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【豪華挿絵】月と金星とステラマジカ ~ヒミツの愛情魔法~  作者: 餅餅餅
第8章 月と金星と夜間補講
74/89

冒険録73 突如スニーキングミッションが発令された!

「うふふっ♪」


 いずれ来るルナとの別れに気を重くしていた夕であったが、幸いにも一緒(いっしょ)に日本に帰れると聞いて安心したのか、今はカレンと楽しげに話すルナを見て優しげに微笑(ほほえ)みを()かべている。


「ホッとしたか?」

「うん。それと人間の姿のルナちゃんを想像したら、そっちもすっごく可愛いんだろうなぁ~って?」

「ああ、でも……(間違いなく超お転婆(てんば)娘だ!)」

「(あはは)」


 本人に聞かれると体当たりされてしまうので、少し小声で笑い合う。


「でも素直な良い子だよ?」

「まぁな」


 テーブルに立つルナは、「かーちゃんせんせーおやすみなさいなのー」と元気に手を挙げて挨拶(あいさつ)している。元気で純粋(じゅんすい)無垢(むく)園児(えんじ)の姿が思い浮かぶ。


()()()だって本当は……」

「?」

「んにゃ、気にしないで」


 夕は少し悲しそうな声でふと何かを言いかけたが、ぷるぷるっと首を()って、いつもの夕に戻った。


「――よーし、これは日本に帰った後が楽しみね!」

「だな!」


 そうして二人で(うなず)きあったところで……


「ぁっく……」


 夕が突然(とつぜん)頭を押さえて前かがみになると、椅子(いす)からズリ落ちそうになった。


「うおとと……大丈夫か?」


 (あわ)てて近寄って身体を支え、そのまま顔を(のぞ)()めば……夕は何かに()えるように歯を食いしばっている。


「まず、い……()()が起き、そう」

「ちょちょマジで!?」


 先ほど風呂場では、何かの拍子(ひょうし)で勝手に起きてしまう可能性もゼロではないと話していたのだが……まさかの悪い予想が当たってしまったのか!


「こ、交代ってこと!? どっ、どうしたら!?」

『ええい落ち着きたまえ! まずは(かく)れないとだろう!?』

「――っ! ああ!」


 突然の事に頭が真っ白になりかけた俺だったが、即座(そくざ)に緊急事態と察したカレンの(かつ)により冷静さを取り戻す。俺がゆづに見られてしまうと二人の命に関わるので、早急にゆづの視界から消えないといけないのだ。


「ご、ごめん……おねが、い……」


 隠れる先を探そうとした矢先、夕がか細い声と共にガクッと頭を()れ…………次いでゆっくりと顔を上げ始める。一刻の猶予(ゆうよ)もない中、俺はルナを()(つか)んで胸ポケットに仕舞(しま)い、【猫歩(キャッツ・ウォーク)!】と心で魔法を(とな)えて()き足で背後に回った。


「………………あ、れ?」


 間一髪(かんいっぱつ)、夕――いや、ゆづが身体を起こして立ち上がり、真後ろで息を殺す俺の(ほお)には冷や汗が伝う。


「ここぉ……どこぉ?」


 幸いゆづはまだ半分()ぼけているのか、ゆっくり首を(ひね)りながらふわふわした声を出しており……(すんで)のところで即バレ終了は回避(かいひ)できたようだが、振り向かれれば一巻の終わりだ。俺は(あせ)(にじ)む手で高鳴る心臓を押さえ、ごくごく少しずつ後退(あとずさ)りしてゆづとの距離(きょり)を取っていく。

 それでこのまま部屋の出口まで移動して外へ出られなくもないが、右も左も分からないゆづを置いて()げる訳にもいかない……この絶対絶命の状況(じょうきょう)をどう打開したらいいんだ。


「……ん~?」


 ――っやばい、振り向く! 即座に視界を断つにはフォグ――いや、周りに水が一切無い……となると別の何かで光を遮断(しゃだん)――あっ、単純に消せばいいのか!

 ゆづがこちらへと上半身を回す中、【消灯(ブロウ)!】と俺は心の中で詠唱した。


「うわわわぁ!? なに、なにっ!?」


 すると部屋の四隅(よすみ)とテーブルのランプの火がフッとかき消え、室内が暗闇(くらやみ)に包まれた。……ふぅ、何度も見てきた『カンデラスクロール』の『ブロウ』の魔法陣(まほうじん)の効果をイメージして使ってみたが、上手くいってくれて良かった。


「て、停電、なの? こっ、こわいよぉ……」


 これでひとまず姿を見られる心配はなくなったが……次の手はどうする? 風呂場で相談した時には、多少手荒(てあら)なことをしてでもと夕に言われていたが、(ゆづ)を傷つけるなんて絶対にしたくないし……それは本当に最後の手段だ。

 それで穏便(おんびん)な手段となれば中に居る夕がゆづを(ねむ)らせるしかないが、ゆづの感情が高ぶっている時にはできないそうなので、まずは俺の方である程度まで落ち着かせないといけない。ここは感情操作の魔法で――いやダメだ、少なくともゆづが俺を信頼(しんらい)していないと効果がないので、絶対に効かない。魔法に頼れないとなると会話を試みるしかないが、こうも真っ暗では余計に(こわ)がらせてしまうだろうし、そもそも俺の声すらも聞かせない方が良い。

 そこで頼れる魔王様を求めてテーブルの方を見るが、光が()れないようにするためか、すでにスクリーンは閉じられてしまっている。他にはポケットにルナが居るが、幼女には荷が重いミッション……となれば不安だが(となり)のヤスを呼びに――いや、人間不信気味(ぎみ)のゆづに知らない男なんて絶対アウトだ。何か他に手は……あ、ルナが髪型(かみがた)を変えてみせたように、魔法でゆづと親しい女性に変身――いやいやいや、そんな人ひとりも知らねぇぇ!


「うっ、ううっ……だれか、たすけてぇ……」


 そうして俺がグルグル思考を(めぐ)らせて(あせ)りを(つの)らせる中、前で(しゃが)み込んでいるらしいゆづが、か細い(なみだ)声を(こぼ)した。夕とは違ってゆづは中身も十歳児(じゅっさいじ)、見知らぬ部屋で目覚めて突然真っ暗闇になれば、恐怖(きょうふ)()られてしまうのも無理はない。一刻も早くなんとかしてあげないと、状況がどんどん悪化してしまう。

 ……くそっ、せめて中の夕と相談できたら何か良い知恵(ちえ)を――ああ待てよ、その手があったか! もうこれに()けるしかないっ!




【424/449(+1)】


突然の大ピンチ! さて、大地君はどうやって切り抜けるのか!?

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