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【豪華挿絵】月と金星とステラマジカ ~ヒミツの愛情魔法~  作者: 餅餅餅
第9章 月と金星と大願成就
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冒険録80 主人公がついに気付いてしまった!

 魔法で可愛くも美しい大人の姿に(もど)った夕は、色っぽいネグリジェという最強装備まで身に着けて、俺が座るベッドへと()い上がってきた。


「うふふ、楽しみだね♪」


 それは何気ない一言ではあるのだが……紅潮した(ほお)と熱を帯びた声からするに、ただ一緒(いっしょ)(ねむ)るだけのつもりは絶対にないだろう。その証拠(しょうこ)に、(すみ)に座る俺の方へゆっくりと向かってきている。


「待て待て、なぜにじり寄ってくる!?」

「ん~? そんなの、大地君に()き付きたいからに決まってるじゃない?」


 ヤレヤレと(あき)れる夕、それを(まくら)の上で真似っ子するルナ。


「ちょぉ……そんな当たり前みたいに言われても、ダメだって!」

「え~、なんでぇ~? 別にドキドキなんて、しないんだよね~? にゅふふ♪」


 しないわけ、あるかぁっ! 百%分かってて言ってやがるっ! この夕さんめぇ!


「いや、その…………――っほら! ルナも見てるだろ?」

「ん? ぎゅ〜って()()()()くらい、いいでしょ? ね~ルナちゃん?」

「おー! もっとくっつくのー! ぎゅってするのー!」

「ほらー」

「んな……」


 それが意味するところを全然分かっていないルナが、枕の上で横に()びながら無邪気(むじゃき)に答える。――くっ、娘は完全にママの味方のようで……パパはツライよ。


「――ごほん。別にくっつかなくても、()られる広さだろ? ほら、明日からもっと(いそが)しくなるんだし、早く寝とこうぜ? な?」


 俺は努めて冷静を装い、誘惑(ゆうわく)してくる夕を(さと)してみる。ここで流されたらお終いだ、負けるな大地!


「むぅぅ~! …………あのね? 私だってすっごく()ずかしいんだよ? 勇気を出してこんなに頑張ってるのに、大地君ってばあんまりだよぉ……」


 夕はわざとらしくヨヨヨと横倒(よこだお)しに(しお)れると、顔だけをこちらに向けてこう続けた。


「……大地君は、靖之(やすゆき)さんの言葉、忘れちゃったのかなぁ?」

「え?」


 ナゼここでヤスが?


「ほら、さっき言ってたじゃない……お礼って」

「あー」


 助けてもらったお礼に、夕が喜びそうなこと――風呂にでも(さそ)ったらどうだとか言っていたな。()しくもすでに一緒に入っていたので、その機会は無かったが。


「もちろん私は、こうして大地が無事だっただけで(うれ)しいし、他に何も要らないんだけど……でも、でもっ! ものすっごぉぉく心配したんだからね!?」

「す、すみません……」


 これに関しては弁解の余地もない。夕を泣かせてしまった罪は重すぎる。


「それもあるし、その……欲張り言っちゃうと、ちょっとくらいご褒美(ほうび)、あったら嬉しいなぁ? なぁんて? チラッ」

「くっ……」


 夕は上目(うわめ)(づか)いで小首を(かし)げておねだりしつつ、こちらへの侵攻(しんこう)も再開してくる。

 それは欲張りでも何でもなく、夕が居なければ俺はとっくに死んでいる訳で、おねだりの一つくらい聞いてあげないと天罰(てんばつ)が下るというもの……ではあるんだがぁ……。うーん、何か上手く返す手は――あっ、これなら!


「そ、その、夕がご褒美とやらで何を望んでいるかは分からないが……全く分からないがっ! その身体がゆづのだって、忘れて……ないか?」

「むっ! むぅぅぅ……くにゅぅぅぅ……」


 俺の予感は当たったようで、夕は実に(くや)しそうに(うめ)くと、おずおずと(ひざ)を下げて後退し始めた。よし、この調子で説得して押し返そう!


