せると面倒なので、とりあえず水道をとめて、包丁を置く。

「……」

 よく見れば、思ったよりは切れていなかったようだ。

 止血するほどのモノでもないし、軽く絆創膏でも貼っておこう。

 私の作るカレーライスは、案外他の家族には好評なので、さっさと作ってしまわなくては。







 お題:泣く・玉ねぎ・堕ちる

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