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「元気そうなら良かった」


そう言って戻っていったディルクの後ろ姿をミザリーは見えなくなるまで見送っていた。

ちなみにこの後小躍りして備品室の棚に2回も小指をぶつけた。



現金なもので、それから数日は執務室に行けなくてもミザリーはご機嫌で過ごしていた。


(やはり推しからのファンサが一番効く。そうだ、あのぬいぐみに隊長の絵姿を張り付ければ職場環境が良くなるのでは?)


そんなくだらないことを考えていると、どうも詰所が騒がしい。近くにいた隊員に聞くと、違法な薬物を使用していた娼館の店主が捕まったらしい。

なんでも隊長自らが指揮をとっていた件らしく、今日店主はじめ娼館の従業員から娼婦たちまで一斉に身柄を押さえたという。



(だからこんなに慌ただしいのか)


こういった時、普段は事務方で表にはでないミザリーも駆り出されることもある。女性や子供たちから話を聞くのには屈強な男たちでは適さない場合があるからだ。


(一旦備品室に戻って、いつ呼ばれてもいいように準備してこよう)


そう思ったミザリーが足早に廊下を歩いていると向こうからディルクたちが歩いてくるのが見えた。

軽く会釈して通り過ぎようとしたとき、その集団の中から


「ミザリー?ミザリーじゃねえか!」と粗野な声が聞こえた。

「……!ジョーイ…」

その声でミザリーが振り向くと、風貌が大分変ってしまってはいるが、そこにはかつての孤児院の仲間の一人がいた。

隊員に拘束されている。娼館の件と関係があるのか。


二人がお互いを認めたのを見て、隊員たちが騒がしくなった。


「ミザリーもこっちに来てもらいますか?」と誰かから声が上がったが即座に

「必要ない。こいつは取調室に早く連れていけ」とディルクが言う。


しかし後ろ手に縛られた状態で背中を押され、ややつんのめりながらもその男は

「お前騎士団なんかで働いてるのか、偉くなったもんだなあ!劣化品のくせによお!」と吐き捨てるように言った。


「連れていけ!」今度はディルクの怒号が響き、男は取調室に向かって引きずられるように連行されていった。


男が見えなくなっても顔を強張らせたままのミザリーを見て

「大丈夫か?」とその場に居合わせた隊員が心配そうに声をかけたが、


「…大丈夫です。必要ならそっちにも行きますので、連絡してください」

と言うと、ミザリーは一つ大きく深呼吸をしてから目的の場所へ足を向けた。


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