「それにだ。さっきヤスにも言ったけど、色々と順序ってもんが、あるだろ?」

「そんなの私はとっくの昔に大歓迎(かんげい)で、そもそも大地君が……んぅ、でもこれはゆづの件で仕方ないことだしぃ……むにゅぅ」


 夕はもにょむにょ言っており、どうやら説得が効いているようだ。

 そう思って少し安心していたところ……


「――あっ! ねぇねぇ、大地君」


 ふと何かを思いついたらしく、そこで(みょう)なことを(たず)ねてきた。


「もし全部が上手くトントン拍子(びょうし)に進んで、いざ日本に帰れるってなったら……どうする?」

「え、そりゃ、帰るだろ? そのために頑張るんだし?」


 こんな当たり前のことを、ナゼわざわざ聞いてきたのだろうか。


「うん。そうなんだけど…………えっと、参考までに聞いてね?」

「お、おう?」


 そこで夕は真剣(しんけん)な顔をすると……


「もしこの世界でずっと暮らすとしたら、私とゆづ、両方を選ぶこともできるんだよ」


 俺が気付いていなかった重大な事実を告げてきた。


「な!? そう、か……」


 まさに目から(うろこ)だった。二人が身体を共有しているから、虐待(ぎゃくたい)を受けるゆづを救えば夕とは一緒に居られないということで、言わば究極の選択(せんたく)を日本では(せま)られていたが……もしこの世界で夕の身体の作製に成功したなら、俺の努力次第でどちらの手も取ることができるのだ。


「もちろんこれは私とゆづの都合だから、大地が望むままに選んでくれたらいいの。私は大地さえ側に居てくれたら幸せだから、大地が選んだ先にずっと付いていくよ。……とは言っても、本当に身体を作れるのかも分からないし、まだまだ先も長いから、今すぐ慌てて決めることじゃないんだけどね?」

「そう、だな」


 日本を捨ててこの世界で暮らす、か……夕達のことを第一に思えば、最善の選択ではあるが……もちろん、そう簡単に決められることではない。そもそも俺達が帰らなければ、ルナやカレンやヤスも帰れないかもしれないので、俺の一存で決める訳にはいかないだろう。……まぁヤスは、ほっといてもしれっと帰ってきそうだが。


「それで、何でこんなこと急に言い出したかっていうと……そのぉ……参考になる、かなって……?」

「さん、こう?」

「…………お、お返事の!」

「っ! お、おうよ……」


 まったくもって情けないことにも、夕の告白への返事を待ってもらっている状態なのだ。それは俺の気持ちが不確かな事に加えてゆづの事情もあるからで、それで夕も気長に待つとは言ってくれてはいるものの……本当に申し訳ないと思っている。

 だが……この世界で暮らすなら、ゆづに気兼(きが)ねすることもなく、大手を()って夕を好きになってもいいんだよなぁ………………――っえ!?


 おい……おいおいおい……。


 俺は今……なんて?


 好きになってもいいって……何だよそりゃ……。


 それじゃまるで……。


 思考を否定すべく前を向けば、座り()んでテレテレモジモジしている夕が目に入る。

 すると不意に、昔の出来事が脳裏を(よぎ)っていく。


 ――パパ、あたしと結婚して!!!

 俺は初対面なのに、木から落ちてくるなり、プロポーズしてきた夕。

 ああ、あの時は、頭のおかしな子だと思ったもんだなぁ……ハハハ。


 ――あたしが毎日ご飯作って、パパの細胞(さいぼう)を全部()()えてあげるんだからね!

 いつも俺のために、最高に美味しい手料理を()()ってくれる夕。

 愛情が調味料とか小っ恥ずかしいこと言ってたが……まぁ、ある、かもな。


 ――私、こんな、こんな大地なんて見たくなかった!!!

 今よりずっと弱かった(ころ)の俺を、(なみだ)(こぼ)しながら本気で(おこ)ってくれた夕。

 あれは、ガツンときたなぁ……涙を(たた)える夕の(ひとみ)が一晩中頭から(はな)れなかった。


 ――またっ、こうしてぇ、お話してくれてぇ……ほんとに、よかったってぇ……

 喧嘩(けんか)別れした俺と、また話せただけで嬉し泣きしてしまった夕。

 こんな強い心を持ってるくせに、俺の事になると途端(とたん)に泣き虫になるんだよな。


 ――くぬぬぅ、あたしの(ほお)で遊ぶ悪いパパにはぁぁぁ……こぉぉよお!

