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【豪華挿絵】月と金星とステラマジカ ~ヒミツの愛情魔法~  作者: 餅餅餅
第7章 月と金星と家族風呂
63/89

冒険録62 ヒロインが熱暴走した!

 ヤスお手製ヤッス風呂に入ったヤスを(たる)ごと熱した甲斐(かい)もあり、安々とヤスを追い出すことに成功した。続いて俺も、キケンな夕’s(ゆうづ)樽からお(いとま)しようと立ち上がったところで、


「じゃ、俺も――っおととと」


 右手を下へ引かれ、ゆっくりと元の膝立(ひざだ)ちに(もど)されてしまった。


「……夕?」

「も、もぉちょっとだけ、一緒(いっしょ)に……はいろ?」

「えーと……うーむ……」

「ね?」


 いつもならやんわりとお断りを入れるところだが……ヤスも「今日のお礼」と言っていたし、ここはお願いを聞いてあげるべきだよな。……決して夕の甘々ボイスに(くっ)したわけじゃないからな?


「……少しくらいなら?」

「うふっ、ありがと♪」


 勇気の要る選択(せんたく)だったが、後ろの夕はとても(うれ)しそうにしてくれているので、これで良かったと思おう。

 そうしてまた、キケンな同樽混浴タイムが到来(とうらい)すると……


「……」

「……」


 先ほどまではヤスへの対応で気が(まぎ)れていたが、じっとしていると互いを強く意識して何も話せなくなってしまった。ルナは変わらず静かに()ているので、唯一(ゆいいつ)発せられる天井からの(しずく)の音がやけに大きく聞こえる。……うーん、お願いを聞いてあげたは良いが、これで夕は満足してくれるのだろうか。


「……ね、ねぇっ!」

「おお?」


 そこで夕が急に、緊張(きんちょう)した様子で声をかけてきた。


「そのぉ、パパは今……ドキドキ、してる?」

「ん……それは……」


 当然イエスもイエスに決まっている。ただ、(はた)から見れば幼女と一緒にお風呂に入っているだけなので、仮に正直に答えると、俺はロリコンですと言っていることに……でも「夕だから」と補足するのも気恥(きは)ずかしいものがある。とは言え完全否定したなら、それはそれでレディな夕さんは()ねるような……気も? ええい、どっちが正解なんだ!?


「……それは?」

「……」


 俺が返答に困って(だま)っていたところ、夕がこちらを向く音がし……


「――ちょぉ!」


 なんと背中にピトッと両手を当ててきた。


「きゅっ、急にどうした!?」


 お嬢さん、お(さわ)りは許可していませんが!? 適切な距離(きょり)を保ってご入浴ください!


「えとぉ……触ったら心臓の音聞こえるかなぁ、なんて? でも背中じゃわかんないや…………あそうだ――」

「待った待った! 答えるから!」


 この流れからして、(うで)を前に回して確認する気だよな? そんなことしたら、体勢的に大変なことになるって分かってる? お願いだから落ち着いて欲しいな!


「あーその……ちょ、ちょっとだけ、な?」


 全然全くちょっとどころじゃないんですがね。ペタペタと背中を触られてる今は特にさ。


「ほ、ほんとっ!? そ、そっかぁ、こんな姿でも………………良かったぁ、うふふ♪」


 夕は安心半分の嬉しさ半分と言った雰囲気(ふんいき)であり、どうやら正解だったようだ。

 それで夕は、幼女の姿では一緒に風呂に入っても俺が平然としているのでは、と心配して聞いてきたのだろうか。幼い姿はさておき、中身がこれほど魅力(みりょく)的な女の子はいないし、それこそとんだ杞憂(きゆう)……まぁ、もし姿もお姉さんだったとしたら、それこそとんでもない破壊(はかい)力だった訳だが。何にせよ、夕の自己評価の低さには(あき)れてしまうな。


「あ、えとぉ……もちろんあたしも、だよ?」

「っ!? ――ふ、ふーん?」


 わざわざ報告してくれなくても良いのですが! 聞いたからには自分もと思ったのだろうけど……律儀(りちぎ)過ぎか!


「パパも……確認、してみる?」

「はあぁぁ!?」


 さらに夕から放たれたとんでも発言に、思わず(さけ)んでしまった。

 夕から俺は、万歩(まんぽ)(ゆず)って可としようか。でも逆は、絶対ダメに決まってんだろ!


「あ、ああ、ご、ごめん! ややや、やっぱなしで! あたし、これ以上は気絶しちゃうかも……」


 夕は少し冷静になってくれたのか、すぐに提案を取り消してくれた。


「ったくよぉ……」


 ヤスが居なくなった途端(とたん)、いつにも増してグイグイ来やがる。やはりこれは、ヤスのお節介(せっかい)が効いてやる気ゲージが(ばく)上がりしてしまったのか?


「ぅ……」


 そこで夕はか細い声を()らしたと思えば、


「ちょっと夕さん!?」


 今度は(かた)に頭を乗せてきた。


「…………夕?」


 返事が無い夕を不思議に思い、慎重(しんちょう)に首を回して声をかけると……夕は俺の肩に頭を乗せたまま、少し苦しそうな声を漏らす。


「もしかして、のぼせた?」

「ん……かもぉ……ふわふわするぅ……」


 思い返せば、夕だけは湯船に()かりっぱなしだったし、加えて身体も小さいとなればのぼせるのも早いだろう。……ああそうか、頭が熱暴走(ねつぼうそう)したせいで、やたらと積極的になっていたのかもしれないな。


「急いで上がって(すず)まないと――一人で出れるか?」


 (はだか)の夕を(かか)えるなんてハードル高過ぎだが、もし自力が無理そうなほどの状態なら、恥ずかしがっている場合ではない。


「ん、だいじょび……」


 夕は肩から頭をどけると、後ろで樽から無事に出られた様子。


「はぁ、ふぅ……んわわっ!?」


 そこで夕の叫び声とともに、ビタンと床を打つ音が(ひび)いた。


「大丈夫か!」

「あたたた……んぅ~、お(しり)打っちゃったけどぉ、へいきぃ……」


 そこで安否確認のため、樽の(わき)に倒れた夕を見ようとし……


「それならよかっ――たあぁぁ!?」


 目に映った光景に絶叫(ぜっきょう)することとなった。時間切れのためか倒れた衝撃(しょうげき)のためか、夕を(おお)(きり)が消えてしまっていたのだ。


「【召霧(フォグ)!】【召霧(フォグ)!】【召霧(フォグ)!】」


 俺は即座(そくざ)に目を(つむ)り、大慌(おおあわ)てで霧を()け直す。


「くはっ……」


 夕の胸元へは長い(かみ)が被り、腰より下は樽の死角になっていたので、奇跡(きせき)的にシークレットスリーポイントは死守されたが……もちろん俺の被害(ひがい)甚大(じんだい)! 瑞々(みずみず)しくも少し赤らんだ肌、張り付く美しい蒼黒(そうこく)の髪、腹部から腰部への(なめ)らかなライン、それらが(まぶた)の裏に上映され続けており……ぬぉぉ、誰か魔法か何かでこの脳内映像を消してくれ!


「……んえ、どしたのぉ?」

「ななな、なんでもないぞっ? ハハハハハ」


 熱で朦朧(もうろう)としている夕は、幸いにも霧が消えたことに気付いていなかったらしい。病状も悪化してしまうだろうし、伝えない方が良さそうだ。……そもそも俺にそんな勇気はないがな! 墓まで持っていくぞ!




【370/370 (+28)】

BD版では髪が少し横にずれるかもしれません。

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