冒険録05 クラスメイトが真の姿を現した!
「それで、カレンはナゼここに? ……もしかしてこの騒ぎも、またお前が何かしたのか?」
カレンは本当に悪い事は絶対にしない子だが、何かにつけて策略を巡らしてからかってはくるので……どうにも黒幕臭がしてくるのだ。ちょうど格好も悪魔だしな?
「くっくっ、失礼なことを言うものではないよ? いやなに、この世界の状況説明と、ついでにそこのルナ嬢の通訳でもしてあげようかと思ってね?」
「そ、そうか。すまん」
意外にも普通に助けに来てくれたらしい。黒幕と疑ってしまって、何だか申し訳ないな。
「ありがとなの~、なーちゃん!」
「なーちゃんではない! ――こほん。今はカレンと呼びたまえ、ルナ嬢」
「わかったなの~、かーちゃん!」
「わたしはルナ嬢の母ではないのだが……はあ、もうこの際それで良しとするよ」
肩を竦めて諦めの表情を見せる。完全無欠のカレンでも、無邪気な子供には勝てないらしい。
「――こほん。それではまず基本の確認といこうか。賢いキミ達はすでに推測しているかと思うが、目の前のルナ嬢は紛れもなく妖精であり、ここは魔法といった超常的な力も存在する異世界だ」
「おう」「うん」「なのー」
やはり先ほどの夕の推測は正しかったようだ。
「しかも彼女はただの妖精ではなく、この世界においての特別な存在――『核』と解釈してもらって差し支えない」
「えっ!? このルナ……が?」
「やははー、かくなのー! ……ねーねー、かくってなぁに?」
どうやら張本人の核殿には、全然その自覚はないようだ。……異世界よ、こんな子を核にしてて本当に大丈夫か?
「つまり彼女について良く知ることが、この世界で平穏に暮らすための第一歩と言える。という訳で、色々と尋ねてみてはいかがかな? 多少の通訳サービスをしてあげるから」
「おお、いいのか? 助かるぜ」「ありがとうございます」
「なあに、礼には及ばない。これは熱烈なお世辞への御礼のようなものさ、くくく」
「そ、そうか」「……むぅ~」
先ほどは夕に叱られてしまったが、こうして良い結果に繋がったのならば、頑張った甲斐もあったというもの。
「えーと、それじゃぁ……ルナちゃんは、どうしてあたしの時計の中に居たの?」
「ん~とぉ~……ないしょなの!」
「う、うーん……」
初っ端からの素気ない回答に、夕は眉を顰めてしばし考える。カレンをチラと見ると、指先でバッテンを作られたので、これは教えられない情報という事だ。
「……じゃぁ、ルナちゃんは何がしたい? あたし達にして欲しい事とかあるかな?」
なるほど、行動原理を探ってみようということだろう。
その回答はというと……
「らぶらぶー! あそぼー! なのー!」
だそうだ。
「ごめんねルナちゃん、ちょっと分かんない」
「……翻訳よろ」
これを理解するのは無理だ。専門家に頼むしか無い。
「ふふ、任せたまえ。これはだね……『キミ達の仲睦まじい姿を見ながら、共に熱く胸踊る大冒険を楽しみたい』、そう言いたいのではないかな?」
「「ま?」」
超拡大解釈のガバ翻訳過ぎん? この翻訳担当、本当に大丈夫か?
「うんっ!」
「「まっ!?」」
合ってるらしい……うそやろ。――いや待て、この子の読解力では、カレンの意訳の半分も理解できてないよな? ぶっちゃけ、ただ頷いてるだけじゃね?
「くくっ。幼子は、例え言葉は分からずとも、存外真意を汲み取っているものだよ」
俺の懸念を鋭く察したのか、カレンが先回りで解説してくれた。さすカレ。
「んー、でも突然冒険とか言われてもなぁ」
「だよねぇ」
二人で困り顔を見合わせる。……あとラブラブとやらについては、スルーしとこう!
「まあ、ちょっとした休暇だと思って、異世界生活を楽しみたまえよ。くっくっく」
「いやいや、そんなお気楽な状況じゃなくね? そもそも、ちゃんと現実に戻れるのか?」
「そこは安心したまえ。いずれ終わりが訪れた時、戻れると思ってくれて良い。その際に持ち帰れるものの多寡は、キミ達の努力次第だけれども?」
「終わり? 持ち帰る? どういうこっちゃ…………ま、これも秘密ってやつな?」
カレンは必ず俺が理解できるように話をするので、俺が理解できないということは、教える気がないということだ。
「ふふ、流石はお友達だ。わたしのことを良く理解してくれていて、とても嬉しいよ」
カレンはそう言って優しい微笑みを向けてきた。基本的にひねくれているが、たまにこうして凄く素直なところを見せてくるのがズルい。
「そういう訳で、まずはルナ嬢のご希望に沿って、この異世界を冒険してみてはいかがかな?」
「わーい、ぼーけんなのー!」
「――ちょ、ルナちゃん! ヤメテ!」
カレンの言葉に反応したルナは、夕のサイドテールでターザンごっこをして怒られている。……それなりに仲良くやってはいそうなので、ルナは夕に任せておこう。俺の手には負えないとも言う。
「で、その冒険ってのは……例えばどんな?」
平和な現代日本の街に住む男子高生に、異世界の冒険の何たるかは分かりかねる。まさか漫画やゲームのように、魔物退治の旅に出ろとでも言うのか。
「そうだね……ファンタジー世界らしく、魔王を倒してみては?」
「おい待て、この世界には魔王がいるのか? 物騒過ぎじゃね? 無事に帰れる気がしないんだが?」
「ふふん」
するとカレンは張った胸に手を置き、ドヤ顔で鼻を鳴らしてきた。
「え……マジデ?」
「じゃぁ魔王城でまってるよぉ~♪ ばいび~☆」
自称魔王は陽気にそう告げてウインクすると、背中の翼ではなく、突如出現した肩と腰部のジェットエンジンの噴射で颯爽と飛び去って行った。……そういや機械マニアだったな。
「……」
「……」
ぽかんと口を開けて夕としばし見つめ合った後、俺は両手を広げて天を仰ぐ。
「……やっぱお前が黒幕なんかーーーーーい!!!」
そして、俺の魂の叫びが異邦の地にこだまするのであった。
~ 第一章 金星と月と魔王降臨 完 ~
【10/10(本章での増加量+10)】
第1章までお読みいただきまして、誠にありがとうございます。
外伝新キャラのルナちゃんや、一癖も二癖もある魔王様など、ヒロインズを少しでも可愛いなと思っていただけましたら、ぜひとも【★評価とブックマーク】をお願いいたします。
第2章では、イチャイチャだけでなく手に汗握るバトルシーンもございますので、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。




