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【豪華挿絵】月と金星とステラマジカ ~ヒミツの愛情魔法~  作者: 餅餅餅
第6章 月と金星と豪快店主
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冒険録43 主人公達は王都の地図を手に入れた! (挿絵有)

 発行手続きを終えて階下に降りると、すでに辺りは(うす)暗くなっていた。城門(わき)松明(たいまつ)には火が灯されており、電灯にはない暖かな光が辺りを照らしている。城門には先ほどの門番達が街側に一人、外側に二人立って警備しており、(はば)奥行(おくゆ)きが五m程もある城門となればやはり三人は必要なのだろう――ホリンが例外なだけで。

 その街側の門番が俺たちに気付いて敬礼したところで、ホリンが片手をあげて挨拶(あいさつ)する。


「お(つか)れさん。オレはあがるから、あとよろしくな」

「はい! ホリン様のご自宅でもありますから、命に()えても門を死守いたします!」

「おいおい、そんなヤバイ状況(じょうきょう)になったらオレをすぐ呼べっての。多少()っぱらっててもお前らより戦えるぜ?」

「それはもちろんでございます。ですが折角ホリン様がお(くつろ)ぎのところを――いえっ、(おお)せのままに!」


 途中(とちゅう)でホリンが(にら)むと、門番は敬礼して答えた。部下――ではなく同僚(どうりょう)にも過労を心配されているようだ。

 そうして腹ペコヤッスの先導の元、四人で歩き出したところで、


「ふふっ、お優しいんですね。これは(みな)さんが敬意をもって(した)うのも分かります」


 夕が(うれ)しそうに(となり)のホリンへ話しかけた。


「おおお? そう言われると照れるぜ。――ま、あいつらも精鋭(せいえい)だし、滅多(めった)なことはないだろうがな」


 ホリンの言う通り、三人とも随分(ずいぶん)と引き()まった身体をしており、一つ一つの所作がとてもキビキビしていた。それなりに武術を(たしな)んでいる俺は、三人が毎日相当の訓練を積んでいると察したのだが……


「そうなん? 全然強そうには見えんかったけど……めっちゃヘコヘコしてたし?」


 ヤスには感じ取れなかったようだ。


「ばっかやろう! 五門を任される門番が弱い訳ないだろうが!」

「お、おお。そうなん?」

「ったく、ヤッスにも分かるような話をするとだな……以前に武装した野盗(やとう)十数人が深夜に侵入(しんにゅう)しようとしてきたが、オレを起こすまでもなく三人で難なく処理してた。地の利はあるにしても、相当の実力と連携(れんけい)がないと勝負にならん人数差だ。……お前なんかそれこそ秒で転がされるぞ?」

「ちょ、まじかぁ……門番は(おこ)らせないように気をつけよっと……」


 それでホリンはその精鋭三人分より(はる)かに強いと……ハハハ、最初にちょっと対応間違(まちが)えてたら俺死んでたな!



   ◇◇◇



 そうして雑談しつつも、俺たち四人は南へ()びる大通りの中央を横並びで歩き、ヤスの酒場へと向かう。


「ほんと立派な道よねぇ~」

「ああ。王都前の街道といい、大したもんだよな」


 目の前を真っ直ぐどこまでも続く道は、幅二十mはある石畳(いしだたみ)の大通りであり、きっとここが王都の目抜(めぬ)き通りなのだろう。もちろん日本にはもっと広い道路がいくらでもあるが、そのど真ん中を悠々(ゆうゆう)と並んで歩くなんてできないし、なかなか新鮮(しんせん)な感覚だ。俺たちの周りにはチラホラと人が行き交っており、よく見ると農具を持った人が多いが……そうか、農地が城壁(じょうへき)の外側となれば、城壁のすぐ内側に農家が集まるのは道理だな。


「ふふっ、滑走路(かっそうろ)みたいね? 綺麗(きれい)だわぁ~」

「ん? おお、たしかに」


 道の両端(りょうはじ)には、胸高さ程の篝火(かがりび)等間隔(とうかんかく)()かれており、黄昏(たそがれ)(どき)薄暗(うすぐら)い道を(ほの)かに照らし出している。その橙色(だいだいいろ)の光が(はる)彼方(かなた)まで延々と並んでいる様子は、夕が例えるようにまるで滑走路だ。

