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【豪華挿絵】月と金星とステラマジカ ~ヒミツの愛情魔法~  作者: 餅餅餅
第6章 月と金星と豪快店主
46/89

冒険録45 ヒロインには禁酒令が出されていた!

 バコスさんとホリンの後に続いて、俺は人生初の居酒屋――ではなく酒場へと足を()み入れた。

 店の隅角部(ぐうかくぶ)にあたる入り口から見渡(みわた)せば、店内は正面方向へ十mの左手方向へ十五mほどと結構広く、四m以上はある天井は一般家屋よりも高めだ。正面(すみ)にはバーカウンター、その左隣(ひだりどなり)に簡易ステージと暖炉(だんろ)、そして左手最奥には二階へ続くL字階段が見える。また、四~六人()けで木製の長机と長椅子(いす)が八組ほど並んでいるが、すでに半分以上の席が埋まり、客達が木製ジョッキ片手に歓談(かんだん)している。そうした店内を古い赤煉瓦(れんが)(かべ)沿いに掛けられたランプが暖色光で照らしており、(にぎ)やかながらもどこか落ち着いた雰囲気を醸し出していた。


「――ふわぁ~、とっても素敵なお店! 外観だけじゃなく内装も(すご)くお洒落(しゃれ)ですし、お客さんも楽しそうに(くつろ)いでて……まさに(いこ)いの場ですね!」

「ハッ、こんなめんこい嬢ちゃんに手放しで()められるたぁ、(わし)の店も捨てたもんじゃぁねぇナ?」


 隣の夕がほぼ真上を見上げて店の感想を伝えると、バコスさんは指で鼻をこすってニヤリと笑う。……それにしても、夕と並ぶとバコスさんの巨体が増々大きく見えるな。夕は身長百三十㎝強なので、俺だと胸下くらいに顔がくるが、バコスさんだと腰元というね。


「儂は厨房(ちゅうぼう)でオメェさんらの歓迎(かんげい)飯を作ってくらぁ。酒が欲しけりゃ坊主(ぼうず)に言ってくんナ」


 バコスさんはセカセカとフロア業務に従事するヤスを指差すと、カウンター奥の厨房の入り口で頭を少し引っ込めて、(せま)そうに(くぐ)って行った。

 そこでホリンが入り口(わき)の席へ壁を背に座ると、(やり)を右手側の壁へと立て掛けた。合わせて俺と夕も対面の長椅子に腰掛ける。


「いつもの席なんだ」

「…………店内を見張りやすい?」


 そのホリンの位置からは店内の様子を一目で確認でき、加えて壁に立て掛けた槍を一瞬で手に取ることができる。それで職業柄(しょくぎょうがら)この席を好んで使っているのだろうとの予想だ。


「ふっ、ダイチもやるねぇ。ま、あんたらの背はオレが見といてやるから安心しな」

「そりゃどうも……」


 まさに常在(じょうざい)戦場(せんじょう)、騎士団長(けん)門番殿(どの)は実に仕事熱心なことだ。

 それでホリンに習うという訳でもないが、ふと真後ろの席を見てみると、比較的(ひかくてき)身なりの良い男三人が談笑していた。()め事を起こすヤンチャなタイプには見えないので、ホリンに(たよ)らずとも背後の心配はなさそうだな。


「――さ、まずは一杯だ。オレは麦酒にするけど、ダイチも同じでいいか? ユウヅは……まだ早い気もするが、折角(せっかく)だし一緒にどうだ?」

「「え?」」


 二十歳(はたち)も近い俺はまだ分かるが、いくらなんでも夕に酒を(すす)めるのはおかしいだろう。


「……あのぉ、この国では何(さい)からお酒を飲んでいいんですか?」

「ん? そんな決まりはないし、()いて言うなら身体が受け付けるようになったら、か? オレの場合は、オヤッサンに付き合って十四くらいからだったか。まぁ最初は不味(まず)くて仕方なかったけどな、ハハハ」

「そう、ですか……」


 ヨーロッパには十六歳あたりの国もあると聞くし、年齢(ねんれい)制限はその国の文化次第なのだろう。そうなると、(ごう)()りては郷に従えとも言うし、飲んでみるのもアリかな? ただ、夕の方はいくら何でも飲まないだろうと思いつつ、隣を見てみると……え、めっちゃ(なや)んでるし!


