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【豪華挿絵】月と金星とステラマジカ ~ヒミツの愛情魔法~  作者: 餅餅餅
第7章 月と金星と家族風呂
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冒険録63 妖精さんの看護は冷たいぞ!

 夕がのぼせて(たお)れた拍子(ひょうし)に身体を(おお)(きり)が消えてしまったが、アブナイところで魔法を()け直して難を(のが)れた。

 続いてすぐに夕の看病をしたいところだが、のぼせた時は確か……冷たい水を飲み、横になって頭部を冷やす、だったよな? となれば……。


「【凝水(アクア・コンデンス)!】からの……【冷却(コールド)!】」


 魔法で夕の顔辺りの霧を集めて水球にし、合わせてその水温を下げる。それで夕の首より上の霧が消えて顔が現れたので、水球へ念じて口元へと移動させた。


「夕、飲んで」

「んっ、んっく……ぷあぁ、ひえひえ~、んまぁ~」


 水球に口を寄せてちゅうちゅうと美味しそうに吸う夕は、まるで雛鳥(ひなどり)のようであり、加えて熱のせいか口調もゆっくりでたどたどしく……なんとも庇護欲(ひごよく)刺激(しげき)する可愛らしさだ。

 次は頭部の冷却(れいきゃく)だが、頭に直接魔法をかけるのは失敗すると怖いので、冷やした()れタオルを乗せようか。そう思って(たる)から出ようとしたところで、


「ままー、なにしてるのー?」


 (となり)でお湯に()きながら寝ていたルナが目覚め、床で寝そべる夕の前に飛んで行く。


「ん~、ママのぼせちゃったんだぁ」

「おー! るなにまかせるのー!」


 ルナは「んっ!」と力を込めて、全身に銀色の光を(まと)うと、夕のおでこにペチャッと張り付いた。


「んあぁ~、ちめたぁ~、きもちぃ~」

「ままはあちあちー!」

「ありがとねぇ~」


 なるほど、ルナは魔法で身体を冷やして、氷嚢(ひょうのう)代わりになっている訳か。食事の時は透明(とうめい)にもなっていたし、なかなか上手く魔法を使うものだ。俺も娘に負けちゃいられないな。


「ええと確か、動脈に近いところも冷やすといいんだっけ? ルナ、(わき)の下も冷やしてあげて」

「はーいなのー!」


 ルナは張り付いていたおでこからコロンと転がると、首下の霧の中へと飛んで行く。


「んひゃあぁ! ――はふぅ、ちょっとくすぐったいけど、気持ちいいわ」


 夕は冷たさに一瞬(おどろ)いたものの、満足気にしている。口調もしっかりしてきたので、だいぶと回復してきているようだ。

 そこで夕の看病はマジカルフェアリーナースさんにお任せして、俺は先に服を着ておくことにする。夕から見えないように樽から出て、服を仕舞(しま)った(たな)へと向かい、身体を()いてヤスから借りた服を着る。(そで)を通した(あさ)膝丈(ひざたけ)ポンチョは通気性が良く、風呂上がりに丁度良かった。

 続いて先ほどまで着ていた外着を洗濯(せんたく)しておこうと思い、(かご)ごと運んで樽へ中身を投下する。横に()られた『クリーンスクロール』内の魔法陣の中央へサービス魔晶石を当てると、丸い陣の外枠(そとわく)に加えて中央の文様も青く(かがや)いた。試しに洗濯機のように樽の中をグルグルかき混ぜ、少しして中のチノパンを取り出してみれば……骸骨(がいこつ)戦で付いた泥汚(どろよご)れが綺麗(きれい)サッパリ落ちていた。しかも依然(いぜん)と湯は樽底まで()み切っており、どうやら水中の汚れを即座(そくざ)に分解除去しているようだ。……とんでもない洗浄(せんじょう)力じゃね?


(すご)いぞ夕、これ本当に洗濯機だ! しかもめっちゃ高機能!」

「おお~、次あたしも使わせてもらうわね?」


 魔法文明の利器の素晴らしさを伝えると、すっかり元気になった夕は上体を起こしてそう答えた。

 続いて俺が樽から服を取り出し、順番に(しぼ)ろうとしたところで、夕から声がかかる。


「あ、パパ。シワになるから、絞らない方がいいかも?」

「ん? 干す前には絞らないと――あ、魔法で熱風を当てて(かわ)かすんだな? いやぁ、夕もだいぶ魔法生活に慣れてきたな」


 魔法洗濯機の次は魔法乾燥機(かんそうき)――と思いきや、


「んにゃ、気化させるより直接取った方が絶対速いよ?」


 もっと良い方法があるらしい。


「取る……そうか、繊維(せんい)から水を吸い出せばいいのか!」

「そそ。あの便利魔法のdrainだよっ」


 体調が完全に回復した夕は、そう言いながら霧と共に立ち上がると、夕とルナの衣類を棚から樽へと移す。一方で俺は、洗濯した服を床へ並べ、乾いた後にシワができないようにピンと()ばしておく。


「【水吸(アクア・ドレイン)!】」


 詠唱(えいしょう)と共に俺の衣類から水が染み出し、手元で(うず)を描きながら青く輝く水球を形成していく。何度見ても綺麗な光景だなと思う。

 水が出なくなったところで衣類に触れてみると、乾燥機をかけた後のように完璧(かんぺき)に乾いており、加えてシワも全く付いていなかった。……この魔法、マジで便利過ぎでは?


「ふふっ、上手くいったみたいね? んじゃ、あたしのもお願いしていいかしら?」

「任せろ」


 夕のところへ向かうと、すでに洗い終えた衣類が床に置かれてはいたのだが、なぜかブラウス一枚しか見当たらない。しかも何かの上に重ねられているのか、ブラウスの中央が盛り上がっていた。


「えーと、他にも服が下に――」

「まってまって!」


 シワにならないよう全部出して平らに置いておくべきと思い、ブラウスをめくろうとしたのだが、途中で夕に手を(つか)まれた。


「そ、そのぉ、着てたの全部だから……できれば見ないで、欲しいなぁ? いくらパパでも、はずかしいよぉ……」

「全部……――っご、ごめん!」


 要するに全部ということは、言い()えれば全部なので、つまりは全部ということになる。危うく第三次フリフリ危機で危険が危ない大惨事(だいさんじ)になるところだった。




【378/378 (+8)】


はい、少々小難しく申し上げると全部ということになります。

しかしこの構文、便利ですねぇ……。

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