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【豪華挿絵】月と金星とステラマジカ ~ヒミツの愛情魔法~  作者: 餅餅餅
第9章 月と金星と大願成就
83/89

冒険録82 主人公がヒロインに叱られた!

 ちゅっ❤


 ――っ!? つ、ついに夕と、キスしてしまったぁぁ!!!

 ああ、ヤバイ、(うれ)しすぎる……。

 押し寄せる膨大(ぼうだい)な幸福物質に、頭が真っ白になっていく。

 頭の中が夕で満たされて、もはや何も考えられない。

 今はただ、この(くちびる)に伝わる、熱く平らですべすべとした感触(かんしょく)を――ん?


「「……え?」」


 想像していたものと異なる感触に目を開けば、飛び込んできたのは夕の美しい(ひとみ)ではなくお団子髪(だんごがみ)。また、そのサラサラの前髪が俺の鼻先をくすぐり、夕の甘い(にお)いを運んできている。そして肝心(かんじん)の唇が()れているのは……なぜか夕の眉間(おでこ)だった。

 それで恍惚(こうこつ)状態から我に返り、身体を引いて夕の全身を(なが)めてみれば……なんと元の幼女の身体に(もど)っていた。

 なるほど、身長が縮んだことで接触(せっしょく)位置が上にズレてしまった訳か。不測の事態で想い人との実質初キスが失敗に終わり、(すご)く残念なような、でも少しホッとしたような……うーん、何とも複雑な心境だ。

 それで夕の方はと言うと……


「んなっ、ななな、なんってことよぉぉぉ!!! こんな絶妙(ぜつみょう)なタイミングで時間切れとか、ひどすぎるよぉぉぉ!!! うわあぁぁぁ神様のばかぁぁぁ!!!」


 横向きにフラフラと(くず)れ落ち、ベッドの上で大の字になってジタバタ暴れながら、まるでこの世の終わりとばかりに(さけ)んでいる。……ははは、直前までの(あで)やか夕さんはどこへやら、姿と一緒(いっしょ)に心までお子様モードになってしまったようだ。


「……んあぁ~、うるひゃいの~」


 夕の叫び声で、もう一人のお子様が起きてしまった。


「ん~? ままー、どしたのー?」

「パパとちゅーできなかった……もうおしまいよぉ……」

「げんきだすのー! るながしたげるのー!」


 ぐでっと横になった夕の(ほお)へ、ルナがチュッと口付ける。

 するとその可愛らしいフェアリーキッスがバッチリ効いたようで、夕ママはむくりと起き上がり長座になると、ルナを優しく(つか)み寄せる。


「ん……ありがとぉ、ルナちゃん。ちゅっ」

「くふふ~、くしゅぐったいの~」


 ルナは夕の(てのひら)の上でお返しを受けると、嬉しそうにモゾモゾくねくねしている。


「あと、パパ……ごめんね? こんなすぐ解けちゃうなんて……」

「あーでもまぁ、失敗って訳でも、ないだろ?」


 短い時間とは言え、こうしてしっかりと大人の姿にはなれたのだ。これまで魔法が上手くいかなかった夕としては、上出来も上出来だろう。


「そ、そうよね! おでこでも、大好きなパパとのキスには違いないんだから! うん、千里の大地も一歩からよ!」


 あ、そっちで解釈(かいしゃく)しますか。夕が元気出してくれたら何でもいいけどさ?


「やははー! ぱぱにもちゅ~!」


 そこでルナがこちらに勢い良く飛んできて、頬にキス――というより衝突(しょうとつ)してきた。


「おいおい、照れるなぁ――ってどした夕?」


 夕が唇を(とが)らせてルナを見ている。


「むううぅぅ……ほっぺはあたしもまだなのにぃ……んや、宇宙おもちをカウントするとあたしのが先……? ――って何言ってんのよぉ、あたしわぁ……そもそも娘にヤキモチなんて大人げなさすぎるぅ……うがぁぁ……」


 夕は自戒(じかい)の念に()られているのか、ペチペチと両手で頬を(たた)くと、前屈(まえかが)みでウネウネしながら(うめ)いている。

 (いそが)しいやっちゃなぁと、その様子を半ば(あき)れつつ(なが)めていたところ、


「ははは……まった――くぅっ!?」


 俺は首が取れんばかりの勢いで視線を()らすこととなった。 

 こうして夕の身体が縮んだことで、先ほどまで猛威(もうい)()るっていたヒル&ヴァレイは()しくも消失しているものの、そうなれば必然的にその場所に隙間(すきま)が生じる訳だ。つまり何が言いたいかと言うとだ…………隙間からチラ見えしそうになっている! 超キケンなシークレットポイントが!


