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【豪華挿絵】月と金星とステラマジカ ~ヒミツの愛情魔法~  作者: 餅餅餅
第6章 月と金星と豪快店主
53/89

冒険録52 主人公の背後に魔の手が迫ってきた!

 夕とルナのおかげで九死に一生を得た俺だったが、残念ながら完治には至っていないようで、まだ少し足に(しび)れが残っていた。転べばまた心配をかけるので、もう少し座って休んでおくとする。


「団長! ご無事で!」


 そこでホリンの部下と思われる三人が、騎士風の(よろい)をガシャガシャ鳴らして()()んで来た。門番姿の団長よりも立派な装備なのが、何だか可笑(おか)しくなってしまう。


「おう。向こうに転がってる二人、(しば)って連行しとけ」

「ハハッ! 逃げた刺客(しかく)はすでに部下達が捜索(そうさく)しております!」


 そう告げる間にも、後ろの騎士二人が黒装束(くろしょうぞく)達を(なわ)で縛り上げている。


「うむ。やはり副団長は仕事が早いな」

「ホリンさまぁ――コホン。お()めに預かり光栄であります!」


 そうか、俺が死にかけている間に、ホリンが何らかの手段で連絡していた訳か。あとこの副団長さん、(かぶと)で顔は見えないが……女性なのかな? ハスキーな声が一瞬だけ(みょう)に……気のせいか?


「我々はこれにて失礼いたします!」


 副団長さん達が走り去って行くのを見ていたところ、


「――治すのはこの(ぼう)やでして?」

「んなっ!?」


 突如(とつじょ)耳元に女性の声がかけられ、慌てて反対へ()()りつつ()り向く。するとそこには、茶の肩掛(かたか)けローブを(まと)った妖艶(ようえん)な女性が前屈(まえかが)みに立っており、手元の短い杖を向けながら俺を(のぞ)き込んでいた。どうやら一瞬で背後に現れたのか、夕やバコスさんも全く気付かなかったようであり、俺同様に驚愕(きょうがく)の表情を見せている。


「どっ、どちら様で?」

「あら、ピンピンしていますわね。てっきりお亡くなりか、良くて瀕死(ひんし)かと思っていたのですけれど……鳥兜(とりかぶと)の毒で間違いなくて?」


 色々と豊満なその女性は、さらに俺へ顔を近づけて不思議そうにしているが……お願いだからそんな胸元の開いた服で屈まないで欲しい。(すご)く目のやり場に困る。


「おう、その(となり)にいる()らが治した」

「な、なんですって! ……むむむ、確かに毒と魔法の痕跡(こんせき)がありますわ。でもこのような幼い()がどうやって……」


 女性は矢を受けた俺の右腕を杖先でツーと撫でてそう言うと、次いで夕を横目で見て(いぶか)しげに首を(かし)げる。


「なんでルケー、帰っていいぞ。ご苦労さん」


 ホリンが物凄く嫌そうな顔でそう言って、シッシッと手を振ると、


「まあ! まあまあまあ! こんな夜分に(わたくし)を呼び付けておいて、何て(ひど)い言い草ですこと! 『どんな手を使ってでも助けろ』とのご要望通り、土魔(どま)秘蔵の特級触媒(しょくばい)まで用意してきてあげたのですよっ!? 代わりにその口が毒を()かないよう、永久に閉じてあげようかしら!?」


 ルケーと呼ばれた女性は、ホリンの顔に杖を突きつけて文句を(まく)し立てる。こうしてルケーさんが怒るのもごもっともで、流石(さすが)にこのホリンの対応はあんまりだと思う。


「ヘイヘイ、悪かったよ。でも使わずに済んだんだから、別にいいだろ?」

(わたくし)が言っているのは、そういうことではなく……はあ、まったくホーちゃんは……」


 ルケーさんはヤレヤレと首を振っているが、何故(なぜ)かそこまで腹を立てていないようにも見える……ような?


