冒険録78 ヒロインが真の姿を現した!
予期せぬゆづの出現で大混乱に陥った俺たちだったが、ゆづに身体を与えるというルナの発言に対してカレンが具体案を検討してくれたおかげで、ゆづを迎え入れるための道筋が明確となった。それでカレンとの通話後も夕と相談を続けていたのだが、二人ともだいぶと眠くなってきて欠伸が出始めている。皆中時計をカレンに預けたため正確な時刻は判らないが、もう日付も変わるころと思われ、そろそろ明日に備えて就寝しなければならない。
「さて……寝よう、か?」
ならない、のだが……。
「……ウ、ウン」
椅子に座る俺と夕は互いに目を合わせ、次いで一台しかないベッドに目を向けると、再度目線を戻して見つめ合う。
「「っ……」」
すると夕がポッと頬を染めるものだから、俺までつられて顔が熱くなり、慌てて目を逸らしてしまった。
「ヨ、ヨーシ。ネヨウ、ネヨウ」
夕はそう言いながら、ギギギと音がしそうなロボット然とした動きで立ち上がる。先ほどは一緒に寝ることをあれほど喜んでいた夕だが、いざそうなるとテンパってしまうようだ。このような状態で、俺たちは果たして眠れるのだろうか……何が起きるか分からない異世界で、いざという時に寝不足で動きが鈍ってしまうのはマズイ。
「……あー、やっぱ俺は床で――」
「だーめっ!!!」「かわのじになるのー!!!」
「お、おう……」
それで再度妥協案を提示してみるものの、娘達に一瞬で却下されてしまった。どれだけ気恥ずかしかろうとも、これは絶対に譲る気がないらしい。……そうなんだよなぁ、混浴風呂の時もそうだったが、夕はやると決めたら絶対やる子なんだよ。
そうして頑固娘にヤレヤレと首を振っていたところで、
「やはー! るながいっちばーん! なのー!」
ルナがベッド上部の大きな枕の中央へ頭から飛び込み、ぼふっと埋まる。さらにクルリと仰向けになって両手両足を広げると、「ままぱぱはやくー!」と急かしながらパタパタさせ始めた。……なるほど、川の字とは言うものの身体のサイズが違いすぎるので、せめて俺と夕の顔が真横に見えるよう枕の上で寝る訳か。
それでルナが拗ねだす前にと、俺はベッドの前で靴を脱いで上がると、掛け布団をめくって壁を背に胡座をかく。次いで後続のロボ夕が、屈んで靴に手をかけたところで「あっ」と声を漏らして身体を起こした。
「どした?」
「えと、お着替えしなきゃ」
見れば夕は、先ほど風呂場で急速洗濯&乾燥した私学制服を身に付けており、確かにこれでは寝心地が悪いだろう。
「……ああ、バコスさんに借りた……アレ、な」
夕は頷きながら、俺の見つめる先――ベッドの背もたれに掛けられた薄手のナイトローブを手に取る。
そうかぁ……このフワフリスケ、着ちゃいますか。攻撃力上げてきますか。そうですか。
「じゃ……後ろ向いてるな?」
「ん。お願いね」
この部屋で着替えるしかないので、俺はベッドの上で身体を百八十度回転し、目の前の煉瓦造りの壁を見つめる。
後ろから夕がテーブルまで戻る足音が聞こえると、次いで静寂の中でシュルシュルと衣服を脱ぐケンゼンな音のみが響き、俺の心拍数が急速に上昇していく。俺はあらぬ想像をしてしまわないよう、煉瓦の数を無心で数えて気持ちを落ち着かせる。心頭滅却すればケンゼンもまた健全!
ややあって音が止んだところで、
「よ、よーしっ…………【おおきくなぁれぇ~】」
「……?」
後ろから何やら魔法の詠唱が聞こえてきた。しかもこれは初めて聞く詠唱であり、大きくなれ……もしやサイズが合っていなくて服を調整してる? でも今の夕にそんな器用な魔法が使えるのか?
「お、お待たせっ! み、見て、いいよ……?」
そうして疑問符を浮かべていたところ、夕はナゼか緊張した様子で少し低めの声をかけてくる。それでベッドの上で身体を回して振り返れば……
「え? ちょ……えええええ!?」
俺はあまりの驚きに思わず叫んでしまった。
なんとそこには、夕にそっくりな美しくも可憐な女性が立っていたのだった。
【リア充力:0/485(+5)】
夕ちゃんの願い事、皆様はお気付きだったことかと思います。
さあ、素敵な夜を始めましょう。




