冒険録40 門番は門番ではなかった!
俺たちは行商人クリウスさんとの商談の末、魔晶石を金貨二十五枚(≒二百五十万円)で売却し、後払い分を除いた金貨十枚を入手することができた。これで俺と夕の住民札を購入すれば、大手を振って王都の中へ入れるはずだ。
それで俺たちは、早速と跳ね橋を渡り、門番のホリンさんが立つ城門中央へと歩み寄る。すると丁度出入りする人が何人か居て、ホリンさんは札を改めたり手早く道案内をしたりしていた。その手際良い仕事や通行人に向ける快活な笑顔からは、ただ城門を護るだけではない、都市の玄関口に立つ者としての意識の高さを感じる。
通行人が居なくなったところですかさず近寄ると、住民札二人分の発行料となる金貨四枚を手渡す。
「ホリンさん、発行料を用意してきました」
「うおっ、アンタらもう貯めてきたのか!」
するとホリンさんは受け取った金貨を見て、目を丸くしながら感心している。
「――あ、さてはクリウスのヤツに色々売ってきたか? ハハッ、アイツもワルだなぁ~」
「うふふ、そんなことありませんよ? どこまでも商人らしい、とても気骨のある方でしたわ」
「…………ほぉ、こいつは面白れぇ」
ホリンさんは驚いた表情をし、興味深そうにしげしげと俺達を見つめる。どうやら俺達が足元を見られて買い叩かれたと思ったようだが、夕の含みのある発言と笑顔で何かを察したらしい。
「――が、その話は酒の肴に取っとくとして、まずは札の発行だな」
「「お願いします」」
ホリンさんは城門の外に通行人が居ないことを確認した後、脇に置かれていた木製の立て札を手に取り、城門中央の地面に勢い良く突き立てた。そこには、『ここでしばし待たれよ。無断で通過した者は命がないと思え』と物騒な事が書かれている。また、看板全体が薄っすらと光を放っており……近くに人が来たことを知らせる魔法でも、掛けられているのだろうか。
「さ、こっちだ」
ホリンさんが手招きし、城門の内側から続く石階段を上がり始めたので、三人で後に続いて登っていく。外から見た構造からすると、城門の上に位置する高い塔の中へと繋がっているのだろう。
たどり着いた二階は直径七mほどの部屋であり、中央に作業机と椅子が置かれ、ぐるりと壁伝いに棚が敷き詰められていた。また、机の奥側にはホリンと同じ格好の兵士が三人座っており、羽ペン片手にせっせと仕事に勤しんでいる。
「――っ、ホリン様!」
俺達に気付いた兵士達が慌てて立ち上がるや否や、背筋を伸ばしてホリンさんへ敬礼する。……ホリン、様? 三人は同僚の門番で、ホリンさんは上司――にしては態度が少々大げさな気もするが。
「そちらの方々は?」
「札の発行だ」
「かしこまりました。では手続きは私どもに任されてホリン様はお戻りに――」
「いや、オレがやろう」
「……よろしいのです? その、ホリン様は事務作業があまりお好きでは――」
「ああ、こいつらに興味があってな?」
「ええと……はい! 仰せのままに!」
一瞬不思議そうにした三人だが、すぐに納得して駆け足で階下へと降りて行った。
「ま、座んな」
俺たちが呆気にとられる中、ホリンさんが鉄兜を置いて机の奥側の椅子へドカッと座ったので、俺と夕は指示通り手前の椅子に座る。ヤスはホリンさんの隣の椅子に座ると、
「おいおいホリンよぉ、今のホリン様ってのは何だよ? 門番の間じゃそういう遊びが流行ってんのかぁ?」
その肩を鉄鎧の上からパンパン叩いてからかい始めた。俺も凄く気になっていたので、聞いてくれたのは助かるが……あれは遊びって雰囲気じゃなかったぞ? 大丈夫か? 怒られない?
「んまぁ、これでもこの国の騎士団長の一人なんでな。門番の時は同僚みたいなもんだし、楽にしてくれって言ってんだが……アイツらぜんっぜん聞きやしねぇ、ハハハ」
「騎士団長!?」「うわわわ!」「マジでぇ!」
先ほどの一分の隙もない槍の構えや全身から溢れ出す覇気から、ただ者ではないとは思っていたが……まさかの騎士団長様だったとは! うっかり戦闘に発展しなくて本当に良かった! ……それにしても、何故門番をやっているのだろうか? 本当に謎な人だ。
【願いの力:185/185 (+0)】
なんで門番なんかやってるんでしょうねぇ。