「――まあ良いですわ。ですが、もちろん貸しにしておきましてよっ?」

「ちぃっ……わぁってるよ! ほら、後は水槍(すいそう)に任せてアンタはさっさと帰ってくれ!」

「んまっ、言われずともお(いとま)いたしますわ」


 そこでルケーさんは(するど)い目で夕を一瞥(いちべつ)し、


「……でもその()、きちんと調べておきなさいね?」


 そう言いながら手元の杖で宙に素早く五芒星(ごぼうせい)を描く。すると足元に黄土色に(かがや)く大きな五芒星が現れ、「ごめんあそばせ」の言葉と共にその姿が一瞬で()き消えてしまった。まるで物語に出てくる魔女のようだが、言動はとてもお上品……お嬢魔女?


「だはあぁぁぁ~~~」


 ルケーさんが消えた途端(とたん)、ホリンから盛大な溜息(ためいき)()れ出る。


「あの方が、土間騎士団の団長さんですね?」

「んむ……刺客(しかく)と戦うよりよっぽど(つか)れるぜ」

「あはは……」


 ああ、ホリンの天敵でいじめっ子の女性(ひと)か……道理で対応が超トゲトゲしくもなる訳だ。でもさっきの会話からすると、そこまで苦手な人に頼んでまで、俺を助けようとしてくれたんだな。


「……あー、それでユウヅよ……あのダイチを治した黄金の光は、魔法……なのか?」

「えっ!? あ、の、それわぁ……」


 ルケーさんからの流れで始まったホリンの事情聴取(ちょうしゅ)に、夕はおろおろしながら俺を見てきた。願いの力はこの世界の魔法とは全然違うもののようだし、正体不明の魔法を使う危険な(やから)と思われてしまっては困る。しかも、騎士団長達は日本で言えば警視総監(けいしそうかん)のようなもので、最も(あや)しまれるとマズイ相手だろう。


「――あ、いや、言いたくなかったら別にいい!」

「……いい、のか?」

「そりゃ王都を守護する者として知っておくべき案件ではあるし、あの女にも(くぎ)()されたが……それで命の恩人のアンタらをどうこうするような薄情(はくじょう)者じゃねぇさ」

「え、でも――」


 詮索(せんさく)されないのは助かるのだが……ホリンは公私の区別をしっかり付けるタイプなので、そこを情で曲げてしまっても良いのだろうか。それに後でルケーさんに(しか)られてしまうだろう。

 そう不思議に思ったところで、ホリンが「まぁ続きを聞け」と言わんばかりに手の平を向けてくる。


「それを抜きにしてもな? 会ったばかりのオレを命張って助けてくれるような、バカが付くほどお人好しなダイチとその妹が、その不思議な魔法で悪さなんて絶対するはずがない。それが騎士団長であるオレの見立てであり……オヤッサンも、だよな?」 

「ガッハッハ、ちげぇねぇ! 坊主(ぼうず)に続いて小僧(こぞう)まで救っちまったからなぁ!」

「ホリン……」「バコスさん……」


 力について(とが)められなかったことよりも、ホリンとバコスさんから信頼(しんらい)してもらえていることが、とても(うれ)しく感じる。


「ま、あの女には、オレが上手く言ってなんとか…………なるかなぁ? ――いや、なんとかする!」


 そう叫んだホリンは、まるでドラゴンに立ち向かうかのような勇ましくも険しい表情であり、本当にルケーさんが苦手なのだろう。俺にとっては、和解する前のカレンのようなものか。


「やっぱり素直さって大切よねぇ」

「ガハハ、ちげぇねぇナ」


 そこで夕がボソッと(つぶや)き、バコスさんはグッと親指を立てるのだが……意味の分からない俺とホリンは首を傾げる。


「だからテメェは小僧なんだよ!」「うふふ。にぶちんのお兄ちゃんらしい」

「「ええ……」」


 そして、にぶちん小僧の不名誉(ふめいよ)を授かった俺達二人は、顔を見合わせて(かた)をすくめるのであった。



【240/240 (+3)】


これはまた面白い恋模様が見られそうですね。

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