「……んー?」


 俺が途中(とちゅう)(だま)ったものだから、前屈みで呻いていた夕が不思議そうに見上げてきた。……うーん、これは、言ってあげるべきだよな……すっげぇ言い辛いけど。


「ゆ、夕……その、なんだ、とりあえず上着を着て、(かく)して欲しい、かな?」


 視線を吸い込むアブナイ隙間(ブラックホール)の吸引力に、理性と根性で(から)くも逆らいつつ、勇気を持ってそう伝えた。


「え? ――っんわわわ!!!」


 夕は自分の身体を見下ろすなり、大慌(おおあわ)てで横のショールを引っ掴んで羽織ると、両サイドを中央に引っ張り寄せて胸元を隠す。どうやら、大人モードバフと「つよきになーれ」バフは完全に消えているようで、普段のアクシンデントによわよわな夕に戻っている。


「………………み……みた?」


 夕は顔を赤くして、半分涙目(なみだめ)上目遣(うわめづか)いでそう聞いてきた。


「……え、えーと」


 正直どこまでがアウトなのか判断が付かず、返答に一瞬(なや)んでしまったところ……


「っっぅぅぅ! …………………………パパのえっち」


 早合点した夕が顔をプシュッと沸騰(ふっとう)させると、ジト目を向けてそう(つぶや)いた。


「ちょぉ待て待て、誤解だ! 夕が考えてるとこは、見えてないってば! ギリ!」

「っっぁ! じっ、じゃぁ、近くはじっと見てたのねっ!?」

「いやいやいや、じっとというのも語弊(ごへい)が……ってかそもそも、さっきと言ってる事が……違うような……?」


 堂々と胸を張って好きなだけ見ていいとか言ってたのに……いやまぁ、そう言われても大手を振って見る訳には絶対いかんけどさ?


「いっ、いいい、言ったけどっ! でっ、でも、こういうのはね……イイ時とダメな時があるのっ! だ、だってぇ、今はちっちゃいし……それに心の準備もできてないからダメッ! 雰囲気(ふんいき)で察しなさいっ!」

「え、ええぇ……」

「わかったぁ!?」

「は、はい。すんません」


 少々理不尽(りふじん)な気もするが、女心とはそういうものなのだろうと納得するしかない。これも()れた弱みというやつか……是非(ぜひ)もないね。


「ひひひー、またままにおこられてるのー! ぱぱかっこわるいのー!」


 そこでルナが目の前に()かんでゆらゆらしながら、夜空色の髪先を矢印状にして俺に向けると、楽しげにクスクス笑っている。


「おい、そんな言うほど…………うん、(おこ)られてるなぁ。……いやでも、ルナも俺のこと言えんぞ?」

「むー! そなことないのー!」

「そうかぁ? 絶対俺より怒られてるって」

「るな、ぱぱよりいいこだもんっ!」

「――こらぁ二人とも! そんな情けない事で張り合わないの! 特にパパ!」

「ぴゃっ」「すまん」


 ほんとそれな。ついさっきの夕じゃないが、幼女と張り合ってどうすんだって話だ。


「やはは……またおこられちゃったの」

「だなぁ、ははは」


 (しか)られ仲間のルナと顔を見合わせると、鏡合わせのように(そろ)って頬を()く。


「まったくもぉ…………さ、寝るわよ」

「はーい」「だな」


 そうして直前までの激甘気分が()き飛んだ俺と夕は、新たな家族ルナを間に(はさ)んで、大人しくベッドへ身体を(しず)めるのであった。



【550/629 (+19)】

色々と期待されていた方、申し訳ありません! キスはまだ早いと神は仰せのようです。

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