 ――うふっ♪ どぉ、どぉ? あたしのスターちゃん、とっても強いでしょぉ?

 俺に頬を(つま)まれて、お返しに頬に吸い付いてきた、ただの二十歳児(にじゅっさいじ)の夕。

 一緒に遊んだゲームに勝ち、得意げになって子供のようにはしゃぐ夕。

 真面目な時との温度差が激し過ぎて……それがまた夕らしくていいなと思う。


 ――私とあなたが死で分かたれる、その時が必ず来るとしても!

 ――その悲しみを()えられるほどの、喜び! 愛! そして幸せをあげるわ!

 俺の心の闇を(たましい)(さけ)びで打ち払う、まるでヒーローのように格好良い夕。

 いつか俺も、夕に(ほこ)れるような立派な人間にならないと、そう決心した。


 ――だからそのときは、ゆづを助けてあげてくださいね

 もしもの別れの悲しみを必死に(こら)え、健気にもゆづのことを(たく)してくる夕。

 何を犠牲(ぎせい)にしてもと言いつつ、非情に成りきれない、どこまでも優しい子。


 そして……


 ――大地はいつだって……私が心から欲しいもの、本当に大切なものをくれるのね

 ――ありがとう 大好きだよ

 頬を染めて、ただただ真っ直ぐに真摯(しんし)な愛をぶつけてきた夕。

 こうして思い返しただけで、再度心臓を()()かれた。


 次々と去来(きょらい)する夕との思い出に、胸の(おく)がどんどん熱くなっていく。

 もう苦しくて、目の前の夕を見ていられない。


「そう、か………………ハハッ、ハハハハ」


 自分のアホさ加減に(あき)れて、笑いが込み上げてきた。


 なんだ


 俺はとっくの昔に


 落ちてたんだな


 思えば至極(しごく)当然の話だった。俺に愛情を届けて心を救ってくれた小さなヒーローで、聡明(そうめい)で心優しく努力家な、可愛くもカッコイイ、家族のように大切な女の子……こんなの、()れない方がどうかしてる。そりゃ周りもこぞって呆れる訳だ。

 そうと自覚した今となれば、この()き上がる熱い気持ちを今までどうやって誤魔化(ごまか)していたのやら、全くもって不思議でならない。あれか、人を好きになったこともないヤツが突然(とつぜん)ベタ惚れしたもんだから、感情がバグって良く分からなくなってたのか?


「ん~?」


 突然笑い出して(だま)りこくった俺を不思議に思ったのか、夕がその人形のように整った愛らしい顔を近づけて、宝石のような蒼黒(そうこく)の瞳でじぃっと見つめてきた。


「――っっん!?」


 ヤバイヤバイヤバイ……ハッキリと自覚したせいか、夕がいつもの百倍可愛く見えてきた。大人夕さんになって二倍、とか言って(あわ)ててたのが(なつ)かしいレベル。もはや顔を直視できんのだがっ!?


「ナッ、ナンデモナイゾォ?」

「うふふっ、へんな大地君♪」


 慌てて後ろに下がって誤魔化すが、緊張で声が上ずってしまい、夕にクスクスと笑われてしまった。

 でも、その楽しそうな微笑(ほほえ)みがまた(まぶ)し過ぎて……ははっ、だめだこりゃ。俺はもう、本格的に頭がバグってしまったらしい。

 挙げ句には、それすらも悪くないなと思ってしまう始末で……全くもって救いようのない、不治の病というものか。

 嗚呼(ああ)、本当に、是非(ぜひ)もないね。




【550/550 (+27)】


さて、大地君がやっと気づきました! ほんとやっとですよ!

この断片的な回想ですが、ハピスパ本編での、カッコ可愛い夕ちゃんダイジェスト版のようになりましたね。

本編を未読の方で、このシーンを見たいなぁと思われましたら、この機会に是非お読みいただければと思います!


また、今回のお話なかなか良かったぜ! と思っていただけましたら、是非とも【★評価とフォロー】をよろしくお願いいたします。

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