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【豪華挿絵】月と金星とステラマジカ ~ヒミツの愛情魔法~  作者: 餅餅餅
第5章 月と金星と文無一行
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冒険録36 野生の行商人が飛び出してきた!

 まさに言葉通り門前払(もんぜんばら)いを食らった俺たち文無(もんな)し一行は、ひとまず橋の手前まで(もど)って作戦会議をすることにした。


「この魔晶石(ましょうせき)靖之(やすゆき)さんに預けて、街で売ってきてもらうのはどうかしら?」

「あー、お使い自体は別にいいんだけど、こんな時間に買取屋開いてるかなぁ……?」

「そっかぁ、そうですよねぇ……」


 現代日本と違い、遅くまで店が開いていないのだろう。


「あっ! 大地らが魔法使って気合で(かべ)()えたらどうだ? 中に入りさえすれば、札なんか関係ないし? どうよぉ?」


 そこでヤスが、良いことを思いついたとばかりにドヤ顔で提案してきた。


「いやいやいや、もし侵入(しんにゅう)を察知する魔法とかあったら(そく)お縄だろうが! んなリスク負うくらいなら野宿した方がマシだ!」

「おおお、確かにそんな魔法もあるかも? うん、ダメだな!」

「ったくよ……」


 ヤスは後先考えずに行動しすぎるところがある。それで割と上手く行くこともあるのが不思議だが、これについては流石(さすが)に危険すぎる。異世界初日でムショ行きは勘弁(かんべん)だ。

 そうして三人で頭を(ひね)っていたところ……


「――そこのお兄はん」


 突然(とつぜん)後ろから声をかけられた。

 ()り返ると、顎髭(あごひげ)(たくわ)えた恰幅(かっぷく)の良い二十代ほどの男が、手揉(ても)みしながらニコニコと笑顔を向けていた。


「銭がのうて入れてもらえへんかった……ちゃいまっか?」

「ええ、まぁ……」


 どうやら、俺達の門でのやり取りを見られていたようだ。これは()ずかしい。


「そらおツライ話でんな! ……何かお値打ちもんお持ちなら、特別に(たこ)う買い取りまっせ?」


 男は大仰(おおぎょう)に両手を挙げると、近くの(ほり)の横に()えられた四角いテーブルを指差す。その(わき)に立てられた木の板には、『買い取り屋 チャージ費用にどうでっか! 魔晶石:D級銀貨一枚~、C級銀貨十五枚~!』と書かれている。……なるほど、こうしてお金が無くて入れなかった通行人にすかさず声をかけて、商売をしている訳か。


「そうですね……ちょっと待ってください」


 まさに渡りに船のありがたい申し出だが、どうにもこのコッテコテの関西(かんさい)(べん)(あや)しさを感じてしまう。まずはブレインの夕と相談だ。


「(ちょっと胡散(うさん)(くさ)い商人だけど、売ってみるか?)」

「(んー、お金に困ってるって知られてるから買い(たた)かれそうで(こわ)いけど……もう日も半分(しず)んじゃってるし、とにかく中に入るのが最優先よね。まずは査定だけでもしてもらおっか?)」

「(よし)」


 夕と内緒(ないしょ)話をして方針を確認すると、ポケットに入れていた骸骨(がいこつ)産のレンチン魔晶石を取り出し、商人に向き直って声をかける。


「すみません、一つ見てもらえますか?」

「おおきに! ほなこちらへ、さささ~」


 商人は営業スマイルを浮かべると、スルリとテーブルの奥側へと回る。続いて大きな背嚢(はいのう)を降ろして横に置くと、椅子(いす)に座って両手を出してきた。


「これなんですが……」


 俺はランプや天秤(てんびん)が置かれたテーブルの前に立つと、魔晶石を商人の両手に乗せる。


「んっ? お兄はん、なんぼ銭に困っとるちゅうても、ガラクタは買い取りでけへ――っなぁ!?」


 商人は(しぶ)い顔をしたかと思いきや、手元の魔晶石を注視した瞬間、(おどろ)きのあまり椅子からずり落ちそうになっている。


「魔晶石と聞いてたんですが、違いましたか?」

「なに言うて――こほん。せやせや、よう見たらたしかに魔晶石でんな。……これを売ってくれるんでっか?」

「はい、まずは査定をお願いします」


 商人は大きく(うなず)くと、定規でサイズを測ったり、天秤で計量したりし始めた。ただ、その手がどこか(ふる)えているように見えるのは、気のせいだろうか。


「あの、友人は規格外の大きさと言ってましたが、この価格表でいうと……B級以上ということですか?」


 車が買えるほどとなると、銀貨十五枚のC級ということはないだろう。


「えっ? …………せやなぁ、この大きさで状態もええですし……B級でんな。お値段は……ユニバ金貨三枚でどうでっか? ほったら札を()うても()りがきまっせ?」

「んー……」


 夕と二人で入るには銀貨四百枚=金貨四枚必要で、これでは一人分にしかならない。そうなると、まずは夕だけ安全な街に入ってもらい、俺はお金が貯まるまで野宿するしか……でもそんなの夕が絶対にウンて言わないよなぁ。


「――こらしもたわっ! 妹はんの分も合わしたら足りまへんなぁ!」


 俺が(なや)んでいると、察した商人が自身の額をペチンと叩いてそう言った。


「ええ、そうなんですよ。なので、もう少し頑張ってもらえませんか?」

「んー……むむむ。(そろ)って入られへんと結局どうしょもないですわなぁ……わいにも(とし)(はな)れた妹がおりますねん、お気持ちようわかりますわ」


 商人は(うで)を組んで眉間(みけん)にシワを寄せて考えた末、


「……仕方(しかた)あらへん! ここは一つ勉強させてもろて、お二人分の金貨四枚で買い取らせてもらいまっか!」


 なんと値上げ交渉(こうしょう)に応じてくれた。


「ほんとですか! ……でも良いんです?」

「まぁ正味(しょうみ)(もう)けなんかあらへん……でもええんですわ。代わりに……また魔晶石手に入れはったら、わいんとこへ売りにきてもらえまっか? つまりアレですがな、上客への先行投資ちゅうことでひとつ?」

「助かります!」


 なんて話の分かる人だ。これで無事に揃って街に入れるぞ。いやぁ、これも時計を改造してくれた魔王様と骸骨妖怪様々だな。


「ほな商談成立でんな! ……ひぃふぅみぃ、四枚や」


 商人が背嚢から小箱を取り出し、手早く金貨を数えてテーブルに置いたところで……


「――待ちなさい!」


 (なな)め後ろから突然の制止の声が上がった。




【88/171 (+0)】


こんなベタのベタに怪しい商人居ますかって話ですよねぇ。

制止の声は、もちろん我らが頼れる……ヤス!(チガウ)

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