その少年は…
すこーしずつ書いていくので、気長にお付き合いください。
気づくと少年は森を歩いていた。先ほどまで違う場所で大変な目にあっていた気がするのだが…。
「ここは…。てか俺は誰だ?そもそも何をしてるんだろう。」
「何も思い出せない…。いったい何をすれば…。」
少年はしばらく思案していた。自分は誰なのか、どうしてここにいるのか、何をすべきなのか。考えれば考えるほどやることは分からない。ただ、体の生理的な反応というのは正直なもので、身体における危険を少年に発していた。
「のどが渇いた…。とりあえずこういう時は、水を確保しなければ…。…?」
少年は違和感に気が付く。先ほどまで一切自分の脳に記憶があるように感じなかったのに、どうして自分が窮地に陥ったときのマニュアルのような知識があるのか。
「今はとりあえず、川を探そう。えーっと、こういう時はまず目の前の小高い丘を目指そう。」
高いところから低いところに流れるという当たり前の性質からひも解くと、まず森の中にいるより高台にのぼった方が良い。少年は持てる力を振り絞って丘を登った。
「ふう、ここからなら探せるな。んー、あの山と山の間が渓谷になっていそうだな…。」
自分の体力を逆算しつつ、少年は手ごろな水源のありそうな場所へと目指す。
「やっとついた。うん!うまい!これならそのまま飲めそうだ!しばらくここら辺を中心に探索していこう!」
そして少年は、渓谷の割れ目と落ちていた大きな葉を利用して簡易的な家を作った。
「これからどうするか…。飲み水は確保したけど食料がな…。」
「それに、住処もどうにかしないとこのままここにずっと住むわけにもいかないな。」
今後の生活の不安に押しつぶされそうになりながら、少年は眠りについた。
<ーーー、ーーーーーーーーーーーー。>
<おい、ーーー。ーーー西にーーーーーえ。>
「ん…?」
「なんか夢を見ていた?ような気がするけど…。まぁ、こんなに天気の良い日の夢だ。西に行ってみるか!」
今の現状をあざ笑うかのように輝く太陽を背に、少年は西に進む。どのくらい歩いたか分からないが、少年は狼のような生き物の群れを見つけた。
「ここは…。なんか見覚えがあるけどまあいいか。それよりあの狼たちはどうするか。これ以上近づいたらばれそうだし、いったん考えるか。」
「まず俺に武器はない。そしてあの中に飛び込むほどの勇猛さも持ち合わせていない。それになんか大きくないか?狼を生で見たことは確かにないけど…。」
少年は周りを見渡し、何か打開策がないかを思案する。
「全部で…8匹か。しかも組織的な動きで周囲を警戒している。なんかピリピリしているようにも感じるな。食料の確保もしたいし仕留めたい気もするが、1匹おびき寄せるのはしんどそうだな…。」
「今日は引き返そう。他の食糧を見つけて、武器を作ってから狩りに行こう。」
少年は周囲に食べられそうな果実や草がないか探しつつねぐらに帰る。
「あれは…バナナ?だよな。それに横に木箱みたいなものもあるな。」
少年が木箱のようなものに近づくと、木箱は怪しく光り輝いた。その光は空に大きく柱となって伸びた。そう、周囲のものが注目するくらいには大きく…。
「バウ!バウバウ…。ガ――!」
「やべ、狼もどきたちがこっちに気が付きやがった!しかもあいつら…二足歩行で全力疾走してやがる!」
狼型の生物の全力疾走を前に、驚いた少年は木箱の上にしりもちをつく。すると、木箱から出ていた光が少年を取り囲む。
<かしーーーーー。ーーー。ーー光を前に。>
「…?なんか、懐かしいような、癪に障るような。不思議な感じがする…。それになんか両手からあったかい何かを感じる。光を前に?」
言われるがままに少年は両手をかざした。すると、大きな炎が目の前の障害すべてを焼き払った。文字通り、消し炭にしてしまった。
「・・・・・・・・・・・。ナニコレ。いやいやいや、不思議パワーにもほどがあるだろう。」
「まあ、いったんは食料確保…できてないやん…。しゃーねえ、あのバナナ?で今日は我慢するか。」
いろいろと不可解なことは起きているが、少年は疲労を引きずって帰路につく。ねぐらの前の川の水を飲んで、いよいよバナナ?の実食に移った。
「さて、どう食べたもんかね。大きさが自分の腰くらいまであって食べにくい。とりあえず、セオリー通りむいてみるか。」
見た目は普通のバナナと変わらないことに安堵しつつ、少年はビビりながらも空腹には勝てずにその植物をほおばる。
「うん、美味い。めちゃくちゃ美味い。それに…?何か少しずつ眠気が…。」
バナナ?を一心不乱にむさぼり食っていると、少年は耐えがたい眠気に襲われた。すっかり熟睡する少年の両手には、昼間見たような大きな光の柱が立っていたことを少年は知らない。
食料確保に今後の見通し。何もかもが進んでいない状態であるが、ただその疲れをいやすように少年は眠る。その顔には、今後降りかかるであろう苦労を体現しているような表情を浮かべるのであった。
次回、少年のオレツエー…になりません。少年はたくさん苦労しそう。