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【豪華挿絵】月と金星とステラマジカ ~ヒミツの愛情魔法~  作者: 餅餅餅
第6章 月と金星と豪快店主
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冒険録48 妖精さんが消えてしまった!

 そうして三人ときどきヤスでバコス焼きを(かじ)りつつ話に花を()かせていたところ、ホリンがクリウスさんとの商談バトルについて聞きたがったので、一部始終を話してあげた。


「そうかぁ~、あのクリウスがなぁ! くっそぉ~、オレもその(あわ)てふためく顔見たかったぜぇ……あいつには昔まんまとやられてなぁ! ダイチも危ないとこだったんだろぉ?」

「ええ、そうですね」

「そんでオレが文句言ったらなぁ、『ホリンはんがこれでええちゅうたんやさけ、後からなんぼ言われてもあきまへん』だとよ! あ~~、思い出しただけでも腹が立つ! なぁ!?」

「ええ、そうですね」

「つってもまぁ、金にはガメついが、根は悪いヤツじゃねぇ……ユウヅもそう思ったんだよなぁ?」

「ええ、そうですね」


 ホリンはだいぶ出来上がっているようで、平常時よりかなり饒舌(じょうぜつ)だ。夕が完全に相槌(あいづち)担当に……とは言っても(いや)がってはおらず、普通に楽しんで話を聞いている。


「――にしてもよぉ、ユウヅはほんと大した子だぜぇ、いやぁスゴイっ! クリウスのやつが勧誘(かんゆう)するのも分かるってもんだ! オレも妹に欲しいくらいだなぁ!」

「も、もぉ~ホリンさんってば……飲み過ぎですよ?」

「んなことは~ないぞぉ? まだまだ飲みたりねぇ!」


 なるほど、これが世に聞く(から)上戸(じょうご)というやつか。


「おいダイチ! アンタも兄として鼻が高いだろぉ?」

「え、俺?」


 今度は俺が絡まれてしまった。


「だろぉ?」

「ん……そうだな!」

「だろぉ!」


 本当は兄ではないが、夕を自慢(じまん)したくなる気持ちは大いにある。夕が他人(ひと)(ほめ)められると最高に(うれ)しいし、今も口元が(ゆる)むのを我慢(がまん)しているくらいだ。


「ちょっ、お兄ちゃんまで!? 身内自慢なんて()ずかしいからヤメテよね!? ……そりゃぁ、そう思ってくれてうれしいけどぉ……ごにょごにょ」


 夕は(ほお)()めて両人差し指をツンツンさせ、何やら(つぶや)いている。


「――ん?」


 そこで、俺の胸ポケットが突然(とつぜん)モゾモゾしだして――マズイ、ルナ(眠り姫)が起きたか?


「ふわぁ~おはよ――っわぷ」


 案の定とルナが胸ポケットから飛び出そうとしたので、慌てて手の中に(つか)まえる。


「ん~、いま何か……」

「気のせいじゃ?」


 ホリンは目を(こす)ってこちらを見ているが……すぐに自分のジョッキへと視線を(もど)した。()(ぱら)って見間違えたと思ってくれたようだ。

 俺は後ろを向いて夕と肩を寄せ、包囲した状態でそっと両手を開く。


「(ルナちゃん、もぉちょっとだけ大人しくしてて欲しいな?)」

「(えー! ままとぱぱ、おいしそーなのたべてたのー! ずるいのー!)」


 姿を見られてはいけないと一応は理解しているようで、小声で話してはくれるものの……それはさておきご飯食べたい、とのことらしい。不死身なので餓死(がし)はしないはずだが、食欲があるとなれば腹ペコのままは辛かろう……とは言え、テーブルに出す訳にもいかない。


「(まだお店に人がいるから、我慢して、ね?)」

「(むぅ~~! いいもん! 【るなきえる!】)」

「「!?」」


 その瞬間、本当にルナの姿が消えて無くなった。


「えっ、うそうそ、ルナちゃん!? どどど、どこいったの?」


 すると夕は半分パニックになってしまい、愛娘(まなむすめ)を探しておろおろと両手を胸の前でふらつかせている。


「……どしたぁ?」

「えと、場の空気に当てられて酔ったんかな?」

「そうかぁ。ユウヅも()みゃぁいいのになぁ」


 幸いにも、へべれけホリンはあまり気にしていないようだ。


「(夕、落ち着けって。身体が透明(とうめい)になった、とかじゃね?)」

「(あ、そっか……)」


 ルナ自身も願いの力を使えるのだから、ルナが透明になれると思ったのなら、きっとなれるはずだ。


「――っんひゃあぁ!? っおっほん、なんでもないですわよぉ~?」


 そこで突然夕が耳を()さえて可愛い悲鳴を上げ、大慌てで誤魔化(ごまか)している。


「(るなだよぉ~♪)」

「(んもぉっ!)」

「(いひひ~♪)」


 どうやらステルス妖精さんが夕の耳にイタズラしたらしい……困ったお転婆(てんば)娘だ。ただまぁ、この状態なら多少自由に動いても大丈夫か。


「(ルナ、静かに食べるんだぞ?)」

「(はーいなのー)」


 それで妖精と言えば(ちょう)のように花の(みつ)を吸っているイメージがあるが、うちの子は何を食べるのだろうか。そう思いつつテーブルを見ていると……俺のジョッキ内の(むらさき)の水面が()れ始めた。お求めはブドウジュース、果実水も花の蜜のようなものだしな。

 続いて、バコス焼きに乗っていた小さな肉片がコロンと転がり……徐々(じょじょ)に体積を減らしていった。うちの子は肉もいける口らしい……結構ワイルドな妖精さんだな。

 そして最後にブドウジュースに再度立ち寄った後、


「(むふー! おなかいっぱいなの~)」


 ルナは満足げにそう言って胸ポケットに(すべ)()むと、透明魔法を解いてくつろぎ始め……やがて船を()ぎだした。うむ、子供はよく食べよく(ねむ)れ~。


「(うふふ。パパの胸ポケット、完全にルナちゃんの寝床(ねどこ)になっちゃったね)」

「(はは……こんなとこでよけりゃ、いくらでもどうぞってな)」

「(おお~、あたしも小さくなれたら入るのになぁ~――の前に……)」

「(ん?)」

「(うふっ、な~いしょ♪)」


 首を(かし)げる俺に向かって、夕はその(つや)やかな(くちびる)に人差し指を当てると、クスクスと楽しそうに笑うのだった。




【210/210 (+4)】


ルナちゃんは身体が小さく消費も少ないので、イメージさえできれば大抵のことはできます。

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