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【豪華挿絵】月と金星とステラマジカ ~ヒミツの愛情魔法~  作者: 餅餅餅
第8章 月と金星と夜間補講
73/89

冒険録72 妖精さんは妖精さんではなかった!

魔素(まそ)加工技術を極めれば、素粒子(そりゅうし)の配列を――」

『なるほど、そういう視点も――』


 そうしてエリートリケジョの二人がマニア談義(だんぎ)に花を()かせていたところ……


「あっ……ごめんね、パパ、ルナちゃん?」


 夕は置いてきぼりになっていた俺達に気付き、(まゆ)をハの字にして手を合わせた。


「ははは。まぁ夕が楽しければいいさ」

「ままわくわくなのー?」

「う、うん。カレンさんのお話がとっても面白くて、つい?」

『くくっ。(うれ)しいことを言ってくれるね。わたしもだよ』


 こういう話で目を(かがや)かせるところを見ると、やはり夕は学者さんなんだなぁと思う。


『――さて。もう()()けるし、そろそろお(いとま)しないとだ。もう聞きたい事はないかい?』


 スクリーン下の懐中(かいちゅう)時計を見れば十一時前、俺達はともかくお子様妖精さんは()る時間だ。


「あの! さっきはちょっと聞きづらかったんですけど……」

『ふむ?』


 そこで(となり)の夕が()かない顔で切り出すと、


「あたしたちが日本に帰ると……ルナちゃんとはもう、会えなくなっちゃう……ですよね?」


 そう言ってお団子の上のルナを手元に運び、その小さな頭を愛おしげに指で()でる。仮初(かりそ)めながらも母娘(おやこ)として過ごし、すでに別れが(つら)くなっているのだろう。

 だが……もし俺の予想が当たっているなら、それは杞憂(きゆう)になる。


「夕。多分だけど、ルナも一緒(いっしょ)に帰れるんじゃないか?」

「そうなの!?」

『――ほほう』


 夕は嬉しそうに目を輝かせ、魔王様は少し(おどろ)いた後、続けたまえとばかりに鷹揚(おうよう)(うなず)く。


「それはすっごく嬉しいけど……妖精さんが日本に行っちゃったらマズイんじゃ?」

「妖精ならな?」

「えっ、それってもしかして……」


 俺は夕に向かって深く頷くと、ルナを指さしてこう告げた。


「ルナは俺達と同じく、日本から来た人間だ!」

「うっそぉっ!?」


 俺の大胆(だいたん)な予想に夕は驚きの声をあげると、まん丸の(ひとみ)を手元のルナに向ける。


「そうなの、ルナちゃん!?」

「るるる、るにゃは、ようせいなの! ににっ、にんげんじゃないのっ! ほんとだもん!」


 蒼玉色と金色の目(オッドアイ)を愛らしくキョロキョロさせ、大慌(おおあわ)てで()みながら答えるルナ。とても分かりやすい。


「あはは……そっか。えーと、パパはなんで気付いたの?」

「名乗った時に別の名前を言いかけたことや、最初から俺らを知っていたこと、カレンをなーちゃん――()()()と認識していたこと、そのあたりがずっと引っかかってたんだ。夕もだろ?」

「ええ」


 ルナには日本人としての本当の名前があり、なーこ(カレン)とは日本で元から友達だったと考えると、ちょうど辻褄(つじつま)が合う。


「んで俺がピンと来たのは……ルナ、好きな食べ物は?」

「あまあまたまごやき! はんばーぐ! かれー! おれんじじゅーす!」

「――ということだ」

「あぁ~そう言えば……」


 この世界の人は魔法関連を除いて外来語を使わないが、ルナはごく普通(ふつう)に使っていたのだ。さらにこうも典型的なジャパニーズキッズの食嗜好(しょくしこう)とくれば……


「あとね、あとね……おふとゆばのみそしる!」


 ――えっ、今この子、お()湯葉(ゆば)味噌汁(みそしる)って言ったか? ずいぶん(しぶ)い好みの幼女だな!?


『くくっ。ルナ嬢、バレてしまったね?』

「ん~? そーなのー?」


 イタズラがバレた子供のような顔をするカレンだが、ルナはこのやり取りの意味を理解できていないようで、不思議そうに首を(かし)げている。


「あと残る疑問は、俺や夕を知っていたことだが……ルナ、どうしてなんだ?」

「あの、えとえと……ひっ、ひみちゅ……なの……いっちゃだめ、なの……」

「もしかしてお前も――いや、うーん」


 この幼いルナ相手なら、いくらでも情報を引き出すことができそうだが……こんな今にも泣き出しそうな顔をされては、まるでいじめているようで(すご)く気が引ける。

 さらにルナがスクリーンへ飛んで行き裏に(かく)れてしまったので、どうしたものかとカレンに目を向けると、人差し指で小さくバッテンを作って返してきた。詮索(せんさく)はこのくらいにしてあげて欲しい、と言ったところか。


「あいよ、内緒(ないしょ)な」

『よろしですし~♪』


 慧眼(けいがん)なカレンは大局を見てそう判断しているはずだし、今のところは知らなくても問題ないのだろう。時が来れば自ずとというやつで、のんびりと付き合ってあげるとしようか。そもそもの話、ルナが本当は何者だろうと、俺の命を救ってくれた大切な仲間には違いないのだから。




【448/448 (+7)】


第8章も半ばまでお読みいただきまして、誠にありがとうございます。


リア充力やルナちゃんの秘密、とっくに気付いてたぜ! という方もビックリされた方も、ぜひとも【★評価とブックマーク】をお願いいたします。

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