 そこで夕が篝火に興味を()かれたのか、ちょこちょこと近寄って行ったところで、


「ねねね、パ――お兄ちゃん! みてみてぇ、脇に水路があるよ!」


 子供のようにはしゃぎながら俺へ手招きする。呼ばれて夕の隣に立ってみれば、路面から二mほど下に幅五mほどの水路があることに気付いた。


「……ほんとだ。小舟まで()まってるな?」

(ほり)の水を一部引いてきて、生活用水や水運に使ってるのかしら? そうなると街の中が水路で(つな)がってる……はず?」


 夕と少し立ち止まっていたところ、二人が近寄ってきた。


「おう、ユウヅの予想通りだ。王都は五つの大門から中央の王宮に向かって大通りが伸びてて、今歩いてるのは『水の大路(おおじ)』。んで五本の大路の両脇には大水路があって、王宮を囲む内城壁の堀に繋がってる。――そうだ、折角だしこの簡易地図をやろう」


 ホリンはそう言って(ふところ)から羊皮紙を差し出したところで、


「旅人よ、ようこそ王都ギャラックへ! ってな?」


 右手を胸にお辞儀(じぎ)すると、最後にウインクしながらニカッと笑った。その一連の動きが実に(さま)になっており、美形顔なのもあって()()れするほど格好良い。


「ありがとう」「とても助かります」


 受け取った地図を篝火に照らし見れば、都市の外形に主な通りや水路が描かれていた。都市全体が幾何学(きかがく)模様(もよう)のように整っていて非常に美しく……五角形と形状は違うが、京都の碁盤(ごばん)状の街を想像させる。

挿絵(By みてみん)


「すっごぉ、完璧(かんぺき)な計画都市じゃないの……ここまでのは現代日本でも無いわ」


 夕は目を真ん丸にして(おどろ)くと、そう(つぶや)いた。たしかに、この規模の都市を計画通り造るということが、どれほど大変な事業になるか想像もつかない。


「ちなみに今向かってる酒場はここな」


 羽ペンを持ったホリンが、城壁から一本目の区画路と水の大路の交差点の南東角に「バコス」と書き込んでくれた。きっと酒場の名前がバコスなのだろう。あとどうでもいいが、結構字がキタナイ……やはり書き物は苦手らしい。


「それで、防衛上から王都外へは無理なんだが、王都内なら水路を伝っての移動もできる――観光用の小舟なんかもあるぞ?」

「「おお~!」」


 船で街中を観光、まるでヴェニス気分だな――俺は行ったことないけど。


「ああ、素敵だわっ! この水路も、お昼だともっと綺麗なんだろうなぁ~…………ね、お兄ちゃん?」


 夕が上目遣(うわめづか)いでこちらをチラチラ見てきたので、


「夕、えーと………………い、一緒(いっしょ)に乗ってみるか?」


 求められているだろう答えを返してみる。もちろん、夕と一緒に乗りたいのは本心だ。


「やったぁっ! 明日は水上デートだねっ♪」

「ちょ! そういう意味じゃ……」

「え~? じゃぁどういう意味~? ねぇねぇ、教えて欲しいなぁ~? にしし」

「ぐぅ……」


 夕は(こぶし)を口元に当ててニヤニヤしながら、後退る俺に()め寄って下から(のぞ)き込んでくる。いつにも増して上機嫌(じょうきげん)のご様子だ。


「……あー、そこのイチャついてるお二人さん? ()かれ過ぎてうっかり落ちんなよ? ――ぶっちゃけ僕は一回落ちてるからねっ!」

「イチャついてねぇっての!」

「あら、そうなの?」

「ちょぉ、夕……」

「――ハイハイハイ、ぼかぁもうお腹いっぱいだっての! 物理的には腹ペコだけどさっ!?」

「ハハハ、ユウヅも兄の前ではすっかり甘えん坊になるんだな。仲のいい兄妹で結構なことだ、ウンウン」


 ホリンは温かい目をしながら(うで)を組んで頷いており、クリウスさんとは違って兄妹設定をちゃんと信じてくれているようだ。助かります。


「……ホリンよぉ」

「ん?」

「こういうのニブイよなぁ……こんな分かりやすいのに……」

「んんん?」


 ヤレヤレと(あき)れて歩き出すヤスに、ホリンは首を(かし)げながら後を追う。ヤスが呆れる側というのは、実に(めずら)しいパターンだなと思うのだった。




【200/200 (+1)】


ホリンも大地君と同じくらい鈍感のようですね。

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