「……夕、もしかして飲みたいのか?」


 すると夕はビクッと(かた)()らして(おどろ)くと、次いで俺の(そで)を引っ張って耳打ちしてきた。


「(あのねパパ、実はあたしお酒すっっごく好きなの。特に日本酒とワインが大好きで、いくらでも飲めちゃう)」

「(お、おお。そりゃ二十歳だった訳だし、お酒くらい飲むよな)」

「(うん。なんだけどね……なんかあたしお酒飲むと『スゴイ』らしくてさ? 向こうのパパに『お願いだから俺の居ないところで絶対に飲まないでください!』って必死に懇願(こんがん)されちゃったのよねぇ……それで約束したの)」

「(おうふ……)」


 夕はまさかの酒乱(しゅらん)幼女(ようじょ)だった――いや、飲兵衛(のんべえ)だった時は幼女じゃないけどさ!? 

 それでその「スゴイ」とやらがどうスゴイのか、とても気になるが……とりあえず飲まない約束をしているなら大丈夫だな。夕は特に俺との約束は絶対に守る子だし、うん。


「(――でも、同じパパの前ではある訳だし、約束を破ることにはならないよね……? ということで飲んでもいっかな?)」


 だあぁもう、そう来たかぁぁ!


「(いやいや待て待て、そういう問題じゃない!)」

「(むぅ~?)」


 そんな不満そうに(くちびる)(とが)らされても困る。泣き上戸(じょうご)(から)み上戸かは分からないが、少なくともこの状況(じょうきょう)で俺が酒乱幼女に対処できる気が全くしない。何とかして説得しなければ!


「(あー、あれだ。そもそも年齢制限は未成長の身体に負担が掛かるからもあるし、いくら中身が二十歳でも身体が十歳じゃマズイだろ?)」

「(ぐぅ……そ、そうよね……()()の身体でもあるもんね……ぐにゅぅ、またしてもこの身体のせいでぇぇ!)」


 夕は物凄く残念そうにしつつも、一応は納得してくれたようだ。そもそも普段(ふだん)の夕なら自分で気付く話だが……ったく、お前はどんだけお酒飲みたいんだよ!

 ちなみに「ゆづ」とは、未来の夕が移動先としたこの十歳の身体の本来の持ち主――つまり現在を生きる天野(あまの)夕星(ゆうづ)の呼び名だ。それで夕は定期的にゆづへ意識を渡す必要があるのだが、俺がゆづの方に会ってしまうと夕達の命に関わるという厄介(やっかい)爆弾(ばくだん)(かか)えている。この世界でのゆづの状況については、夕があえて()れてこない以上は問題ないのだとは思うが……落ち着いたら確認しないとだな。


「――で、何にする?」


 内緒(ないしょ)話を待ってくれていたホリンが、頃合いと見たかオーダーを聞いてきた。

 それで俺はどうするかだが……飲みたいのを必死に我慢(がまん)している夕にすごく悪い気がするので、初飲酒はまたの機会にしておこう。


「待たせてすまんな。俺と夕はお酒以外にする」

「え、ダイチもか?」

「ああ、実は下戸(げこ)でな。悪いけどホリンだけで楽しんでくれ」

「そうかぁ、残念だが下戸じゃ仕方ないな。いつも通りヤッスと飲むとするか」


 なにぃ、ヤスは飲酒経験済みと……そりゃ酒場で働いてたら自然とそうなるか。くっ、ヤスが先に大人になったようで、少し(くや)しいな!




【204/204 (+3)】


へべれけ幼女が見たい人~!

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