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その新人女性隊員は結論からいうとミザリーのライバルにはなり得なかった。
いや、ミザリーがその女性のライバルになり得るはずがなかったというほうが正しい。
そのフレイアという女性隊員は貴族のお嬢様で、とんでもない美人な上に性格もよく、しかも優秀な事務官だった。
プラチナブロンドの長い髪には天使の輪がきらめき、白く小さな顔には見るものを引き込む大きなグリーンの瞳。スッと通った鼻と少し小さな唇は愛らしい桃色をしていて、その声はまるで鈴の音色のように心地よい。
身長は女性にしてはやや長身だが、隊服のロングスカートがよく似合っていて、そのロングスカートから時折見える白く華奢な足首などは、同性であるミザリーでさえちょっと見とれてしまう。
ちなみにミザリーは備品室で荷物を片付けるので常時パンツ姿だ。(女性用の隊服はパンツとロングスカートの二種類ある)
着任初日に隊員の前で簡単な挨拶をした時など、その美貌により隊員たちから歓喜の雄叫びが聞こえたほどだ。
その声にフレイアが一瞬その美しい顔を強張らせたように見えたが、すぐにディルクが自分の後ろにかばい、隊員たちに解散を命じた。
上司命令に逆らえるはずもなくすごすごと持ち場へ戻る隊員たちの背後では、フレイアがディルクに頬を染めてお礼を言っていた、ように見えた。
その時の二人の様子がやけに親しげに見えて、ここ数日ミザリーは落ち込んでいた。
「なんか…お似合いじゃないですか…?」
備品室にある誰が持ってきたかもわからない熊のぬいぐみに話しかけるほどに。
しかも何故か熊を椅子に座らせ自分は地べたに座っている。
実は二人は幼馴染らしいというのはライラが追加情報として教えてくれた。それを知ってしまうと見た目の印象は全く違う二人なのになんだか並んだ姿がしっくりくる。
影で美女と野獣だなんて言っている連中もいるが。
それにミザリーが一番ショックを受けたのは、これまで発注書をディルクに渡すのが至福の時間だったのに全て書類はフレイアを通すことになり、直接ディルクと話をする機会がなくなってしまったことだ。
しかも、一度ミザリーの告白現場に居合わせたフレイアはふふっと笑って「なんて可愛らしい」と言ったのだ。