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「それはあの場を切り抜けるための嘘だったのでは?」
「俺は嘘なんてついていない」
自分のデスクに座っていたディルクがおもむろに立ち上がり、ソファに座るミザリーの隣に腰かけた。
まっすぐミザリーを見てくるディルクの顔が見れず、ミザリーは俯いてしまう。足同士が触れてしまうほど近い。
「最初は保護者の気分だったがな…この子供がこれからはずっと幸せに笑っていられればいいと。でも最近になってやっと自覚した。お前は『俺』が幸せにしたいんだと。どこかの知らない男に横取りされて幸せにされるなんて許せない。俺が少しの隙間もないくらい幸せにしてやる」
あまりに近くで聞こえるディルクの声にますますミザリーの頭は下がってしまう。ディルクから発せられる雰囲気がいつもの上司のものではない。
「取られるってそんな物みたいに…」
「こっち向けミザリー。俺のこと好きって言ってたよな?」
(言いました!いっぱい)
思いがけず自分のしたことがかえってきてミザリーは背中に汗をかいていた。
デイルクの指がミザリーの顎下を少しくすぐり、そのまま優しく輪郭を撫でた。それに促されてミザリーの顔が上がり、こちらを見る赤茶の瞳から目が離せない。
「ちょっと顔近い…」
「期待してるとこ悪いが何もしない。職場だぞ」
「なっ別に期待してなんか…!」
いないですという言葉は少しずつ小さくなって最後には消えてしまった。あまりにもディルクが優しい顔をしていたからだ。
静かになったミザリーの両手を恭しく取るとディルクは
「愛している」
と囁くように言った。それは初めてのディルクからミザリーへの告白だった。
本編はこれで完結です。ご覧いただきありがとうございました!
後日ディルク側の話や後日談を番外編としてアップする予定ですのでよろしければそちらもどうぞ。




