空飛ぶランドセルの軍隊
TVのニュース画面をぼんやりと見つめながら、私は別のものを目にしていた。現在進行系の戦争の、火を吹く兵器を収めた録画映像を流すその裏に、支配者が静かに笑っている。高らかにではない、鋼鉄のようなその顔の、口元だけが軋む音を立てるように笑っているのだ。私は不快感を酒で拭おうとする。私は何のために軍を指揮しているのか──考えてはいけない。ただ命令を受け、それを遂行するのみだ。
敵国に敗ける理由はない筈だった。我が国は先進国、彼の国は発展途上国と呼んで差し支えない。兵器の量と質においては比較のしようがない。あちらさんの乏しく前時代的な兵器では我らの軍に太刀打ちできる筈もないのだ。正直、開戦した頃はすぐに決着がつくだろうと思っていた。舐めていた。まさか、これほど長引くとは思ってもいなかった。
我が軍のジェット戦闘機が空を往く。闇を切り裂くように、オレンジ色の弾丸射撃が止む間もなく放たれる。敵地に炎の花が咲く。圧倒的な我が軍の攻撃の隙間を縫って、敵国の子供たちが飛んで来る。背負ったランドセルから空気を吐いて、怒り狂った目をして、我らを殺しにやって来る。
なあ、兄弟。君たちの目は何を見ているんだ? 君たちはどこへ弾んで行こうとしているんだ? 無邪気で楽しい筈の年代を戦争に賭けて。どんな教育をされた? 子供らの目に浮かぶ敵意に、私は己の生い立ちを重ね見る。彼らは、私を超えて来る。現代兵器に守られ、社会に守られた私など太刀打ちが出来ない。ぬるりとしたアルミニウム合金の手触りを私は背筋に感じた。